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#ex-01 I have been hated to sister.



関西国際空港。

たくさんの人が行き交うその場所で、慣れないためかどこか緊張した男女が一組。

すでに旅客機に乗るための手続きは済ませており、ポケットの中には封印された端末が入っている。


「灯里、そういや、オレ飛行機とか乗るの久しぶりなんだけど」

「あ、うん、私も。すごい緊張する」


大学を卒業して3年と割と速いペースで1級ライセンスを取得した2人。何も知らない人たちからはかなり高い評価をもらったが、2人の周囲を知る人間からは、それと比較されてしまいがちだった。


「あーあ、せっかく1級取ったのに勉強見てもらった対価に海外遠征かー……」

「いいじゃん、ロンドン!ちょっとした旅行気分で頑張ろうよ!」

「仕事だって言ってんだろ?そりゃ、お前は親御さんから結構高評価だからいいけどよ、オレは1級取っても丞と比べられたり、妹と比べられたり」

「何か文句あんの?バカ兄貴」


唐突に後ろに現れた女が全の尻を蹴った。

少しきつめの印象を与えるがかなり美人。全の4つ下の妹にして、1級魔導師の逢坂菫だ。


「あ、菫ちゃん。買い物終わったの?」

「うん。ちょっと化粧品を忘れてきたからそれだけ」

「そっかー。ちゃんと買えた?」

「いつも使ってる奴があったよ」

「おい、いきなり出てきて蹴ったことに関しての謝罪はどうした?」

「あーはいはい、ごめんごめん。いこう、灯里姉」

「あー、うん。相変わらず仲悪いねぇ……」


ロンドンまでの飛行機は何事もなくそれなりの時間をかけて到着する。

到着後は現地の上役の指揮下に入り、警備任務を行う。

なんでも、万国魔法博覧会なるものをイギリス主導で開催するらしく、ゲストも展示物もかなり値が張るモノばかりなので警備には一級の魔導師をそろえておこうというわけだ。

全たちは日本が展示する国のブースの警備とは別に、会場全体の巡回警備役として召集されている。


ヒースローに降り立った3人は、空港時点での物々しい警備に驚愕する。

それを緊張しながら潜り抜け、やっとの思いで入国した。


「うわ、あれ、うちの国の奴らじゃね?」

「あ、ほんとだ。テレビで見たことある魔導師がちらほら」

「全員東京支部所属だろ?相変わらずエリートぶってる奴らばっかりだよな」

「まあ、実際事件が起きたら役には立たないだろうけどね」

「烏丸大臣が一掃したとはいえ、東京支部は相変わらず雑魚の集まりですからね。次の世界会議で統一ライセンス案が通ったら、レベルの低い魔導師の資格は消えてなくなると思いますからあまり気にしなくていいですよ」

「?!」「あ、」「どちらさまですか?」


後ろから飛んできた厳しい言葉に全たち、と少し離れたところでたむろしていた東京の魔導師たちが振り向く。


「こんにちは、逢坂さん、灯里さん…と逢坂さん」

「あのめんどくさいでしょうし、私のことは菫で」

「あ、はい、ありがとうございます。私はIMA所属の魔導師です。このまま、ロンドン支部まで案内しますね」

「会場の控室とかではなく、ですか」

「ああ、ちゃんとした警備隊の皆さんは全員ロンドン支部の指揮下に入りますから、会場からは少し遠いですがロンドン市内のちゃんとしたホテルに部屋を用意させてもらってます」

「あ、了解」

「そっちの人たちより扱いはいいみたいだね……」

「兄貴はあっちの人たちと一緒に雑魚寝でもしてればいいんじゃない?」

「お前な」

「車待たせてるので行きますよ」


歩き出した上司?の魔導師に続いて急いで荷物を引きずっていく。

ここから一月ほどこのロンドンに滞在することになる。


「あの灯里姉、あの人と知り合い?」

「私は知ってる、というか友達なんだけど、全は会ったことなかったっけ?菫ちゃんの1つ上か同い年だと思うけど」

「私と同い年でも世界で活躍している人はいるんだね。すごいなぁ」

「ほんとに全に対する扱いと違うよね……」


車まで案内されると灯里と菫は全に荷物を押し付けて先に車へと乗りこんだ。


「やあ、こんにちは。久しぶり」

「え?丞?」


運転席には丞が座り、助手席には先ほどの女性が乗り込んだ。


「えっと、久しぶり丞兄」

「久しぶり、菫ちゃん。とりあえず、話しは支部についてからね。全、何してるんだい?早く乗ったらどうです?」

「いや、この車に5人って狭くないか?」

「僕の車じゃないんですから文句言わないでください。ただでさえ荷物は別で運んでるんでて、今忙しくて使える車もないんですから」

「兄貴、走れば?」

「いーや、乗るね。意地でも乗るね」

「ちょ、全!?」


後部座席がかなり窮屈なことになっているが、丞は笑いながら車を発進させた。


「いや、悪いね菫ちゃん。日本ぐらいしか暇な魔導師がいなかったんだけど、どれもリーアムさん――支部長のお眼鏡にかなわねくてね」

「今回はこの3人で仕事を?」

「うーん……たぶん、菫ちゃんには特別任務、二人は雑用かな?」

「「ええええ!?」」

「まあ、全と灯里は経験が足りないからねぇ。ライセンスも日本だけだし。それに比べて菫ちゃんは中国の持ってるじゃないですか」

「え?マジで」

「え?全知らなかったの?」

「逆にだけどなんで灯里は知ってるの?」

「直接本人から聞いたけど?」

「マジで?」


全が菫の方を見るが菫はわざと目を反らした。


「ぐぬぬ」

「菫さんと逢坂さん仲悪いの?」

「うん。昔からこんな感じ」

「まあ、菫ちゃんは昔から賢くて、全は阿呆ですからねぇ」

「お前、トモダチに向かってそれはひどいと思う」

「さあ、もう着きますよ」

「無視か!」


車を降り、後ろの3人が背伸びをしながら先を行く丞についていく。

エントランスは今日も大変混雑しており、受付ですら必死にキーボードを叩きながら電話を受けている。


「いや、今日もやばいね。応援は何時つくんだっけ?」

「今日です。たぶん同じぐらいの時間だったと思うんだけど」

「まあ、そのうち着きますよね――Excuse me. Please call the branch president.」


丞がそう声を掛けると、忙しそうな受付の1人が頷き、しばらくして奥からリーアムが出てくる。


「タスク、例の応援か?すぐ振り分けるから悪いけどその辺の部屋で待っててくれるか?」

「わかりました。ネルさんの方はもうついてますか?」

「ああ、さっきついたと連絡があった。もう10分もしないうちに到着するだろう。ああ、それと、いつも悪いが部屋が足りなくて―――」

「その件については問題ありません。隣の建物の2階から上買い取ってあります」

「1階の喫茶店以外はテロにあってから誰も住んでなかったと思うが」

「ええ、その時から詠の持ち物です」

「さすがといいっていいものか……すまない、後で連絡をする。それまで待機だ」

「わかりました。お仕事頑張ってください」

「お前もな」


リーアムはあわただしく奥へと引っ込む。

それを眺めていた全と灯里は、呆然としていた。


「丞、お前……そんなに英語喋れたのか?」

「……そこ?」

「正直会話の半分も理解できなかった」

「というか、ここからは英語で頼むね。いちいち日本語とか使ってられないから」


全と灯里の顔が固まる。


「え?もしかして、英語ヤバい?」

「良くはない」「やばい」

「……クビかなぁ」

「「えええ!?」」

「丞さん、ネルさんたち着いたようです」

「わかった。とりあえず、行こうか」


丞に連れられて隣の建物の二階へ。

そして、ドアを開けると映画を思わせるような雰囲気――特別高そう、というよりはアンティークなソファや机が並んでいる。

その奥では数名の女性がPCや機材を設置している。


「ネルさん」

「丞さん、それに結愛さんも。お疲れ様です」

「今日こっちにいるのは?」

「真白さんだけですね。今、寝室に荷物を置きに行ってます。あとはこちらのドロシーさん以下最強の事務チームです」

「オペレーターから法関係の処理まで全部お任せです」

「よろしくお願いします。早速なんですけど、Sumire OUSAKAの特別部隊への編入手続きをお願いします」

「了解しました」


すぐに使える状態のPCを叩き始めたドロシー。他のメンバーもすでに設置を終え、自らの仕事を始めている。


「彼女たちはうちのリーグの事務処理をほぼ専属でやってくれてるんだ。うちの(ボス)フェリシア(嫁さん)と仲良いから話も通じやすいし」

「そうなんだ」「よろしくお願いします」

「で、こっちはオペレーターのネル・クーパーさん」

「よろしくお願いします、皆様。といっても、菫さん以外は殆ど接することはないでしょうけど」

「そうなんですか」

「全、私たちが下っ端だってこと忘れないようにね」

「わーってるよ。で、そっちの子は?」


全が丞の隣の結愛を差して言う。


「あれ、全に紹介したことなかったっけ?」

「えっと、碓氷結愛です」

「……妹?」

「違う、僕の奥さん」

「え?は?おま?」

「あれ?いつの間に結婚したの?」

「つい先日。エクアドルから帰ってきたらそろそろ籍入れるのか?って詠に聞かれたんで、そのままいい感じのレストラン紹介してもらって指輪買ってプロポーズしました」

「すごい行動力」

「流石丞兄」

「ちなみに式は年明けてからハワイかそのあたりでします」

「へぇ、いいなぁ」


「あれ?お二人とももう到着されてたんですね」


ふいに声がかかる。

見上げると階段を下りてくる真白の姿があった。


「お久しぶりです、逢坂さん、灯里さん。妹さんは初めまして、私はIMA第10連合“銀の鍵”所属の匂坂真白です」

「え、あ、はい、よろしくお願いします」


真白と緊張しながら握手する菫。


「しばらくの間よろしくお願いしますね?」

「はい」

「真白ちゃん、オレたちは?」

「逢坂さんたちはしばらく万博内の警備だけですね。頑張ってください」

「あの、私は何の仕事を?」

「菫さんは私や丞君と一緒にテロ対策みたいな仕事ですね。私たちのほかにキャロル・バイロンさんが入ります」

「わ、わかりました。ちょっと、緊張しますが頑張ります」

「菫さんの荷物は4階の寝室409においてますから、こっちにいる間そのままその部屋を使ってください」

「オレたちの荷物は?」

「ロンドン支部が確保してるホテルの方に送ってあるよ」

「ええー、なんかここかっこいいから私もこっちがいいなぁ」

「残念だけど、君たちは権限不足でこの部屋以外は入れないから無理ですね」

「マジかよ。友達特典とかは?」

「ははは、面白いこと言うね、全。通名取ってから出直してきなよ」

「畜生」

「菫ちゃん、通名あったっけ?」

「ないけど……」

「まあ、有無じゃなくて実力が問題なんだよ。来週のイギリスのライセンス試験もエントリーしてるしね」

「くそー……まあ、いいや。菫と張り合っても今更どうにもならねーし」

「やけにあきらめ良いね」

「じゃあ、オレはオレの仕事をしてくるか」

「あ、私も。それでどうしたらいいの?」

「もうすぐ担当者来ると思うからまあ、ここでお茶でも飲んでてよ。結愛、真白さん、菫さんをよろしく」

「わかった」「わかりました」



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