◆クライマックスフェイズ
αトランスの製造、そして投薬は絶対に阻止せねばならない。
君たちは警備を蹴散らしながら、研究所の最もセキュリティの高い部屋へ向かってゆく。
最後の分厚い扉を開くと、そこには茶髪をオールバックにし、もじゃもじゃの茶髭を生やした、眼鏡の研究者が待ち構えていた。
涼太:「……あなたがS・D・ソーマ博士……?」
GM:「いかにも。ついにここまで辿り着いてしまったか、UGN。私がスプリング・デイ・ソーマ博士だ。αトランス量産計画の主任である」
葎火:「あなただね、わたしの友達を連れていったのは」
GM:「君の友達も被験体として選ばれたのかね?……捉えた被験体にテストを施し、成功した後はエナジードリンクの形で日本中に拡散する……そしてオーヴァードの数を激増させ、我々の理想の世界を創り上げる! それがこの計画の全貌だよ」
涼太:「それで一般市民を被験体にしようと……呆れたものですね」
ラネル:「制御できるかもわからない投薬をし、無理やりオーヴァードとしての力を生み出した所で、それが暴走しないとは限らないのでは?」
葎火:「……人は、モルモットじゃないの。誰にでも自由に生きる権利があるの。日常を選ぶのも、そうでないのを選ぶのも、その人たちが選ぶべきものだよ」
GM:カッコよく口上を述べたところで、突然ですがここでみなさん〈知覚〉判定です。
葎火:ファッ!?
涼太:えっ。
GM:目標値は伏せますが、とある理由により、ラネルさんの判定値にはボーナスが加算されます。
葎火:(ダイスを振る)7。
涼太:(ダイスを振る)達成値は8。
ラネル:おお? ボーナスはいくつぐらいです?
GM:ないしょ♪ そのまま平目で振った値にこっちがこっそりと足します。
涼太:あっ……これはーwww
葎火:こーれーはー……www
ラネル:(ダイスを振る)7。
GM:はい、では……ラネルさんは気付いてしまいます。スプリング・デイという名前……そしてどこかで見たことある髪型と眼鏡……この博士の正体は、もしかしなくても!
GM:春 日 恭 二 で す ! ! !
葎火:くっそ笑ってしまったwwwwwwwwwwwwwwwww
涼太:やばい(やばい)
ラネル:「……へぇ、ずいぶんとお粗末な変装だね――“ディアボロス”。いや、春日恭二」
GM「クックック。気付いたかね? そう、その正体とは……」含み笑いを浮かべながら、べりべりべり、と付け髭を剥がしていく……「この私、“ディアボロス”だ!」
涼太:「マジかよ……」
葎火:「…………またあなたなの、噛ませ犬。懲りないよね」
GM:「なんだその反応は! 私は断じて噛ませ犬では無いッ!」
ラネル:「そう、噛ませ犬なんかじゃないよ」
葎火:「……ラネるん、どっちの味方?」
ラネル:「ただの子供だよ」
葎火:「ああ、そういうこと」納得したように。
涼太:「なるほど」
GM:「こ、こど……っ!!」眉をピクピクと動かしながら。
葎火:「とまあ、そんな話は置いといて。さっさと囚えられた人たちを開放して、お縄について」
GM:「ふん、そういう訳にはいかん。FHで蓄積されたαトランスの開発データを持ち込み、容易に調査の及ばない研究所で量産するこの計画は最終段階に突入している。後は貴様ら、邪魔なUGNの犬共を排除すればすぐにでも計画は完遂されるのだぁっ!」目を見開き、殺意を全開にする!
葎火:「これ以上、あなたたちFHに好き勝手は、させないよ。わたしみたいな被験体なんて、絶対にこれ以上作らせないんだから……!」
衝動判定を行い、最後の戦闘が始まる。
敵は春日恭二、ただ一人。
こちらは葎火、ラネルが前衛、〈RC〉型の涼太が後衛を組んで対抗する。
●第1ラウンド
▼行動値
春日恭二 12
涼太 9
ラネル 4
葎火 3
GM:では春日のメインプロセス。マイナーで《破壊の爪》《ハンティングスタイル》を使用。右腕を黒い悪魔の腕に変化させながら、一気に距離を詰め、葎火、ラネルにエンゲージ。そして、メジャーで《乾きの主》《血の宴》《吸収》《オールレンジ》《獣の力》《コンセントレイト:キュマイラ》を使用!
《血の宴》で範囲攻撃となった春日恭二の攻撃が、葎火とラネルを薙ぎ払う。
「UGNよ、今日こそは負けん!」悪魔の右腕が、執念を込めて振り下ろされる!
だが二人とも《リザレクト》を使って立ち上がる。
GM:次は涼太のメインプロセスになります。
涼太:「……ったく面倒臭ぇなぁ!」まずマイナーで《オウガバトル》使用。そしてメジャーで《コンセントレイト:オルクス》《アニマルテイマー》《大地の牙》そしてDロイスによる《アニマルアタック》!
GM:出た、動物攻撃!
ラネル:ひゃー! かっこいい!
涼太:(ダイスを振る)達成値20。
GM:では回避を。(ダイスを振る)達成値22。ダイスがめっちゃ回った!
涼太:なんという……
GM:「貴様、動物使いか! だがしかし、この程度の動きなら見切れんことも無いっ」
ラネル:「……“ディアボロス”の動きやすい様に物を配置していたんだろう。東山さん、気にする事はないよ」
GM:フォローの仕方がイケメンすぎる! 次はそんなラネルさんの番です。
ラネル:メジャーで《熱狂》をりっちゃんに。白兵ダメージがシーン中+18され、暴走します。
葎火:「――……っ!」(どくん、心臓が強く跳ねる。体内のレネゲイドウィルスが急激に活性化する――!)
ラネル:「……さぁ。今度こそ君の舞台だよ、姫」
葎火:「……噛ませ……Kaあマせ、ナン、か……壊して……コワシテ……や、る……ッ!!」
衝動判定に成功して少し残念そうだった葎火のプレイヤー、実は暴走ロールをやってみたかったそうで……
気合の入った表現に、思わずおお、と声が上がる。
葎火:「ううっ……うううううううゥゥゥUUU……!!」獣のように唸り始める。葎火は暴走衝動を引き起こした!
ラネル:マイナーで取れる暴走なんで。人格壊れる程ひどい事はしないと思うけどね。
GM:(キャラシートを見て)……葎火の衝動は、破壊か。ではそのまま葎火の手番です。
葎火:マイナーでコンボ【めたもる☆てうめっさ(《鋼身獣化》+《破壊の爪》)】発動! 素手の攻撃力が合わせて13に!
GM:更に攻撃力がアップ……!
葎火:メジャーでコンボ【ブレイジング・インパクト(《コンセントレイト:キュマイラ》+《獣の力》+《鬼の一撃》)】発動します!
べき、べき、と骨が組み替えられる音。
狐火の用に獣の毛が身体を包み――そこには一匹の、大きな狐が姿を現していた。
「わタしの友達ヲ、傷つKeえるひトハ……みNな、こワす……ッ!!!」
小さな猛獣が雄叫びを上げ、春日の喉元目掛けてその腕を振り下ろす!!
葎火:(ダイスを振る)達成値41!
涼太:おおおおお。
GM:40を超えた! 春日恭二はガードを宣言します。
葎火:やったぜ、《鬼の一撃》の効果でガードしたらさらに攻撃力が+5される。
計算した攻撃力は、なんと39+ダイスというとんでもない値に。
とても経験点130点で作られた初期キャラクターの火力では無い!
葎火:ダメージ振る!!ます!!(ダイスを振る)63。いやっほ――――う!!! 最高に楽しい!
GM:くっ。《イージスの盾》を発動! ガード値を2D上昇させる!(ダイスを振る)13。まだまだ倒れてはいないが、大ダメージなのは間違いない!
●第2ラウンド
▼行動値
春日恭二 12
涼太 9
ラネル 4
葎火 3
GM:では、セットアップ。
ラネル:《女王の降臨》を使います。効果で自分に《熱狂》をかけて、シーン中白兵ダメージを+21、そして暴走。
葎火:固定値の暴力が再び始まる――!
ラネル:「……」口内を痛い程にかみしめて、血が出た錆の味で目を開いて。キっとにらみつけておきます。
GM:では、イニシアチブ。ここで、ダメージを受けた春日恭二が《加速する刻》を使用! このエフェクトは、本来の行動に加えてさらに1回メインプロセスを行える、というものです。
「が、はっ……! くっ、UGNめ……ならば、これはどうかな」
攻撃を受けて怯んだ春日恭二は、懐から注射器を取り出す。
「αトランスとは! 新たなオーヴァードを生み出すだけでなく、既にレネゲイドに目覚めた者へ更なる力を与える! そう、まさに偉大な神の霊薬なのだ!」
注射器を腕に突き刺し、αトランスの成分を注入していく!
「ハァァー……UGNよ、ここからが悪魔の本気だ……!」
GM:このαトランスの使用で一度メジャーを消費しているので、次に本来の春日のターンがやってきます。
涼太:ドーピングだ……
GM:先程と同じコンボを使用して、ラネルと葎火を攻撃!
ダメージを受けた葎火は最後の《リザレクト》を使用して、侵蝕率100%をオーバー。
すでに100%を超えていたラネルはタイタスを消費して復活した。
ラネル:「……!!――姫!?」って感じで、ふっとぶとか切り裂くとかされるかな?
GM:そうですね。鋭い爪の一撃が襲いかかります。
葎火:「ぁ……ぐ……ッ!!」モロに受けてぶっ飛ばされ。「……ま、まだ……ま、DA……ッ、コワ、す……!!!」ぐるるる、と狐は唸る。
GM:では、次は涼太の番です。
涼太:「……ったく! これ以上血生臭いのは面倒なんだよ!」先程と同じコンボ。(ダイスを振る)達成値58。
GM:すごい出目だっ。ガードします。ダメージどうぞ!
涼太:(ダイスを振る)55。
GM:うわああ、出目がかなり高い。春日恭二はオートアクションで《イージスの盾》、そしてαトランスによって新たに覚醒した《スプリングシールド》を使用します。これでガード値が更にアップ!「まだだ……まだくたばる訳にはいかんのだよ!」攻撃を受けた所から、新たに鱗が生え、より堅牢な身体へと変化していく!
涼太:(更に硬くなったのを見て)舌打ちする。
GM:次はラネルの番です。
ラネル:マイナーで暴走解除して、メジャーで《コンセントレイト》《アドレナリン》を使用して攻撃。(ダイスを振る)44。
GM:こっちも出目が高い。ガードします。
ラネル:「……よくも、私の仲間に手を出してくれたね。それに私、誰かに触れられるのは――『好きじゃないんだ』」近くに居る春日様の鼻にふんわりと匂う香水の香り。
GM:「何だ、この香りは……!?」
ラネル:「いいの?私の香りに夢中になってると……痛い目、みるよ?」(ダイスを振る)56ダメージ。
GM:くっ!《イージスの盾》《スプリングシールド》を使用! (ダイスを振る)22点軽減。「しまっ……ぐはぁ!!」
涼太:結構なダメージみたいですね、春日さん。
GM:「“グロイビガー”め……貴様は何度でも、私の前に立ちはだかって来る……ッ!」よろよろ、とよろめきながら、それでも立ち上がります。
ラネル:「君が『最初』に私に声をかけたのでしょう?……こんな醜い私に。自業自得、ご愁傷さま」
両親に疎まれていたラネルを、春日恭二がFHへ勧誘した過去。
その時から始まった因縁が、因果となって春日恭二へ立ちはだかる。
葎火:よし。よーし……このターンで決着つけたるぞ。
GM:では、葎火の行動をどうぞ。
葎火:はいよ! まずマイナーで暴走解除します。
GM:OKです。
葎火:「いくよ、噛ませ子犬。あなたの企みはここで終わらせる……友達を、返してもらうから!」引き続きコンボ【ブレイジング・インパクト】を発動。そして! 春日にロイスを取ってタイタスに、命中判定+10Dします!(ダイスを振る)37。
「これで――終わり、だよ!“ディアボロス”……!!!」
理性を取り戻した白狐は、敵へトドメを刺さんと腕を振りかぶる。
春日恭二という存在は、邪魔だ。彼女の大好きな日常を取り戻す為に――!
葎火:ダメージ振ります!(ダイスを振る)固定値47で……77!
GM:ひぇ……これはどう見てもオーバーキルだ……!
葎火:白き狐の一撃が、春日恭二の喉元を精確に抉り裂く!
GM:「ぐ、は……そんな、馬鹿な……私の、完璧な、計、画……かはっ!!」急所を切り裂かれ、呟きと共に力を失い倒れるディアボロス。戦闘終了です!
ラネル:「…………」
葎火:「……大丈夫だよラネるん。きっとまた、知らない間に生き返って、またやってくるよ。正直、勘弁して欲しいけど」
ラネル:「……ハー。いえ、彼の心配はしてませんよ。しぶといですから」
涼太:「……終わった、か。あとは被験者が無事かどうか、か」
葎火:「うん、めーちゃんたちを助けにいかなきゃ」
GM:部屋には、αトランスとその製造装置が佇んでいる……この部屋で製造されていたαトランスを、全て破壊しますか?
その後、研究データを回収してαトランスは全て破棄された。
春日恭二を失ったことで敵の戦力は殆ど残っておらず、UGNの処理班と共に研究所を探索することができた。
実験の為に攫われ、囚われていた人々も見つけ出し、事件はここに収束を迎えた。