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#ex-05 Time that is not cheating is over.





女王による高らかな開幕宣言とともに始まった。

魔法使いたちや、それを志すもの、そうでないものもこの一大イベントを大いに楽しんでいる。

各国の用意したブースでは各々の技術の粋を尽くした魔法や魔道具、新型端末が披露されている。

そんな中で特に人気の国はイギリス・アメリカ・ドイツの3国だろう。

イギリスの展示物は言うまでもなく、モラン社主体で組まれており、最先端の魔法を見ることが出来る。

アメリカのブースではIMAに所属する有名魔導師のサインや実際に使っている道具なども展示されており、その手のマニアにはたまらない場所となっている。

そして、ドイツはというと、ハーゼンバインがまさかの“紫の魔導書”を出展したため、一目見ようと多くの人が詰めかけている。

日本や中国のブースもそれなりに並んではいるが前述の3か国には劣るだろう。


そして、メインステージにはより多くの人が詰めかけている。

これから始まるのはまだまだメディアに出ることはほとんどないものの、一番有名ともいえる大魔導師。

とくにロンドンの住人は、彼がしばらくの間拠点として活動していたため、知己の者も多い。

そしてこのステージには“天魔”と呼ばれるようになった彼本人と、“黒翼”と“藍姫”と呼ばれる彼の妻2人。もともと、美しい容姿だが、今も経産婦とは思えないスタイルをしているため、男性ファンは多い。


現在時刻は11時。

開始時刻になってもその姿が現れれないので、司会者やスタッフが嫌な汗をかき始めたが、その姿は突然ステージの上に現れた。


「おっと、25秒遅れた。申し訳ない」

「転移の制御に思ったより時間が掛かりました。申し訳ありません」


フェリシアと更紗が詠の両脇で軽く頭を下げる。


「さて、司会者さん。これは一応IMA広報のコーナーだったと思うんだが、予想以上の盛況だな」

「そ、そ、そうですね。みなさん、お三方を一目見たいと集まった方たちばかりだと思います。なお、この時間のステージの模様は会場内全域生放送でお送りしてますよ」

「んー、この先の段取りでは、なんか軽く質問コーナーみたいなことをするみたいだったけど」

「そうですね、早速コーナーに」

「それはちょっと待ってもらってだな」

「え?」

「IMAから重要な連絡事項が出たので先に伝えさせてもらう。――ネル、頼んだ」


詠がそう声を掛けると、ステージの上に巨大な半透明のスクリーンが、そして、会場内のいたるところにも小型の画面表示が現れた。


画面には“銀の鍵”のエンブレムが表示されている。

そして、画面はステージの様子に切り替わった。


「さて、先日――というか、昨日だな、各国代表、国連、IMAからの承認を得て、魔導師全世界共通の評価ライセンスの発行が決定した。今この瞬間より、IMAに登録している魔導師は審査を受けることが可能だ。また、来月期より、このライセンスを持たない魔導師が自らが国籍を置く国以外での活動を全面的に禁ずる。また、このライセンス試験を受けるものが、IMAの用意した規定に足りていないと判断した場合ライセンスを発行しない、加えて、所属する国の機関に、1級資格の取り消しを求める」


そういうと詠はポケットから一枚のカードを取り出した。

詠の写真と名前、加えて金字で“S”、その下に小さく“A+”が描かれている。


「国際ライセンスの評価尺度は、受験者が1級魔導師である前提で、G-からS+までの24段階用意してある。実技・筆記に加えてFランクから上は仕事の評価も含める。評価項目は開示しないが52項目ある。先代のIMA代表が問題行動を起こさないという前提で評価したものを“A”ランクの基準としておいていることを先に告げておく。ああ、試験については、まあ“通名”を持ってるぐらいの魔導師ならば、無試験で審査を受けられる。まあ、それでもランクアップには試験を受けてもらわないとダメだけど。ちなみに、このエキスポ中に行われるWFUKの1級試験にエントリーしていて、かつ、現在他国の1級資格を持っている人間は当日受付にて国際ライセンス試験に変更することが出来る――IMAからの連絡は以上。それでは進行通りに行こうか」


そういうと表示されていた半透明のスクリーンはすべて消えた。


「ええと、すみません、私から一つおたずねしてもいいですか?」

「ああ、うん」

「ヨミさんはSランクという事で決定なのですか?」

「それは決定らしい。ちょっと前のあの事件も含めて、世界に対する貢献度が大きすぎるし、ぶっちゃけ前代表や現代表より強いので、オレをBとかに置くと、他の魔導師ほぼ全員G以下になる」

「ははは、そうですか……」

「ああ、ついでに“連合(リーグ)”のランク付けもするらしい。こっちは最高が“A+”だそうだ。下は“F-”だな」

「……えっと、もう何を質問しようかも吹き飛んでしまったのですが、気を取り直してまいります」





「なるほど、そういう事だったんですか……ちなみに丞さんたちは?」

「僕と結愛は“C+”だね。更紗さんが“A+”、フェリシアさんとレベッカさん、ルリカさんは“A”。ナツメさんとミミさんとフィリスさん、ネルさんが“A-”。リンユーさんと偲さんが“B+”、綴さんが“B”で、真白さんが“B-”だったでしょうか?」

「……とんでもないですね」

「といってもほとんど過去の仕事に対する評価ですから、真白さんと僕ら二人はロンドンで試験受けて昇格目指すけどね」

「私が受けたとしてライセンスとれるかな?」

「菫ちゃんなら、E+からD-ぐらいは確実に取れると思う。経験が少ないからそれ以上は本当に才能次第になるけど」

実力(・・)ではなく才能(・・)?」

「その辺は自分で受けて確かめてみてね」





「おうおう、詠の奴やらかしやがったな。どうりでオレのとこにも試験の通知が来るわけだ」

「え?テルさんも一緒に受けるんすか?」

「まあ、オレ海外飛び回れなくなったらやることなくなるから。影千代みたいに隠棲するにはまだ早いしよ」

「テルさんでどれぐらい行けそう?」

「そうだなぁ……順当にいけばCぐらいか?B-からはちょっと頑張らないと厳しそうだな」

「詠より強いんじゃなかったのか……」

「バカ野郎、詠が本気出したら、この島ぐらいなら10分で消せるんだぞ。こぶしだけならそりゃ勝てるだろうが、詠が本気なら宇宙戦艦とやりあうようなもんだぞ」

「たとえがでかすぎてよくわからん……」

「まあ、私たちもEぐらいとれるように頑張ろう?」

「これは菫を見返すチャンス?」

「……どうだろう?」

「せめて問題が日本語なら」

「その辺はまだチャンスあるかもよ?」





「あの馬鹿息子!新発田!美原!」

「え、いや、どうすればいいんですか?」

「咄嗟の行動で我々が何とかできる範囲を超えてるんですけど……」

「とりあえず、総理と官房長官と幹事長に連絡。早く対応しないと魔導連の発行する1級証がただの紙切れになるわよ」

「そこまでのことですか?」

「当たり前じゃない。いくらかましになったとはいえまだうちの国魔導師三流よ?どっかの自称平和団体が武装が必要ないとか意味の分からない抗議をしたり野党が乗っかったりしてるせいで諸々進んでないし。ああああ、もう引退したい。もういいわよ、魔法テロで滅べよ日本。私は息子にニューヨークにマンションでも買ってもらうことにするわ。美原、貴方も来る?」

「はい、その時はよろしくお願いします」

「え?私は?」

「新発田は何とかしなさい。男でしょう」

「ひどい男女差別だ」


突然電話がかかってくる。

すぐに蘭がそれをとる。


「はい、烏丸です」

『私です』

「総理ですか。そろそろ連絡をしようと思っていたところです」

『どうしますか?』

「法改正。今月中にできないというなら私は辞めます」

『あの、君に辞められるともたないのですが』

「そう言われましても」

『それよりも、我が国にこの変更について一切連絡がなかったのですが』

「恐らくですが、我が息子はうちの国の魔導師は育成失敗してるので、最悪必要ないと判断したのではないかと」

『そんなに弱いですか?』

「ええ、諸外国が牙を持った狼なら、うちの魔導師はケージの中のウサギです」

『そんなに……』

「万が一戦争になったら魔導師部隊は一瞬で全滅ですね。何が痛いって、いまKoganeが本社をアメリカに移そうとしているという事ですね。技術も失うともうダメですねこの国」

『とにかくすぐにIMAとの交渉に入ってくれ』

「やってみますけどたぶん無理ですね」


そういって電話を切る。そして、自分の携帯電話から詠の名前をタップして電話を掛ける……が、出ない。

仕方ないので綴に掛ける。


「もしもし?」

『どうしたの?お母さん。あ、おはよう』

「おはようっていう時間でもないでしょう。電話した理由はわかるわね?」

『うん。お兄ちゃんがどうせかけてくるだろうって』

「そう。ダメもとで聞くけど、何とかなる?」

『無理』

「でしょうね。まあ、どうでもいいわ。それで、孫は?」

『可愛いよー。フィオナも紗奈も夏希も』

「少ししたら見に行くわ」

『うん。それは歓迎するって、お兄ちゃんが。あ、あと、もう何人かお嫁さん増えるって』

「なぜ親にそれを事後承諾なの?」

『それを私に言われても。でも、ハーマンさんとは戦争みたいな戦いをしてたけど』

「そりゃそうなるわね」

『でも、勝ったって』

「さすがね……」

『そっちにももうすぐ資料が届くと思うからとりあえずそれ見て――あ、呼ばれたから行くね?』

「ええ、仕事中ごめんなさいね――この子結婚できるのかしら?」


「綴ちゃんですか?」

「ええ。未だに詠にべったりなんだもの――いっそ、子供作らせるか?」

「ちょっと大臣。それは流石にやばいです」

「気づかなければセーフよ。私も気づかないことにするし」

「落ち着きましょう、大臣」




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