#ex-08 Even if my sister and brother are married, I will not get married.
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蘭たちが到着してから数日後。
追加の御客人が到着していた。
それに加えて、嫁の保護者一同である。その数は非常に多く、流石の詠も困惑していた。
といっても、親の代から魔導師で両親ともに死亡している者も多いため、全員がそろっているわけではない。しかし、組長とその嫁さんだったり、解散したとはいえまだ絶大な権力を持つ爺だったりというのヤバい人たちが中に含まれているため、ニューヨークの真ん中で集まるには非常に都合が悪かった。
よって、覚悟を決めて嫁さんのご両親を呼ぶにあたって、詠は島を一つ購入した。
無人島だった島は今やすっかりリゾートアイランドに改造され、立派なホテルや空港が設置されている。詠たちが使用しない際は、その辺のセレブの皆さん御用達のリゾートとなる予定だ。まだ、施設をオープンしていないのに“天魔”のネームブランドだけですごい予約が殺到しているのでこの島を買うにあたって掛かったお金は回収できるだろう。
「島って買えるんだね」
「どうした、フィー。遠い目をして」
「流石にここまでするとは、と思って」
「なんかお前は通常営業だな」
「だって、僕は親もういないしねぇ。更紗とか若干猫被ってるような気がするし」
「あー、でも、あいつは親の前だとあんなもんだぞ、昔から」
「白い3人は親居ないから僕と似たようなもんかー。僕もあっちに混ざってこようかな。詠も行く?」
「さすがに初日は色々周る」
「まあ、そうだろうね」
「明日からそっちに混ざるよ」
「いいの?」
「いいんじゃないか?子供は母さんがデレデレで見てるし、ハーマンと組長と教皇とうちのじーちゃんは揚揚とゴルフ行ったし」
「お兄ちゃん、せっかく南の島だし、海行こ!」
「詠、新しい水着買ったんです。海行きましょう!」
「綴、フェリシア、落ち着け」
「お母さん、どうですか、この島」
「いいわね。最高ね」
「今日のために詠さんが買って全部整備してくれました。この気候ですけど毒虫も毒蛇も海ごと凍らせて絶滅させましたので気にしなくて問題ありません」
「あなたの旦那様すさまじいわね、真白。ハーレムの一員になるって聞いた時はびっくりしたけど」
「大丈夫ですよ。ちゃんと愛してもらってますから。他の方とも喧嘩はしますが、中自体はいいですし――そう言えば、お父さんは?」
「お父さんはゴルフバッグもってゴルフ場に行ったわね。それよりお母さん、エステに行きたいわー」
「じゃあ、行きましょうか」
「お母さん、お父さん、いい加減正気に戻って」
「いや、更紗は慣れてるかもしれないけど、父さんただの大工なのにこんなゴージャスなところに来ていいものか」
「服装とか大丈夫かしら?」
「私が送ったの着てきてるからいいんじゃない?」
「この服もいったいいくらするのかお思うと……」
「その服は1000ドルもしないから」
「娘がお金持ちに嫁ぐと結構な気苦労があるもんだなぁ……」
「確かに詠はすごく稼いでるけど私もお父さんの100倍ぐらいは稼ぎあるよ?」
「ぐふっ」
「お父さん!?」
「あ、二人とも、この島にいる間は全部無料だから好きに遊んでいいよ?流石にカジノとかは有料だけど……」
「「カ、カジノ……?」」
「……二人とも感覚が庶民過ぎない?あ、サナ。ほら、おばあちゃんよ」
「あう」
「孫、か、かわいい!?」
「潤一、荷物は?」
「ホテルに送っといてくれたから手持ちだけで大丈夫かと」
「しかし、これはすごいわね」
「ふーむ。さすが世界最強の魔導師というべきですか。縁さん、まずどこ行きます?」
「とりあえず、昼食かな?夕食はみんなで食べるのね?」
「ええ、立食パーティーらしいですけど」
「そういえば、マリウス爺様は?」
「マリウス翁は明日就くそうですね。まあ、1週間も休み取ったのでゆっくりしましょう」
「そうねぇ。持つべきものは優秀な弟ね」
「……こういうのに連れてくるのは夫の仕事のような気もしますがね」
「思ってたより軽いかしら」
「そうかな?とりあえず、孫を抱いてみた感想は?」
「最高ね。あなた結婚できるとは思ってなかったもの」
「まあ、ちゃんと詠が貰ってくれたから」
「しかも娘だし。おばあちゃんが立派な魔女にしてあげますからね?」
「私の娘、結婚できるのかな……」
「大丈夫よ、こんなにかわいいんだもの。ねえ、レーアちゃん」
「……今なら詠が親呼びたくなかった理由がすっごくわかる」
「偲」「偲ちゃん」
「ど、どうしたの、お父さん、お母さん」
「お前、“天魔”殿と結婚するのか?」
「ええ!?いや、そんなつもりはないけど!?」
「だって、皆さん、天魔さんの身内の方なんでしょう?」
「今回、いっぱい人来るからどうせなら呼んでいいぞって詠先輩に言ってもらったから呼んであげたのに!」
「そうだったの」
「お前もあのハーレムに入るのかと思うと父さん少しストレスで死にそうになったぞ」
「なんで?先輩のハーレムに入れるならそれはそれでいいと思うけど?」
「そうなの?」
「だって、少なくとも今は結婚する気ないし……でも、詠先輩にならお世話になってるし、駆け出しの頃に命も助けてもらってるし、断る理由もないんだよね」
「う、だが、一人娘のお前が結婚しないと孫の顔が見れない……」
「それは一大事ね、お父さん」
「あー、今のところ結婚する気はないなー。子供もサナちゃん見てるだけで充分だし」
「ひゃー、丞さん。これっていくらぐらいかかってるんでしょうか」
「実は基礎工事は詠が魔法で全部やったから通常の3割ぐらいの値段しかかかってないみたい」
「それはすごいですね」
「詠から、結婚式ここでやるか?って言われてるんだけど、どうかな?」
「え?ここ借りてもいいんですか?」
「貸し切りにしてくれるってさ」
「それは素敵ですね」
2時間ほどかけて色々なところに顔を出した後、詠はビーチにやってきた。
魔導書たちを開放して放ってやればはしゃぎまわっている。
「あ、お兄ちゃん。やっと来た」
「フィオナはどうでしたか?」
「母さんとばーちゃんが構い倒してたよ。他の子らも」
「ほえー。本当にあれ私たちのお母さん?」
「さあ?」
「とりあえず問題は内容で安心しました。父たちは?」
「ハーマンは他のオッサンたちとゴルフコースまわってたぞ。酒飲みながら」
「はぁ……昼間から何してるんですか。まあ、いいです。どうです?この水着」
「なんか最高にエロイな」
「そ、そうですか?」
「触っていい?」
「構いませんけど……」
「ちょっと、まったお兄ちゃん。私の存在忘れてるでしょ!?」
「おっと、危ない危ない。理性がトんでた」
「お兄ちゃん、8人も奥さんいるのにすごい性欲だよね」
「……妹からそう言うこと言われたくなかった」
「できれば言わせないでほしかった」
「そういう綴さんは、ご結婚は?」
「……今のところ好きな人いないから」
「そうですか」
「だって、今までずっとお兄ちゃんがベストだもん」
「「……………へ?」」
「ああああ、ちょっと待って、え?今私なんて言った!?」
「兄への告白だったように思いますが……」
「……母さんが綴何とかしてあげなさいって言ってたのこれか」
「うにゃあああああああああ、恥ずかしくて死にそう!」
うずくまる綴の肩をカルマの小さい手が叩く。
「ぅぅ……?」
「私はオッケーだと思うわ!」
「血縁ある妹は、倫理的にアウトなんだよ……」
「8人も囲ってる男が今更って感じではありますがね」
「それを言われると何も言い返せない」