死人女優。
初投稿です。
宜しくお願い致します。
聞こえないはずの声が聞こえてくる。
「…害者は胸部を刺されており、肺に穴が開いておりますが、頭部に損傷はありません」
「そうか……あまり気は進まないがあれを投与してくれ」
「15分前に投与済みです」
「あと4分か」
何の話だろう。
胸部?
頭部?
よくわからない。
「科学技術は進歩するといってもこれはあまり喜びたくないよな……」
「えぇ、ですが進歩したことにより検挙率が上がったというのは事実なんですよね」
「複雑だなぁ……」
何もない景色に光が差す。
っ、眩しい。
「そろそろ視覚が回復する頃か」
だんだんとその光に慣れてきて風景が視界に入る。
見覚えのある風景に、 誰かがしゃがんで私の顔を見ている。
どうやら私は地面に横になっているようだ。
どうして?
記憶がないわけではないが頭の中がぐちゃぐちゃで整理がつかない。
とにかく起き上がらないと。
……。
うまく体に力が入らない。
っつ、
かろうじて目玉が動かせる。
「おっ、生き返ったみたいだぞ!」
しゃがんでいた男が大声で叫ぶ。
生き返った?
何?
「聞こえるか?俺の声が聞こえるなら目を縦に振ってくれ」
この人は誰なんだろう。
しっかりとしたスーツ服を着ているが、よく見たら裾がほつれていたり砂利付いていたりする。
だけど、うまく動かない体で何を考えても仕方がないないと思い目を縦にふる。
「おお!やっぱり科学というものは素晴らしいな!」
はははと男は笑いながら言う。
さっきと言っていることが違うのだが気にしない。
「っと、笑ってる場合じゃねーや、えっと、あと5分だっけ?それぐらいすれば喋れるようになるからそれまでの辛抱だ」
「ちょっと!先輩!しっかりと説明してくださいよ!」
一緒に話していた人だろうか。
さっきの人と比べて若い男が駆け寄ってくる。
「上司の説明が適当で申し訳ありません。私、堀須と申します」
と言いながら警察手帳を見せつける。
こんな光景本当にあるんだなと思いながら口が少し動くようになったことに気づく。
「わ、わあしはなん?」
まだうまく口が回らないが無理やり口を回して質問する。
「あー、えっとマニュアルだと最初は五感が回復してから記憶が回復するので少ししたら思い出すと思いますよ」
そう言いながら私をゆっくりと抱きかかえ椅子に座らせてくれる。
まだ体に力が入らないせいで背もたれに寄りかかることになったが。
「少し状況を話しにくいのですが、落ち着いて聞いてください。まぁ、この話をすると大抵の人はパニックになってしまうんですけどね」
はははとわらっている。
笑う理由がよくわからないがわたしがパニックにならないように和ませているのかと思う。
「えっとですね。あなたは生き返りました」
?生き返った?
「わたしはぃんだの?」
「あ、はい。そうです。あなたは一回死にました」
…………?
首をかしげる程度にはうっすらと体に感覚が戻っていることに気づく。
が、今はそんなことどうでもいい。
「んー。説明すると大変なんですけどね……あ、そう!確か7年か8年前に日本人がノーベル化学賞を撮ったの覚えてますか?」
?覚えているはずなのだが、うまく思い出すことができないのでわからない。が、だいぶ有名人だった気がする。
「と、簡単に言いますとその人が人を生き返らせる薬を完成させて、それをあなたに投与したって感じですね」
生き返る薬?
なんだか聞いたことがある。
だんだんと記憶が回復していってるということなのだろうか。
そして、意識はしていなかったが、知らないうちにだいぶ体に力が入るようになってきた。
「あ……はい……」
私は弱い返事を返す。
思考ができるようになってきた頭で言われたことを整理してみる。
私は何かがあって死んでしまって、警察の人が私を蘇生する薬を使って蘇生させた。
なんだ。わざわざ整理するほどでもないくらいに単純だった。
……言われたことを整理するのは簡単だ。
が、それを理解するのは別物だ。
は?
「え?あの?よくわからなくなってきたんですけど……」
私は素直に聞く。
そうでもしなきゃたった一文で整理できたことが理解できなくてあたまがパンクする。
「あはははは、まぁ、そうですよねこんなこと言われても普通なら理解できないですよね、はは」
堀須は頬を掻きながら笑う。
煽られて一瞬むっとするが、気持ちを鎮める。
「とにかく、生き返ったあなたには捜査協力してもらいたいわけです」
…………?
「あぁ、あなたは誰かに殺されたっぽいですよ」
けろっと彼は言った。
…………?
「大体の人はショックで死ぬ直前の記憶なくしてるんですけどね、まぁ、形式的に事情聴取ってことですかね」
堀須は、はははと笑う。
殺された?私が?
そんな記憶がない。
体の不自由が取れ、記憶もだいたい思い出した私だが、掘須が言った通り死ぬ直前の記憶がない。
んー。と思い出そうとしてみる。
すると
ん、と
大切なことを思い出す。
「あ、あの…」
「どうしたんですか?」
「私って、いつ解放されます?急いでるんですけど…」
そう、私には時間があまりなかったということを思い出した。
すると堀須ともう一人の男は、困った顔をしてお互いを見つめ合う。
「?」
と、私が顔をしかめていると、
「すみません、あなたはすでに死んでいて、もう人間という認識ではないのです」
と彼が私に向かって言う。
「というと?」
「えっと、私の言い方が悪かったですね……、非常に申し上げにくいのですが、あなたに対しては事情聴取をするのではなく、証拠物として扱わせてもらうんです。なので、解放されることは事件が解決してからであって、そもそも……」
と、堀須は籠らせる。
「そもそも?」
私が聞き返すと堀須は話し出す。
「そもそも、あなたに投与した薬は一定の時間息を吹き返すという薬であって、完全に生き返るわけではなくて、タイムリミットがあるんです」
!?
え、うそ。
それは非常にまずい。
「タイムリミットって……」
「体に異常が現れない時間は4時間。
そこからだんだんと死体に戻っていきます」
っ、
それはまずいかもしれない。
こんなところで時間を潰しているわけにはいかない。
「あー、そういえばこの書類にサインして欲しいんですよね」
説明の最中に堀須はわざとらしく私に背を向けしゃがみ、自分のカバンの中を探しだす。
……
私は警察のもう一人の方を確認する。
彼は私が死んだであろうところを見ながら手帳に何かを書き込んでいる。
やるなら今しかない。
幸い、体の感覚は取り戻している。
私は覚悟を決め、立ち上がる。
「ん?どうしたんですか?」
堀須は私が立ち上がったことに気づき、私に話しかけた。
このまま死ぬくらいなら逃げてしまおう。
私は彼の話を無視してこの場を立ち去った。
–––––––––––––––––––––––––––––––––––
昔の話だ。
私がまだ小学生の頃。
その時は学芸会の準備期間だった。
学芸会で私たちのクラスはシンデレラをやる予定で、そのリハーサルをやっていた。
私の役はシンデレラの一人だった。
というのも、なにせ小学生の学芸会だ。
一人一役を演じると必然的に、無駄に舞踏会に参加するモブが10人を超えてしまう。
そんなこと保護者が許さないはずだ。
そのためシンデレラは3人いた。
そしてそのうちの一人が私だったのだ。
シンデレラが3人いるというとてつもなく奇妙なリハーサルだったのだが、事件は起きる。
時計が12時を回り、シンデレラが舞踏会から逃げるシーンの時だ。
小学生にとっては慣れていないハイヒールを履いて階段を降りるのだが、そこを演じていたシンデレラ役の子が階段でこけてしまい階段の上から下まで一気に転がり落ち病院送りになった。
次の日、彼女は松葉杖をついて学校に来た。
彼女は足を骨折していた。
そのため彼女はシンデレラを演じることができなくなってしまった。
そして、その時すでに学芸会2日前だったので代役は立てることができず、シンデレラのセリフを全て暗記していた私がシンデレラの2/3を担当することになった。
事件は続く。
次の日の朝、普段通りに登校をすると、いつも一番初めに教室にいる、もう一人のシンデレラ役がいなかった。
朝礼が始まり、先生は彼女は今日は休みだとみんなに伝えた。
昼頃になり私は先生に職員室に呼ばれた。
当時、別に態度が悪いとか、出席率が低いなどなく、わりと優等生だった私が呼ばれるのは珍しく、内心ビクビクしていた。
だけど、先生との会話の内容はまったく違ったもので、私は驚かされた。
もうひとりのシンデレラ役の子が亡くなった。
先生にそう告げられた。
そして先生は続ける。
だけど、この学芸会を中止するわけにはいけないから、シンデレラ役を頼みたい、
と。
亡くなった子とはあまり接点がなかったので、それについては何も思わなかったのだが、私がシンデレラをフルで演じることに衝撃を受けた。
その衝撃は重みというよりも喜びの衝撃だった。
そして、今考えればそれがなければ私は女優などにはなっていなかったのだろう。
そして学芸会当日。
私はシンデレラを演じた。
他の子よりも美しく、華麗に、綺麗に私はシンデレラを演じた。
それはそうだ。
私は他の子とは違い、セリフを暗記するだけではなく、シンデレラの感情にあわせ演技を変えてシンデレラを演じた。
他の子にはできないものをわたしはやれる。
これは自慢などではない。
事実だ。
そのおかげで私たちのクラスは金賞を取り、知らない親御さんに褒められた。
なんて話だ。
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1時間をかけて、劇場に着いた。
楽屋につき、自分の体について調べたが、胸のあたりに大きな傷ができていた。
もしかしたらこれが死因なのかもしれないな。
ナイフとかかな?
その傷は不思議と痛みを感じない。
だが、よく見ると生々しくてグロい。
あまりひとにみられたくないな。
なんて、まぁ、バレる前に死ぬのかな?
死んだ実感がないせいか、あんまり真剣に考えられない。
だが、死が近づいているのは実感している。
一度止まったものを無理矢理動かしているからなのか、心臓がバクバクと大きな音を立てて、苦しく感じる。
今気を抜いたらころっと死んでしまうかもしれない。
だけど、そんなヘマはしない。
わたしが存在する価値は演技をすることなんだ。
だから、こんなくだらないことで死ぬわけにいかない。
夢は叶えなければいけない。
これは義務だ。
主演はわたしのものだ。
そして、時間というものはあっという間に立つもので、リハーサルが終わり、本番の時間になってしまった。
わたしは舞台の幕の裏で自分の立ち位置に着く。
わたしのタイムリミットはあと2時間。
どう考えても2時間で終わる舞台ではないので、下手すれば途中で死んでしまうかもしれないという恐怖が湧き上がる。
だが、それと同時にどこからきたのかわからない自信もたっぷりだった。
わたしならできると。
女優になってから、きっとこれがわたしにとって初めてで最後の主演になるのだろう。
主演になるという夢を人を踏み台にしてまで手に入れたんだ。
なら、最高の舞台にしようか。
舞台の幕が上がる。
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「そういえば、先日の被害者の女性の件なんですか」
俺らは捜査一課の職場にいた。
コーヒーを注ぎながら掘須はいう。
「あー、あれね」
時刻は23時を過ぎていて眠気はピークに達していた。
「なんか、あの人被害者だけど加害者らしいっすよ」
「えー?なにそのテレビ展開」
「ほんと、そうなんですよ、その人女優さんらしくって」
「えー?あんな美人なのにAVなん?」
「ちょ、舞台女優っすよ」
掘須は笑う。
「なんか、その被害者逃げたじゃないっすか、その理由が舞台に出演するためだったらしくて、その日彼女の初主演だったらしいんです」
「へぇー、それは気の毒だ」
「まぁまぁ、でもこの話の面白いところが、彼女、本当は主演の補欠だったらしくて、主演になるためにその元主演の人殺したらしいですよ」
堀須は二つ注いだコーヒーカップの一つを俺に渡す。
あーサンキュー。
「テレビ展開かよって」
「本当、笑っちゃいますよ、それで彼女誰に殺されたと思います?」
「元主演の彼氏とか?」
「それが、元主演本人に殺されたらしいっすよ」
「は?」
「なんか、あの、生き返る薬って、闇ウェブで手に入るらしくて、元主演の彼氏がそれで生き返らせたら、その元主演の子が家から飛び出して真っ先にあの被害者殺しに行ったっていう噂です」
「はー、まじか」
「噂っす」
「まぁ、嘘だとは思うけどそれが本当だったらその被害者相当馬鹿だよな」
「そうっすか?」
「たかが主演をもぎ取るためにに人を殺して、そのせいで殺されたって、主演なんて俺も桃太郎役昔やったわー」
はははと笑ってしまう。
「それは小学生の頃でしょ」
掘須もつられて笑う。
「んー、やっぱり、仕事のために死にたくはないな」
「それ、刑事が言っていい言葉ですか」
ふ、ふ、ふ、と。
「でも実際、仕事なんて自分が食っていくためにやってるもんだし、仕事中に死んだら意味ねーじゃんよ」
「まぁ、自分も賛成っすわ」
俺は両腕を上に突き上げ伸びをする。
「さて、そんなくだらない話は終わりにして、速く書類終わらせて帰るぞ」
「了解ー」
コーヒーをぐびっと飲み干しパソコンに向かう。
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本当は発売される予定だったビデオがある。
もう、誰にも見られることはないそのビデオには彼女の生涯の終わりが映されている。
内容?
別に面白いとか、そういうわけではない。
ただ、彼女の生きたいっていう執念が滲み出てるせいで、作品としてはクソなんだよね。
彼女は本当、女優に向いてないよ。
演技が上手いのは認めるし、顔だって悪くない。
でも、自我が、強すぎたんだよね。
だから本当は主演なんてやらせるべきではなかったんだけど、事情が事情だったからね、仕方ないよね。
自分を隠せない女優なんて必要ないからね。
けど、まぁ、ここまで自我が強いと逆にすごいとは思う。
彼女がこの演劇団に入った時も、彼女の自我の強さに僕は圧倒されてしまったからね。
あの時の彼女はわたしが主演を張るんだってそんなオーラが滲み出ていた。
だから、採用したんだけど。
だけど、それが短所になるとは思わなかったよね。
はぁ、、、
空いた席を埋めなきゃね。
彼女のレベル並みの人は見つからないだろうけど、探さなきゃね。
ED
最後まで読んでくださり有難うございます。
これから何作品か投稿できたらいいなって思います。
また宜しくお願いします。




