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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第九章:闘う美少女たち

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118.さよりさん、本気出す?


 ナゾナゾを出したつもりはこれっぽっちも無かったのに、隣のさよりさんは未だに難しい顔をしながら腕を組んで何度も首を傾げているようだ。その姿に思わず見惚れていた俺の気配に、ようやく気付いたらしい。


「な、何かしら? というより、彼女はどこへ消えたというの?」


「落ち着け。さよりを見つめていただけだぞ。そんで、チカちゃんと姫ちゃんならすでに登校して行った」


「わ、わたくしを見つめ――! と、溶かす気があるのかしら?」


「へ? 俺の視線はそんな能力は無いからな? それに鮫浜チカちゃんのことは知ってたんだろ?」


「チカ? 知らないわ。あゆに妹がいたなんてことも初耳だわ。じゃああれはあゆではなくて、妹だったって言うのね? それは良いけれど、どうして湊のお家から一緒に出て来たのかしら? 説明……するわよね?」


「妹ってことで紹介されて、おまけに俺を隅から隅まで観察……じゃなく、監視したいらしいぞ。だから昨日の夜は大変だった。姫ちゃんの友達らしいのに何でお前は知らないんだよ」


 さよりは知らない。ということは、姫ちゃんとはマジでロクに会話もしてないらしい。互いの家にすら行かない同級生だから仕方ないと言えば仕方ないけど、でもチカちゃんはマジっぽいし分からないな。


「わたくしはそれどころじゃなかったのよ? あなたなら分かるでしょ。それと、お前じゃないわ!」


「ぶれないな……ったく、とにかく鮫浜の妹ちゃんとしばらく同居することになった。添い寝くらいだし、何も無いからな? って、さよりに言わなくてもいいことだけど毎朝騒がれるのも面倒だし伝えとく」


「ど、同居? そ、添い寝ですって!」


「やましいことは無いぞ? 変に考え込むなよ」


「そ、そうね。別にあなたとは付き合っているわけでもないですもの。わたくしには無関係だわ。そ、それでも、何かあってからでは湊の将来が危険なことになるわ。な、何かないかしら。考えるわ……」


 俺の将来ねぇ……妄想嫁は消えていないようだ。しかも別にさよりが考えることないと思うのだが。


「てか、俺らも行くぞ。遅刻したら話にならないし」


「え、ええ」


 まさかと思うがコイツは、また増やさなくてもいいライバルを増やそうと企んでいるのか? 賢いのかアホの子なのか分からないな。でもあの綺麗すぎるイサキさんの娘なのだし、俺が見ているさよりはまだほんの一部なのかもしれない。


 いつものように学園の外門に着いたところで、距離を置いて教室に向かうと思っていたが、さよりは何かの覚悟を決めたのか、俺から離れようとしなかった。


「お、おい、別れなくていいのか?」


「あら? 愚問ね。さすが……湊だわ」


 愚民とは言わなくなったか。それよりも俺個人の方が強くなったわけですね、分かります。 


「そもそもあなたと行動を共にしていることは誰もが知っているはずだわ。あゆが全てを見ているのでしょう? それなら隠れることなんて無意味だわ! 堂々と行けばいいじゃない。付き合っているわけでもないからって、距離を取る必要がどこにあったというのかしらね」


「まぁ、確かに」


「そうでしょ? ふふっ、湊はこれで一つだけ賢くなったわね。偉いわ」


「何で俺が褒められるんだか。何なら、頭でも撫でてくれてもいいぞ」


「な、ナデナデ……み、湊を手なずけていいのね?」


「俺は動物じゃないわけだが?」


「細かいことを言う男はモテないわよ? ふふん、わたくしの崇高すぎる手で撫でられることを光栄に思いなさいね? い、行くわよ」


 頭に手を置いて動かすだけなのに、何でコイツはこんなに大げさな表現をして自らハードルを上げるのだろうか。こんなに面白い奴だったのか。


「はぅぅぅぅ……」


「もしもし? 撫でられている俺じゃなくて、何でさよりが悶えてるんだ?」


「あ、案外手入れはしっかりしているのね。当然だわ。あなたの髪質はわたくし的に合格だわ」


「というか、廊下でこんなことやめてくれ」


「いいじゃない、どうせこれも見られているのでしょ? 何でもかんでもあゆの思い通りに行くと思ったら大間違いだわ! わたくし……わたしだって負けてたまるものですか!」


「何かと戦うおつもりが?」


「戦うわ! もうすぐ学園祭ですもの。そこで決着をつけて見せるわ」


 学園祭で決着か。ということは、何が催されるかもすでに知っているってことだよな。それを知りつつ、鮫浜と戦うってことは、コイツは何かに本気になっているってことか。


 何故か燃えているさよりと一緒に教室に入ると、全てご存じのようで鮫浜が俺らを凝視していた。怖いです。それに対していつもは、そそくさと自分の席に戻って行くさよりだったが、鮫浜に睨み返しているようだった。何か分からんが、何かに火を点けたらしい。


 そういや、鮫浜に声をかけていいって言われていたが、どのタイミングで声をかければいいんだろうな。だとしても今は何となくやばい気がするので、ホームルーム後の休み時間に声をかけてみるか。


 席は離れているが、心なしか鮫浜が笑っているのが怖いぞ。闇天使の微笑みが炸裂とか、今日も荒れますかそうですか。


「ふふっ、さより……いいよ? そういうことだね――」

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