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56 埋蔵金

 根来と祐介は何も言えずに、未鈴の亡骸を見下ろしていた。

 惨劇は終わったのだ。だけど、なんて救われない事件なのだろう。確かに未鈴のやったことは正しくなかったかもしれない。しかし、じゃあ、どうすれば良かったのか、その答えは到底出せそうになかった。

 祐介は、その気持ちを切り替えるように、根来の方に向き直ると、

「根来さん。全ては終わりました。このことを警察に伝える為にも、一刻も早く、ここから出ましょう」

「ああ……そうだな。しかし、なんだろうな。なんか幻聴が聞こえてくるよ……また足音が聞こえてくる気がする」

 根来は、晴れない心を撫で下ろしてながら、そんなことを言った。

「足音ですか、そう言えば、僕にも聞こえてくる気がします……」

 二人ははっとして、洞内を見まわした。すると、洞内の先で、懐中電灯の明かりがこちらに向かって進んでくるではないか。

 一体、誰だろうか……?

 根来と祐介は、妙な心地がして、顔を見合わせた。


「根来さん!」

 なんだか懐かしい声が響いた。その声は根来の部下の粉河のものだった。

「粉河か! おい。お前、どうしてこんなところにいるんだ」

 根来は驚いて声を上げる。

「すみれさんが、お父さんの受けた依頼がおかしいと言ってきて、それで調べ上げたんです。そして、葉月未鈴という人物が存在しないことを知って、急いでこの島まで……」

「そうだったのか。あいつにも心配かけたな……」

「すみれさんも、この島に来ていますよ」

「すみれが? そりゃ大変だ。犯人はたった今、自ら命を絶ったが、何となくまだ安全という気もしないものだ。おい。すみれは今、どこにいるんだ?」

「所轄の刑事と一緒に洞窟の外で待っています」

「分かった。おい。粉河。見てみろ、これが今回の事件の犯人の最期だ……」

 粉河は根来に言われて、倒れている未鈴を見た。

「支倉双葉……ですか……」


 三人は、粉河が歩いてきた道を戻っていった。そして、祐介はあの暗号の内容に従って、入り口から左右右に曲がった。

 尾上家の全てを狂わした埋蔵金は、本当にあるのか。もしかしたら、ないのではないか、そんな予感が祐介の脳をかけめぐった。

 ところが、その道の先には、巨大な鍾乳洞が拡がっていて、そこには徳川家の家紋がついた木箱が百あまりも、ぎっしりと並べられていたのである。

「おい! 埋蔵金って、これじゃないか……」

 根来が慌てて、その木箱を開けると、中には小判がぎっしりと詰め込まれていた。祐介もこれを見て頷く。

「見たところ、千両箱が百以上ありますね……確かに埋蔵金はありましたね。しかし、根来さん。僕には、この埋蔵金が恐ろしく感じられて仕方がありません。この島で起きた一連の殺人は、元をたどれば、この埋蔵金がもたらしたものではありませんでしたか……」

 根来はその言葉に、何も言わずに、小判を見ていた。そして、その小判を木箱にぽいと投げて戻した。


 そして、根来は、木箱を眺めながら、

「明安は、子孫がこんなことになるなんて、思っていなかったんだろうなぁ……」

 と呟いた。ところが、祐介が首を横に振る。

「根来さん。もしかしたら、明安はこの惨劇を予期していたのかもしれませんよ。必ず、子孫の間で埋蔵金の相続争いが起きると……だからこそ、この暗号の最後の部分は『入るなかれ 青月の夜 地獄ゆき』と書かれているのではないでしょうか。子孫に大切な資産を残すと共に、その危険性をも述べておこうとしたのでしょう。『青月の夜』とは『青月』は青月島を示し『夜』というのは、おそらく、この闇に包まれた鍾乳洞の世界のことを現しているのでしょう。だから、明安の中には、この暗号の中に、埋蔵金に対する二つの狙いを隠した。一つは子孫に富を残すことと、もう一つはその富をめぐる争いを戒めること……」

 根来はその言葉を聞いて、あの暗号の最後を繰り返した。

「『入るなかれ 青月の夜 地獄ゆき』……」

 根来は、その意味を知って、あまりのことに言葉を失った。明安の時代から、全て分かっていたことだったのだ。尾上家の全員が、あの遺言に躍らされていたのである。太平洋戦争当時に明安が仕掛けたものが、現代になって、このような皮肉な結果を生んでしまったのだった……。

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