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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第十章:それでも彼女は俺の

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127.鮫浜補完計画が始動したようです。


 あゆにキスをされるたびに何故か深い眠りにつき、その後はどこかに連れて行かれているパターンが成立していたのだが、今回は違っていた。ガッカリなどもちろんしてはいないのである。


「起きて……湊、起きないと怖いよ?」


「お、起きます! おはよう、あゆちゃん。って、周りが眩しい気がするけど今日は何曜日かな?」


「ん、月曜日。だから早く起きないと遅刻してしまうし、目先生が怖いよ?」


「そ、そっか。そういう意味だよね、はは……じゃあ、一度家に帰って着替えてくるから――」


「――どこへ行くの?」


「え? だから、俺の家に」


「違うよ。湊の家はここでしょ。だから戻る家はここしかないの。それにすでに制服に着替えてるし、すぐに学園に向かえるんだよ?」


「そ、そうなんだ。眠りながら着替えでもしたのかな……まぁ、いいか。じゃあ行こうか」


「うん!」


 なわけがあるかー! 何なのこの子。あゆの悪ふざけは色々俺の中で目を瞑って来たが、これはもう闇とか病みとかそういうレベルを遥かに超越しちゃってるレベルじゃないか。これは俺も強気な姿勢と態度で上から目線で説教をしてあげねばならない! 俺よりもちっさいあゆだから、それくらいは出来るはずだ。


「あゆ! 調子に乗るのもいい加減にしたらどうだ? いつもあゆの思い通りに行かせていたけど、俺にも人権というもんがあってだな。ここはあゆの家! 俺の家はすぐ隣だ。だから、遅刻しそうになっても俺は自分の家にカバンやら何やらを取りに行く権利がある! だから俺は行くぞ。いいよな?」


 ふっ、言ってやった。さよりにも似たようなことを言ってきた俺だ。相手が鮫浜だろうが、言うことは言ってやらねばこの子の為にもならないと思った。なにせ、俺たちはまだガキだ。分別くらい今から理解させないと、いい気にさせすぎて何も口出しが出来なくなる。


「……分かった。じゃあ、すぐに戻ってきてくれる?」


「おぅ! す、すぐ戻るから玄関口で待ってて!」


「……いいよ? カノジョも来ていることだし、丁度いい……始めてあげる」


 何だ素直じゃないか。言えば分かってくれるいい子だった。そんなわけで夢でも何でもない鮫浜の家から出ると、目の前にはさよりの姿があった。何故かは知らないが、知らない間に和解でもしたのだろうか。


「み、湊! どうしてあなた、あゆの家から出て来たというのかしら? まさか泊まっていたというの? わたくしの家には泊まらずに素直に帰ったはずじゃなかったのね。湊のお母様が何度もわたくしの家に訪ねて来ていたのよ? 寄り添っていいだなんて言ったけれど、二泊三日は想定外よ!」


「え、マジで? そんなに眠ってたとかどれだけの効果だよ! で、さよりはどうしてあゆの家に迎えに?」


「愚問ね。あゆから連絡をもらったからこそに決まっているわ。湊とわたくしと3人一緒に学園に登校したいって言ってきたわ。湊は知らないのだろうけれど、バトルロワイヤルは何も闘うことだけが目的ではないの。どちらかと言うと、友達として仲良くして協力した方が有利なの! そうすることでライバルが減るのですもの。そこをあゆは考えているに違いないわ」


 そうだろうか。あゆがコイツを味方に取り入れて敵を減らす? でも結局最後は、あゆとさよりとの一騎打ちになるんじゃないのか。しかしまぁ、何にしてもこの構図は初期ぶりすぎるぞ。


 腕こそ組んで来ないが、俺の右隣にはさより。左隣にはあゆが付いている。道行く通行人と学園生たちに冷やかしされるのを覚悟するしかないのだろうかなんて心配していたのに、どういうわけか通行人もいないどころか、学園生の誰一人としてすれ違わない。


「どうかしたの? 高洲君」


「あ、いや、何でもないけど……おかしくないか?」


「何がおかしいというのかしら? あぁ、おかしいのは湊だけよね。あなたのそのいかがわしい声と、卑猥な背中は普通はあり得ないことですもの。あなたごときにこの高貴なるわたくしが落ちてしまうだなんて思わなかったわ」


「おい、ちょっとさよりさん?」


「うん、さよちゃんの言う通りだね。私も思わなかったよ。制服だけが私の癒しだったのに、どうして肉体まで好きになっていたのかな、なんて。でもね、湊は私のモノなの……さよりみたいに庶民出身の低俗な偽お嬢様が手を出してはいけない子なの。だから、あなたなんかが私の友達になれるはずがないの」


「あ、あゆ? は、話と違うわ。一緒に協力して、最後になってから正々堂々と闘うって言っていたわよね? どうして朝からそんなに闘争心が高まっているというの……せめて登校時は最初みたく湊をこき下ろしながら歩くって言っていたわよね。どうしてそんな?」


 おいおい、こき下ろすとかひどくね? しかしさよりの狼狽えようは何かがおかしい。夢でもなければ異次元でもないが、俺たち以外の人の気配が感じられないぞ。このまま学園に行って大丈夫なのか?


「なんて、冗談だよ? さよちゃん、早く学園に行こ? 高洲君も!」


「お、おぉ」


「そ、そうなのね。冗談……そ、そうよね。それじゃあ、早く行きましょ? ふふん、湊の右腕はわたくしの場所よ!」


「私は左腕だよ。ふふっ、楽しみだね。学園に着いたら、本当に楽しみ――」

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