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すべてを背負って生きていく

ジークフリードは天幕から出ると、すぐに剣を抜いて辺りを見回した。周囲の兵たちは、ジークフリードの指示通りに動き、着実に敵の数を減らしつつあり、奇襲の混乱による戦線の崩壊は免れたようだった。

その時、敵の1人がこちらに向かって走ってきた。


「殿下っ!!」


周囲の兵が慌てて叫ぶ。しかし、ジークフリードは、敵を一刀で切り捨てた。


「勇敢な兵たちよ!ここが最後の正念場だ!恐れるな!我らの手で、この戦いとこの国の腐敗に終止符をうつのだ!俺に続けっ!!」


ジークフリードの檄によって、兵たちの士気があがる。形成は逆転し、今や完全にジークフリードたちが優位にたっていた。


「ジークフリードォォッッ!!」


その時、煌びやかな鎧に身を包んだ男が、背後からジークフリード目がけて突進してきた。別の敵と斬り結んでいたジークフリードは、間一髪で相手を切り捨て、背後からの突進をかわした。


「ようやく出てきたな、ベルクヴァイン!!」


ジークフリードは目の前の男ーベルクヴァイン侯爵に向き直った。


「小僧がっ!なぜいつも私の邪魔をする!」


そう言うと、ベルクヴァイン侯爵はジークフリード目がけて剣を振り下ろす。


「ベルクヴァイン!お前の時代は終わった。いや、俺がお前を倒し、今この場で終わらせる!民の幸せと安寧を取り戻す!」


ジークフリードは、ベルクヴァイン侯爵の剣を弾き返す。侯爵の兵は皆倒され、周囲では味方の兵たちが、2人の一騎打ちを見守っている。


「貴様はいつもそうだ!正義のためだの民のためだのと綺麗事をならべる。だが貴様には何もできん。5年前を忘れたのか?貴様があの小娘の両親を殺したのだ!」


ベルクヴァイン侯爵の剣がジークフリードの肩をかすめる。


「っ!」


ジークフリードは体勢を崩しかけるが、なんとか堪え、ベルクヴァイン侯爵の胸に向かって剣を突き出す。しかし、侯爵はその剣を弾き返す。


「忘れてなどいない。お前の言う通り、ハインミュラー公爵夫妻を死に追いやったのは俺だ。俺の幼稚さが、ディアナから両親を奪ったんだ。」


2人は息をつきながら、互いに向かい合う。


「わかっているではないか。貴様は5年前、ハインミュラーのためによかれと思って行動した。その結果がどうだ。守りたかった者たちは死に、守ってやった小娘からは、親の仇として憎まれる。貴様の言う正義の果てがこれなのだ。貴様は私に敵わなかった。所詮は力こそが全てなのだよ。あの小娘とて、今も貴様の側にいるのは、貴様が王族で、特権を持つからだ。その力を利用しようとしているだけだ。もっとも、本当に親の仇である貴様を愛しているというのならば、それこそ間抜けだがな!」


その言葉を聞いた瞬間、ジークフリードはベルクヴァイン侯爵に向かって剣を突き出した。侯爵は咄嗟に身体を捻ったが避けきれず、その腕から鮮血がはしった。


「俺のことは何と罵しろうが構わない。だがな、ディアナを侮辱することだけは許さない!」


そう叫ぶと、ジークフリードは立て続けに攻撃を繰り出す。ベルクヴァイン侯爵は、何とか剣でうけているものの、豪華で重い鎧を身につけていることもあり、だんだんと動きが鈍くなってきている。


「侯爵、お前の言う通り、人はいつも正しい道を選べるわけではない。だが、ディアナは言ってくれた。俺がつくる国を見たいと。そして俺は、彼女に誓ったんだ。ハインミュラー公爵が守ろうとした人々を守ると。そして、民が幸せに暮らせる国をつくると。」


ジークフリードの攻撃は続く。


「だから俺は、この先もずっと正義も愛も信じ続ける。甘いのかもしれない。裏切られることもあるかもしれない。それでも俺は、民の犠牲の上に成り立つ国家など望まない!」


そう言ったジークフリードの剣が、ベルクヴァイン侯爵の剣を弾き飛ばし、そのまま侯爵の身体を貫いた。


「かはっ…」


ベルクヴァイン侯爵がゆっくりと倒れる。


「こ…ぞう…が…いつか…貴様も…知ることに…なる…私の…言うことが…正しかったと…貴様には…5年前のことを…あの小娘のことを…すべて…背負う覚悟が…ある…のか?」


地面に倒れたベルクヴァイン侯爵は、途切れ途切れにそう問うた。


「ベルクヴァイン侯爵、俺はお前のようにはならない。自分の誤ちも罪も、ディアナの悲しみも辛さも、すべてを背負って生きていく。皆が幸せに暮らせる国をつくってみせる。」


ジークフリードは、その夕焼けの瞳に、断固たる決意を宿して、そう答えた。


「ふっ…小僧…が…」


ベルクヴァイン侯爵は、その顔にうっすらと笑みを浮かべて、その瞳を閉じた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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