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#ex-02 This brother wanted.




「警備って言われてたから、結構暇なのかと思ってたけど、案外忙しいな」

「だねー。もう5人は捕まえたよ」


灯里はボロボロになった不法侵入者を回収しに来たロンドン支部の魔導師に引き渡す。

英語は微妙だが身振り手振りで案外何とかなるもんである。


「というか、オレたちイギリスのブースの周りにしか張ってないのにすごい引っかかるな」

「まあ、今回の目玉だしね」

「これ、菫たちすごい大変なんじゃ……」

「まだ詠たちもついてないしね。漁ってからの開催でここまでスパイが入ってくるなら、当日とかやばいね」

「テロとかそういう次元じゃねーだろうなぁ」


そんな話をしながらうろうろしていると、不意に後ろから肩を叩かれる。

一切気配を感じなかったため驚いて、構えたまま振り返る。


「おいおい、気抜いちゃダメだろ?」

「あ、誰かと思ったらテルさん!テルさんもロンドンで仕事ですか?」

「おうよ。まあ、オレの雇い主は日本だがな」

「ほえー。やっぱあいつらだけじゃ無理だって思ってたんですね」

「あいつら弱いからなぁ」

「テルさん的には、アイツら――というかオレたちもですけど――の評価どうなんです?」

「詠はなんて言ってた?」


そういいながら照日は煙草に火をつけて咥えた。


「なんて言ってたっけ、灯里」

「たしか、『体術2点、戦闘知識2点、対人戦闘0点、魔法知識6点、端末知識3点、国際知識2点、集団戦闘0点、精神力1点、柔軟性4点、銃器知識0点』って言ってた気がする」

「良くそんなの覚えてたな……しかし、合計20点か。さすが何度も死線くぐってくると甘やかされてる奴らへの評価は厳しくなるな」

「私たちはロンドンの人たちと仕事してみて連携がとりやすくてビックリしてるんですけどね。言葉通じないのに、こっちの人たちの方が連携取りやすいって」

「まあ、ロンドンの奴らは集団戦について特別優秀だからな。詠もこっちでそれを学んでたわけだし。あとで日本の奴ら見てみろよ、ひどいぞ?」

「じゃあ、後でからかいに行きます」

「え!?やめとこーよ、全」

「さすがに許可出たらな。それより、テルさん、ここ禁煙ですよ」

「もっと早く言えよ!ああ、後で日本のとここいよ?用もあるし」


照日は急いで携帯灰皿に煙草を突っ込んだ。





「いやー、菫ちゃんが来てくれて助かったなー」

「本当ですか?」


現在菫は3階の会議室へと通されて結愛と真白に挟まれて座っている。

そして、結愛の隣でノートパソコンをいじりながら丞が話している。


「さて、準備は終わってるけど……ネルさんは?」

「今、来ました。すみません、思ったより産業スパイが多くて向こうもかなり大変でして。まあ、テロまではいってないのでこちらの仕事はありませんが」

「で、キャロルさんは?」

「もう間もなく」

「来ましたよ、今」

『キャロル、あなた、結婚したんですからもう少し御淑やかに』

「うるさいな、キャスティ。いいんだよ、リーアムが良いって言ってるんだから」


そういうと、キャロルが席に着く。


「おや、初めて見る顔だ。私はキャロル・バイロン。よろしく」

「え、はい、よろしくお願いします」

『キャスティと申します。お見知り置きを』

「よ、よろしく」


菫は魔導書というものを体感したことがなかったため、どこからか聞こえる声におそるおそる返答する。


「よし、こっちは大丈夫ですね。ネルさん、後はよろしく」

「はい。承りました」


ネルがタブレット端末を操作すると会議室のスクリーンに“銀の鍵”の紋章が浮かび、消えると同時にいくつかのアイコンが表示された。


「詠さん、今大丈夫ですか?」

『ああ、問題ないぞ。久しぶり、キャロル師匠』

「まさか教え子に顎で使われることになるとはな」

『階級はオレの方が上ですからね。それとキャスティも』

『お久しぶりです』


“天魔”と書かれたアイコンが明滅している。つまり、この声の主は――と菫が考えていると、隣に“黒翼”のアイコンが表示された。


『あなた、本題をお願いします』

『ああ、そうだった。先に、そこにいるであろう全にはもったいないできた妹ちゃんに自己紹介を。オレは詠・榛葉=シャンクリー。この連合のリーダーだ』

『サブリーダーのフェリシアと申します』

『本当なら、オレたちも警備を頼まれてたんだけど、どうしても当日まで行けなくなってな。法改正とかいろいろ国連とIMAを無理やり動かしてるからアメリカを離れられないわけだ。で、そっちの警備は、そこにいる丞と真白と結愛、あとはキャロルさんに任せて、もうちょっと人でがほしかったから九条さん脅して送ってもらったのが君というわけだ』

「は、はぁ……お役に立てるかわかりませんが」

『全に聞いてた様子と違うな。もっと勝気なイメージだったけど』

「菫ちゃんは自分より優れてる人には礼儀正しいんだよ」

「それだと私が性格悪いみたいになるじゃない、丞兄」

『まあ、なんでもいいや。とりあえず、きちんと仕事してくれたオレからも特別報酬出すから、がんばってね。現地の指揮はネルに一任する。あとは、明日の午後には助っ人も着くだろう』

「助っ人ですか?」

「誰が来るんですか?」

『ついてからのお楽しみだな。あ、結愛、綴から渡された荷物の中に、紋章なしの制服入ってただろ?』

「あ、はい」

『それ、菫にあげてくれ。日本の制服なんて紙みたいなもんだから』

「了解です。菫さん、あとで私の部屋に来てくださいね」

「あ、ありがとうございます!」

『あと、ネル。菫に対してSi-Lackの一時貸与を認める』

「承知しました。そのように手続きしておきます」

『逢坂菫か……全より優秀じゃないか……こっち育てた方が楽だったんじゃないかね』

「まあ、全には全の良さがありますから」

『それはわかってる。テルさんのとこで1か月ボコボコにしてもらったらだいぶ強くなったしな』

「あっはっは、あれはひどかったですね」

『詠、そろそろ』

『ああ、悪い。ハーマンとの約束があった。ネル、いつも通り後は任せる』

「はい、わかりました――といいましても、テロさえ起きなければ特に仕事はありませんが、とりあえず、会場の確認に行きましょうか。総員、装備準備お願いします」





全と灯里はこちらで仲良くなったクリスとジョーダンというロンドン支部の魔導師とともに、日本ブースに訪れていた。

ちょうど渡す書類もあったため、ついでに使いもしているのだ。


「で、全。全の師匠ってのは」

「聞いたことないか?テルヒ・ツキカゲっていうんだけど」

「Oh、聞いたことがあるよ。魔法をこぶしで殴り飛ばすクレイジーな人だろ?」

「そうそう、奥に控えてるって言ってたけど――すみません」


入り口の前あたりに立っていた魔導師に話しかける。


「月影魔導師呼んでくれますか?」

「は?お前、いきなりなんだ?」

「ああ、えっと、めんどくさいな……逢坂全といいます。1級魔導師です」

「所属は?」

「今はどういう扱いなんだろう?一応、大阪支部だけど」

「なんだ、大阪か」

「京都じゃないなら格下だな」

「違うよ、全、灯里。今は君たちはロンドン支部に仮所属だよ」

「そうなの?クリス」

「そうそう、こっちの日本の魔法使いには逮捕権はないけど、君たちにはあるからね」

「へー、そうだったんだ。知ってたか?灯里」

「知らなかった。まあ、どうせ詠のおかげだろうし、過信はダメだよ」

「だな」

「全は妹に負けてるしね」

「ああ!?ジョージそれは言うなよ!?泣くぞ!?」

「おい、煩いぞ、何をしている」


騒ぎ過ぎたせいかブースの奥から1人の男が出てくる。

全の態度にかなりイラついていた日本の魔導師2人思わず姿勢を正す。


「お、日本の皇帝のお出ましか」

「元・皇帝だけどな」


西条帳や御来屋朱門、相模千一らは前回の東京へのテロの直後に、実力が一定以上に達していないものとして“通名”の取り消しが行われた。

そもそも彼らの申請を行ったのは前東京支部の役立たずの支部長であったため、彼の名前で認可されていた多くの魔導師が再試験を受け、大半が降格することなった。

西条帳はその後、豪州と中国でライセンスを取得し、“牙狼”という通名を取得したが、通名の再取得がかなったのは今のところ彼だけだった。

御来屋に関しては現在2級魔導師のライセンスすら剥奪される可能性すらある。魔導書に頼りきりだったため、彼には技術知識才能一切が不足していた。


「お前、今回のメンバーにはいなかっただろう?なぜここに?」

「オレは逢坂全です。こっちは十朱灯里。ロンドン支部への援軍として大阪から来てます」

「なるほど、それで何の用だ?」

「えっと、灯里、資料」

「あ、うん。この資料サインして本部までお願いします」

「了解した」

「あと、中にいる照日さんに呼ばれてきたんだけど」

「今呼んでくる。ちょっと待ってろ」


「なっ、西条さん、いいんですか?」

「何がだ?」

「いやだって、そんな」

「別に問題ないだろう」

「だって怪しいじゃないですか。オレたちと別口で日本人が来てるなんて」

「……そんなんだからうちの国の魔導師は弱いんだ」

「お、気づいたか。それに気づいたらお前はまだ成長できるぜ」


なぜかワインボトルを持った照日がそこにいた。


「……月影さん、ここ禁酒ですよ」

「マジかよ酒もダメなのか!ちっ、めんどくせぇ。降りてやろうかなこの仕事。それより、全が来たんだろ?アイツ騒がしいからすぐわかるぜ。ついでだからお前も来い。暇してるんだろ?」

「わかりました」

「――よう、待たせたな」

「来たはいいんですけど、なんで呼び出されたんですか?」

「いや、これ預かってたんだ。2人分」

「これ?」


受け取った封筒には“Wizard Force of United Kingdom”の文字があった。


「なんだ、全。お前も受けるのか」

「灯里も、がんばれ」

「え?なにこれ?二人ともなんかしってんの?」

「教えてやれよ、ジョージ」

「これは、次の1級試験の受験表が入ってる特別な封筒だ」

「ということは、テルさん?」

「受験料は詠が払ってくれてる。落ちたら返せってよ」

「ちなみにいくら?」

「350ポンド」

「5万円ぐらい?」

「ぜってぇ受かる。そろそろ菫に目にもの見せてやらんと」

「菫ちゃん中国も持ってるから数では負けてるけどね」

「灯里。それをいうな」



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