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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第九章:闘う美少女たち

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125.男はいつだって冒険をしたいものである。


「湊! わたくしはきっと勝って見せるわ! あなたからの口づけを決して無駄にはしたくないもの。だからもう大丈夫よ」


「ん? つまり?」


「本当は今日、泊って行って欲しかったのだけれど、何だか吹っ切れた気がするの。そもそもあゆの妹かどうかなんてわたくしが気にすることでもないし、それに勝負なんてのは運も絡むものですもの。だから平気だわ! 湊、ありがとうね。やっぱりわたくしは、あなたが好き。だからたとえ、どんなことになっても嫌いにはならないわ」


「お、おぉ、ありがとう?」


 何があったのかまるで分からん。分からないが、添い寝効果は抜群すぎたようだ。さらには意表を突いたさよりの口づけは、俺よりも彼女の方が勇気づけられたらしい。その結果、泊まって寂しさを和らげるはずの池谷家を後にして、俺は自分の家に帰ることになってしまった。


 さよりいわく、「わたくしだけ想いを寄せられるのは公平ではないわ」とのことらしく、あゆにも想いを寄せなさいとまで言われてしまった。


 確かにここ最近はさよりにばかり気持ちが行っていたのだが、それでも俺の心の中には、鮫浜あゆという女の子が消えずに残っていたわけであり、それがさよりの気持ちに応えられない原因にもなっていた。


「ただいま」


 返事がない、あぁそういや母さんは土日は家にいない人だった。加えて、妹として来ているチカちゃんも、監視休業日ってことで姫ちゃんと出かけたっぽいし、つまり家の中には俺一人だけである。


 こういう時、もしや俺の部屋には闇天使さんが潜んでいるのかと、密かに畏怖と胸ドキの両方を備えながら、自分の部屋に足を踏み入れてしまうのだが、見事に静寂だった。

 さよりに半ば強引に追い出されてしまったおかげで、俺の方が一人寂しくなって来ちゃったんですが。


 そして俺は無謀ともいえる行動に出ようとしている。恐らくこれがホントの不法侵入者。そして、謎だらけの闇を抱える女子の部屋に、勝手にお邪魔しちゃうという冒険心が働いてしまうのである。

 俺の部屋の窓と、鮫浜あゆの家(ただし以前は空き家)とはゼロ距離の隣同士。つまり、窓を開ければそこには、互いの部屋の中身が丸見えな状態だ。そんな彼女には、いつも不法侵入をされてきた。


 何をとち狂ったのか、誰もいない俺の家と恐らくいないであろう鮫浜の家というか部屋に、入ってみたいというとてもよろしくない願望と欲望と冒険心が芽生えてしまった。

 なにせ、今までは一方的に侵入されて来た経緯があり、何となくその仕返しというわけでもないが、俺を常に見たい彼女なのだから俺から会いに行くのは怒りもしないし、むしろ歓迎してくれるだろうとさえ思ってしまった。


 いざ、闇天使の部屋へ。ってことで、失礼ながらも一応靴を片手に足を上げて部屋へお邪魔してみた。当然だが、あゆの部屋の窓も鍵はかかっていなかった。いつでも来ていいってことですね、分かります。


「お、お邪魔しますよ……?」


 返事がない。それはそうか。あったら怖い……ということは、その怖さを感じることなく彼女は俺の部屋に入って、自然にくつろいでいたということになる。部屋に入るとすぐに目についたのが、よく分からない植物たちだ。


 窓もそうだが、カーテンで日の光は遮られ部屋の中は常に暗くしているようだ。その中で育つとか、相当な生命力と見た。まさかと思うが、日の光を浴びせるとまるで猫のように鳴き、見えない空気を使って攻撃してくるという奇妙なスタンド使いではないかと、内心心配になった。


「……」


 うん、そんなはずはない。ってことで、俺も彼女の部屋でとりあえずくつろいでみた。暇。さすがに部屋を出て、他人様の家の中を歩き回るほどの犯し者になるつもりがないので、すごすごと自分の部屋に戻ろうとしたその時、背中越しから声がかかりましたよ? 気配無かったし、部屋のドアも閉まっていたよね?


「お帰り、湊くん……どこへ行くの?」


「お……おぉぉ。い、いつからそこに? というかもしかして隠れてたのかな」


「ううん、キミの足元……私のベッドにずっといたよ? 私、寝ていたの」


 嘘だろ? もこふわな羽毛布団をなるべく踏まないように部屋の中に入ったとはいえ、そこに寝ていたのか? 気づけよ、俺。下手したらあゆを踏んづけていたぞ。


「き、気づかなくてごめん」


「いいよ? ようやく帰って来てくれたからね。私は怒ってないし、怒らないよ? とにかく、そこに座って話をしよ? それともこのまま添い寝かな……さよりのように」


「そ、そうだね。あ、いや、それはまた今度で……」


 やはり全てお見通しですか。いやいや、こんなのは想定済みだ。彼女のことを恐れてはいけないのだ。


「お茶飲む? 初めてでもないけど、下のリビングルームに移動しようか。湊くん、何も食べてないでしょ? 私が作るよ。さよりと違って、私は得意だし?」


「そう言えばそうだね。じゃあ、お願いしようかな? じゃあ、部屋を移動だね」


「……うん、念のために窓の鍵を閉めてくれる? 湊くん」


「念のためって、俺の部屋てか、家だよ? いつも開けっ放しなのに、閉めるの?」


「だって、キミは靴まで持って来ているでしょ? だからきっと、()()()()意味なんだと私は思ったよ。だから、鍵を閉めてね? 私たちの家に外からの邪魔はさせたくないし……」


「そっか、一応心配になるよね。分かった、窓の鍵を閉めておくよ。靴を持って来てるから、玄関から出て行けばいいしね」


「――そうだね……出て行ければね」

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