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それでも彼女は俺のカノジョじゃないわけで。  作者: 遥風 かずら
第1部第一章:天使と悪魔と美少女
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1.プロローグ的な話


 東上学園に通う俺、高洲たかす みなとには、恐れ多くも学園一の美少女と言って差し支えない近所馴染みの友達が二人ほど存在している。決して幼馴染とかでは無い。


 単に自分の家の両隣に彼女らの家族が越してきただけのことだ。家族同士のご近所付き合いがあるだけで、お友達と言ったら石ころをぶつけられてしまっても仕方がない、それくらいの美少女たちがお友達なのである。


 ちなみに俺はイケメンでは無い。


 第一の友達である彼女曰く、レストランの店外から見たらイケメンに見える、もしくは制服だけ見ればイケメン。とかいう意味不明な評価をされている。


 駅前の洒落たレストランという名のファミレスでアルバイトをしている俺は、こう見えてとても多忙だ。


 学業に差支えの無い平日夕方の短時間にせっせと動くその姿は、さしずめ向上の鑑と称されていておかしくない。


「は? あなたには向上心のかけらもないのに、誰があなたをお手本にしていると?」

「俺」

「どこの俺サマ? ああ、ここにいる痛い子のことを言っているのね。なんて頭のかわいそうな湊くんなのかしら。それでもわたくしはあなたの他称お友達。こんなかわいそうなお友達には、せめてもの慈悲を与えなければならないわね。わたくしの名前をどこにいても呼び捨てで呼ぶことを許して差し上げるわ。どう? 嬉しい?」

「嬉しいわけないだろうが! そんな当たり前のことにいちいち許可が必要とか何様だよ、池谷いけがやさより! 毎回フルネームで呼んでやろうか? 嬉しいか? このドSお嬢様!」

「――んだとこら! ガタガタ体震えさせながら偉そうなコトいってんじゃねえぞ? 湊のくせに!」

「おぉ、こええ……そしてガラ悪すぎだ。これが本性なんですよ、学園の男子諸君! なんて全校放送で言えたらどんなに心安らぐか。そして想像も出来ぬほどの快感が俺の体に訪れるか、ああ……震えが止まらねえぜ」

「この変態野郎が! いい気になるなよ? とにかく、わたくしのことをわたくし以外に言ってみてごらんなさい? あなたの日常を逐一、動画でアップして差し上げますわ」


 なんて女だ。しかし人は見た目が第一であり、たとえ中身がドス黒く、さらには平気でか弱い男子に手をあげる奴だとしても、バレなければいいのである。


 コイツは一応友達であり彼女などではない。家が隣なだけで、仲良しこよしな関係ではないのだ。


 それなのに、友達がいないコイツにとっては俺だけが友達であり、気を許しているらしい状況なのが悲しい現実だ。俺は暴言なぞを浴びせられて快感を覚える奴ではないことを言い訳しておく。


「えっ? 動画? 何だそれ……お前俺の部屋に勝手に入ったんじゃないよな?」

「んふふ……どうかしらね? なにせ、タダの隣同士。そして、あなたのお友達ですもの。親だけはわたくしたちのことを恋仲だと勘違いをしているようだけれど、寒気がして仕方無さすぎるわ。ああ、それとあなたがゲームソフトの中身に入れてある秘蔵ディスクは燃えないゴミに出しておいてあげたから。犯罪を未然に防いで差し上げたの。なんて友達想いの美少女なのかしらね」


 見た目だけは確かに美少女なのだから反撃できない。目元ははっきりとした大きさで、顔のパーツもどこぞのタレントよりも小顔だ。


 肌は透き通った色白なのだが、髪は漆黒のカラス並みに黒い。無い胸の辺りにまで髪を伸ばしまくっている長髪と、身長もあってスラリとした手足は売れっ子モデル並だ。


 大抵はここまで色んな部分が整えられまくりだと、全てが完璧になるはずなのだが……残念ながら、バストサイズは同情したくなる。


 本人曰く、これから全てが成長途中であり俺のような下賤な輩には理解できないとまでほざいている。


「ところで湊はクラスで浮いていないのかしら?」

「浮いてねえよ。人間関係ってのは、誰かと「おはよう」って言うだけで成立するんだよ。お前みたいに微笑んで人を……いや、男だけを狙い撃ちして石化させるのとは違うんだからな。というより、その偽お嬢様言葉をやめろっつってんだろうが! 俺の前でくらい、素になれっての。バカじゃねえの?」

「あぁ、やだやだ。海に浮いているゴミのように浮きまくりの人間関係だなんて、そんなのを成立とか大丈夫かしら? それとわたくし、バカじゃなくってよ」

「その辺にしてあげようよ、さよちゃん。湊くんだって悪気があるわけじゃないと思うし。ねっ?」


 はい、天使が来ました。


 俺の天使……いや、もう一人の友達である鮫浜さめはまあゆは、とてもいい子である。


 あと一歩で乱闘になる寸前まさにそんな時に、助けてくれるサポートキャラ。いや、天使だ。


「悪気じゃなくて、雑魚だったな。言葉のアヤとはこのことか」

「こ、この背中野郎……」

「めっ! だよ? どうして仲が悪いのかなぁ。せっかく隣同士のご近所さんなのに、そうやってさよちゃんにちょっかい出して、大好きさんなの?」

「違う!」

「あり得ないでしょ、あゆ」

「うん、あゆもそう思う。だって釣り合わないもん」


 一見天使のようだが、この子は悪気無く毒を吐く女子である。

 本人はきょとんとしているが、決して計算をしたわけではないのだ。


 鮫浜あゆは天然記念物……ではなく、天然すぎる小悪魔で本人は至って無意識なのだ。


 両手に可憐な花ではなく、悪魔と小悪魔が存在しているに過ぎない。


 見た目だけなら彼女にしたい。これは切実なお願いです。


 どうか可哀想でか弱い僕に誰か愛を頂けないでしょうか。いや、本当にお願いしたい。


 そんなわけで、俺……いや、僕のお話は始まって行きますよ。

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