表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

少年たちの決意と遠い日の幸せ

「ハインミュラー公爵に横領の疑い?」


王太子であるジークフリードは、アルフォンスからの報告を受けていた。


「はい。ベルクヴァイン侯爵が陛下に進言したそうです。侯爵は、国家の財産を不正に自らのものとした罪は重いとして、厳罰に処すそうです。すでに陛下に、この件に関して一任されているという噂もございます。」


「バカな!公爵が罪を犯したという証拠がどこにあるのだ!」


「陛下は、ベルクヴァイン侯爵の言いなりですから。」


アルフォンスの言葉に、ジークフリードは唇を噛んだ。まだ自分には、侯爵を止めるだけの力がない。それは充分に理解していた。しかし、何もできない自分が、どうしようもなく悔しかった。


「アルフォンス、ハインミュラー公爵のところに行くぞ。」


「はっ?」


「俺から陛下に進言しても無視されるだろう。残念ながら、ベルクヴァイン侯爵がハインミュラー公爵を処断するのは止められない。しかも、侯爵のことだ。これを機に、ハインミュラー公爵家に攻め入って、公爵を殺すつもりだろう。だが、公爵はこの国に必要な方だ。だから、秘密裏に公爵に会って、逃げるように促す。俺が成人してベルクヴァイン侯爵を処断したら、戻ってきてもらえるように。」


そう言ったジークフリードを見て、アルフォンスは頷いた。


「わかりました。私もお供いたします。公爵は、今日はご息女の誕生日で出掛けると言っておいででした。人目を避けるためにも、訪ねるのは夜がいいかと。」


「よし。では今日の夜行くぞ。」


「はい。」


ハインミュラー公爵の命を何としても助けなければならない。2人の決意は固かった。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


ーーガタン。

馬車の揺れる音で、シャルロッテは目を覚ました。お母様の膝の上で、少し眠ってしまったらしい。


「あらあら、起きてしまいましたね、シャルロッテ。」


そう言って、アレクサンドラは微笑んだ。

今日はシャルロッテの誕生日。ハインミュラー公爵は、「とびきりのプレゼントを用意した」と言って、シャルロッテを馬車に乗せた。しかし、しばらく馬車に揺られているうちに、シャルロッテは飽きてしまった。


「お父様、まだ?」


「もう少しだよ。」


そう答えて、シャルロッテの頭を撫でる。シャルロッテも嬉しそうに笑った。


「さあ、着いたよ。」


そう言うと、公爵はシャルロッテを抱きあげて馬車から降りた。


「わぁ…!」


馬車から降りたシャルロッテの目の前に広がったのは、辺り一面に広がる青紫色の花。


「お父様とお母様から、シャルロッテに誕生日のプレゼントだ。」


この辺り一帯は、公爵家の領地であり、そこに公爵夫妻が花を植えたのだ。


「気にいったかい?」


そう尋ねる公爵に、シャルロッテは満面の笑顔で頷いた。


「すごく。ありがとう、お父様、お母様。」


「この花には素敵な花言葉があるのだけれど…シャルロッテにはまだ早いかしら。」


そう言ったアレクサンドラに、シャルロッテは口を尖らせる。


「ええ〜。教えてください、お母様。」


「シャルロッテがもう少し大人になったらね。」


そう言ってみんなで笑う。シャルロッテは、いつか教えてもらえると信じていた。その日がやってくることは、永遠にないとも知らずに。

お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ