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#ex-03 Silver is pronoun of the strongest.




2日目。

全と灯里は今日も会場内をぐるぐる回っていた。

昨日はあの後、中国の持ち込んだ不思議生物が脱走したり、それを即殺したロンドン支部の魔導師が理不尽にもキレられたり、アメリカのどこぞの会社の開発した新型魔導鎧殻が想定の数倍重かったため、運搬に人手が足りず手伝ったりとなんやかんやあった。


今日は比較的落ち着いている、と思いきや、どこの国からやってきたのか反魔法団体の群れが邪魔で搬入が滞っていた。


「あいつらあそこで座り込みしててどうにかなると思ってんのか?」

「さあねー……あ、また逮捕された。警察も大変だねコレ」

「だなー……――おい、アイツ、おかしいぞ」


ゲートの近くで集まっていた奴らの中の一人が、異様なまでにきょろきょろと周囲を伺い、ポケットに深く手を入れている。


「あ、ほんとだ……ロンドン警備45番から全体へ。正面ゲート付近で不審な男性。反魔法団体(アンチマギ)の人っぽいですが様子がおかしいので近くにいる人は注意していください」

『こちら本部。了解した。特徴は?』

「黒いパーカーとジーンズ。あとはイエローのキャップを被ってます。さっきからポケットと背負っている鞄をせわしなく確認しています――あ、式が出ました捕縛します」

『その辺の機材とかを最優先で守ってくれ』

「りょーかい――全」

「あいよ」


魔法の発動に手間取っている男のところへ全が一気に加速し、こめかみにつま先を叩き込む。


「あ、ダメだわ。こいつコントロールできてねぇ」

「そっちは私が何とかする」


男の荷物から吹きあがった炎に灯里がすかさず冷気を吹きかけ消化する。

その一連の動きを見た直後警察は、この一団をテログループと断定して一斉に逮捕しにかかった。

これで正面は片付いたわけだが。


「しかし、反魔法掲げてるなら魔法使うなよな……」

「こういう輩は基本操作が下手過ぎて暴走するしね」


灯里は、荷物の中にあった増幅器や、端末の残骸を確認し、本部の確認を取ってから泡を吹いて倒れている主犯ともども警察に引き渡した。


「さて、じゃあ、オレらも戻るか」

「昼ごはんどうする?」

「うーん、その辺の屋台で適当に買うか?ああ、でも昨日ジョージに教えてもらった店、美味しかったな……」


門がまともに解放されたことにより、展示物搬送用のトラックが入り始めている。


「今日中に仕上げないとやばいのにあいつらも面倒なこと――っ!?」

「――え!?何事!?」


全たちも周りにいた魔導師たちも全員警戒態勢をとる。

突然、後ろから入ってきていたトラックのタイヤに光の杭が撃ち込まれ、停止したのだ。


「また敵襲か!?」

『全員警戒態勢』

『――こちら、“流星”です。正門付近での魔法狙撃はこちらの“鳳雛”によるものですのでご安心を』

『状況の報告を』

『その前に片付けさせてもらいます』


どこからか現れトラックの上に着地した丞が、そのまま運転席で動揺していた男を引きずりだし、拘束した。

助手席の男を拘束したのは菫だった。


「このトラックの中身、ほぼすべて爆弾です。検品される前に吹き飛ばすつもりだったみたいですね。結愛、どうですか?」

「うん、中身全部記載とは違う火薬が載ってる」

「これを処分するのも大変なんですよ、まったく。すみません、本部、お騒がせしました。次があるのでこれお任せします」

『構わないが、次とは?』

「騎士団の残党です」


丞たちはすぐに別の場所へと消えていった。


『詳細を説明します』


無線からネルの声が聞こえる。


『ゲートを吹き飛ばした後に、混乱に乗じて人を潜り込ませ、破壊工作をするつもりだったようです。いま順調に殲滅しておりますので、後程40人ほど送ります』

「40……」

「私たちには無理だね。というか菫ちゃん大丈夫かな……」


一度本部へと戻り、昼休憩をとるために灯里とふらふらと歩き回る。

サンドイッチのほかに軽食を数点買って会場内のベンチで一休みしていると、知った顔が歩いて来た。


「お、元皇帝」

「全、それは流石に失礼だと思う」

「じゃあ、西条」

「そっちは逢坂だったか。休憩か?」

「ああ。いい感じに捕り物決めたと思ったら目の前で潜伏してたテロリスト捕まえられてびっくりした」

「“銀の鍵”か」

「そういや、詠とは友達なんだっけ?」

「榛葉か……高校卒業してから会ってないが、それなりに仲良かったぞ。よく無茶やって一緒に怒られた」

「なるほど――ってあれ?」


向こうからテロリスト鎮圧に行ったはずの友人たちが歩いてくるのが見えた。


「なんだ、全こんなとこでなにしてるんですか?」

「灯里姉は休憩?」「灯里さん、逢坂さん、お連れ様です」

「お疲れ様です」


「お前ら、テロリストは?」

「ああ、僕らが行ったときにはもうキャロルさんが半分倒してましてね……」

「やっぱ魔導書持ちってチートだわ」

「そんなことより、西条帳さん」

「俺か?」

「サインください」

「………………は?」

「こういうやつなんだよ。許してやってくれ」

「2枚お願いします」


隣から丞の色紙の上に結愛がもう一枚重ねる。

恐る恐る、といった様子でそれを受け取った西条は一応サインを書く。


「俺なんかよりよっぽど君らの方が有名人だと思うが」

「いや、僕らなんてまだまだですよ。ははは…………結愛」

「“A”“VA”」

《“Absorption”》

《“Vanish”》

《Integration completion :“Impact absorption”》


結愛の発動させた光の膜が後方から飛来した攻撃を完全に消滅させる。


「“Search(探せ!)”」


そう結愛がつぶやいた瞬間、結愛を中心に波紋の様なエフェクトが広がる。


「……これ、さっきの連中」

「え?さっき引き渡したじゃん?」

『おーい、なんかテロリスト護送中に逃がしたらしいわ』

「マジですかキャロルさん」

『とにかくこっちはこっちで対応するから、そっちはよろしく』

「了解です――結愛、数は?」

「15」

「なんだそれだけか。とりあえず、さっさと捕まえないと――ネルさん、本部に連絡を」

「あ、やばいかも」


全員、魔力が膨れ上がるのを感じた。

自爆覚悟で無理やり魔法を暴走させたのだろう。


「自爆テロか」

「おい、丞、これヤバいんじゃ!?」

「やばいね。僕にはどうしようもないけど」

「たたた、丞兄、どうしよう!?」

「まあ、落ち着いて――問題ないみたいだし」


結局、爆発といえるような音はしなかった。

しばらくすると、金髪の美女が、いくつかの黒焦げの肉塊を引きずって丞たちの前に現れた。


「何があったんですか?逃がすなんて詰めが甘いですよ」

「引き渡した直後に逃げられたみたいでして」

「なら責任はロンドン支部ですね――フィー、そちらは?」

「うん、問題ないよ。残り全部マインドクラックして傀儡にしたから」

「流石です。幻術のキレが上がってますね」

「そうかな?というか、ミミ。それなに?グロいんだけど」

「ああ、結界で封じたら中で爆発してこの有様です」

「なるほど……」


フィーと呼ばれた女性の後ろには亡者のようにぞろぞろとさっき打ちのめしたずぶ濡れのテロリストたちが続く。


「丞くん、これどうすればいいかな」

『すぐそちらに回収が向かいます。お疲れ様です、フィリスさん、ミシュリーヌさん』

「ミミでいいですよ」「僕もフィーでいいよ」

『一応、仕事中なので』

「お昼ごはん食べてきてもいい?お腹空いて」

「そうですね。なんか飛行機でも微妙な物しか出てきませんでしたし」

「じゃあ、後は引き継ぎますよ」

「丞君、よろしくね」「よろしくお願いします」



2人が去っていくのを見送る。


「全、灯里、そして西条さん。あれがうちの中堅戦力です」

「え?中堅?」

「中堅っていうよりは一番動かしやすいレベルというか」

「元・黒杖と元・教会のトップ魔導師で魔導書所持者です。まあ、詠とか更紗さんとかはもっと強いから下手に動かせないというか」

「詠君動かすとすごいお金かかるし……」

『ですね』

「魔導書3冊がネックですね。あれの移動に色々規約が掛かりますから。まあ、いつも教皇で乗り切るのでそのせいで不要な罰金を払う羽目になったりするんですけど」


「そういや、菫ちゃん、制服もらったの?」

「うん、エンブレムなしだけど」

「いいなぁ、カッコいい」

「だよね。あと、これも借りてる」

「あ、それ、Si-Lack!いいなぁ。丞と真白はもらったのに、私たちはくれなかったんだよね」

「まあ、基礎できてない人に渡して使い熟せる様なものではないですから」

「そろそろくれてもいいんじゃないか?」

「いや、買ってあげてくださいよ」

「高いじゃん!高級端末の値段より0二つ三つ多いじゃん!」

「それに別売りの中身(キー)買わないと意味ないしね……」

「アディショナルVer.2.0を買ってくれればいくらか結愛にお金が入るのでぜひ買ってください」

「詠さんと共同開発だから半分だけどね」

「え、結愛さん、開発もしてるんですか?」

「むしろそっちがメインだよ?今は忙しいから手伝ってるけど、基本はニューヨークの研究室で引きこもってるし」

「それでこれだけ戦えるからすごいですよね。私ももっと強くならなきゃ」

「真白ちゃん、それ以上強くなってどうすんの……?」

「全さん、強くならないと詠さんに嫁入りできないじゃないですか」

「今何人だっけ……?」

「フェリシアさん、更紗さん、レベッカさん、ルリカさん、ナツメさんの五人ですね。まあ、ほぼ愛人扱いなのがネルさんとフィリスさんとミシュリーヌさんですけど」

「実質全部じゃね?」

「ですね」

「まあ、別にみんな仲良く問題ないんでしょう?」

「仲良くはあるんですけど、この忙しい時にレベッカさんとルリカさんが妊娠中で動けないという問題が発生しましてね」

「うわぁ」

「あの野郎、何に子供作る気だ?」

「今、3人女の子がいますからね」

「可愛すぎて綴さんと結愛がメロメロになってるっていうね」

「しょうがないじゃないですか……」

「まあ、結婚したことですし、この件が片付いたら僕もマンション買うんで子供も……」

「丞さん……」

「おい、こんなとこで友達の人生設計とか聞きたくないぞ」

「まあ、全じゃそこまでの甲斐性ないもんね……はぁ」

「……馬鹿な兄貴でごめんね、灯里姉」

「いいんだよ、菫ちゃん、もう慣れた」


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