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クラスの四割はどこかの世界を救いに行ってます。   作者: 宇部 松清
第1章 非日常的、日常生活
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 僕らの通う私立玲瓏高等学校は、この地域の保護者達から『受け皿校』と呼ばれている。


 その理由は2つ。1つは、この学校が市内唯一の私立高校なので、ほとんどの生徒が滑り止め校として受験するという点。そして、自分の力を信じて公立一本で臨んだものの、残念な結果に終わってしまった生徒のために、後期募集の定員が信じられないほど多いという点が挙げられる。つまり、どちらにせよ受験に失敗したやつらは皆ここへ流れてくるという仕組みだ。もちろん、ここを第一志望にするやつもいるんだけど。

 僕がそのどれに該当するかというのは、ストーリーに関係ありませんので、割愛させていただきます。


 僕らの住む秋田県本荘由利原市は海と山に囲まれた人口5万程度の小さな市である。過疎化は進みまくっているものの、ドをつけたくなるほどの田舎ではないのだが(コンビニだって、レンタルDVD店だってある! 映画館は無いけど)、いかんせん、交通の便が悪い。田舎あるあるの1つ、『電車が1時間に1本』はまだ可愛い方で、特定の時間帯は2時間に1本だったりするし、土日はまたさらにその数が減る。さらに言うと、日本海側気候のこの市は毎年除雪費をどこから捻出しようかと頭を悩ませるほど雪が降り、そうなると、ほとんどの交通機関がストップとまではいかないが、ぐだぐだになるのだ。雪国の癖に、雪に弱いとはどういうことかと毎年思う。

 というわけで、ずば抜けて賢いやつは下宿覚悟で隣の秋田市へ進学する。そしてそこまでじゃないやつらがこの市に残るのだ。


 しかしどういうわけか、この県は平均して学力が高い。

 誤解を受ける前に言っておくと、単に平均値が高いというだけで、東大京大レベルのやつらがごろごろいるわけではない。可もなく不可もなく、というのがたくさんいるのだと思ってほしい。ずば抜けて出来るやつは少ないが、ずば抜けて出来ないやつもほとんどいない。なので、こんな『受け皿校』に進学せざるを得なかったやつらも、まともに言葉が通じないようなレベルのお馬鹿さんというのは存在しなかった。まぁとにかく、可もなく不可もなく、なのだ。


 そして、保護者から何と言われようが、ここは生徒からは人気が高い。部活動にも力が入っていて成績もそれなりにおさめているし、校舎もきれいだ。エアコンも完備され、夏も快適である。それに、これは女子に限った話になるが、制服が可愛い。ナントカという有名デザイナーがデザインしたらしい。一見はただのセーラー服なのだが、襟のちょっとしたカットであるとか、胸元のエンブレム、リボンの形と柄等が一つの芸術作品のように調和されていて、そんじょそこらのセーラーとは一線を画している。らしい。男子生徒は一人もそのデザイナーの名前を知らなかったが、さすがはプロだったわけだ。ただ、男子は普通の学ランである。この差は何だ。女尊男卑じゃないのか。


 そんなわけで僕達は、莫大な学費の上に成り立っている高校生活をエンジョイしていた。


 さて、そんな平和な高校生活が、頻繁にテロリストが訪問するような世紀末感を帯びてきたのはいまから1年ほど前のことである。


 入学式を終え、自己紹介なんてものもとうに済ませ、クラス全員のフルネームをカンペ無しで言えるようになった、6月のことだった。


 それは宇宙からやって来た。


 ――隕石である。


 隕石、と言うには随分小型のもので、3階にある僕らの教室の真上(つまりは、屋上である)に落下したそれは、どこからどう見てもただの小さな石ころだった。

 その小ささが幸いしたのか、わずかにコンクリートを削るだけにとどまったために怪我人も無く、しばらくはテレビ局の人や調査員と称する人達が連日押し寄せ、そして、騒動はあっという間に沈静化した。この本荘由利原市がここまで世間の注目を浴びることは、後にも先にもこれっきりだろう。


 それが始まりだったのだ。


 それをきっかけに、僕らの教室では次々と不思議なことが起こった。僕らの教室、というよりは、僕らに、という方が正しいのだが。


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