始まりの日
初投稿になります。更新は不定期になると思いますが、完結させられるように頑張ります。よろしくお願いします。
たとえば
今食べているものを明日も食べられるとか
今着ている服を明日も着れるとか
今寝ているベッドで明日も寝られるとか
今となりにいる人が明日もとなりで笑ってくれるとか
そんなこといったい誰が保証してくれるのだろう。
この世界には、永遠なんてありはしない。
ーーあるのは、ただ偽りと孤独のみ 。
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夜の闇の中で、夕焼けのような赤い瞳と晴れ渡った空のような青い瞳がぶつかる。
「おとうさまとおかあさまはどこ?」
青空の瞳を持つ少女は、夕焼けの瞳を持つ少年に尋ねた。
辺りには何人もの人が倒れている。
所々に青紫色の花が咲くその場所は、かつては美しい花畑だったのだろうが、今は踏み散らかされて見る影もない。
「君のお父様とお母様は…」
夕焼けの瞳を持つ少年は言い淀んだ。
焦げくさいにおいが鼻をつく。ここからは見えないが、それが少し離れた場所にある大きな屋敷が燃えているにおいだということを、少年はよく知っていた。
「…お父様とお母様とは、もう会えないんだ。」
「どうして?」
少女は無邪気に聞き返した。少年の瞳が苦しそうに揺れる。
「…君のお父様とお母様は、亡くなったから。」
「え…」
少女の瞳が困惑に揺れる。そして、その言葉を理解した少女の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。
大声をあげることもなく、ただ涙だけがとめどなく零れていく。本当に悲しい時、人はただ涙を流すことしかできないのだということを、少年はこの時初めて理解した。
「すまない。」
絞り出すような少年の声が響いた瞬間、張り詰めていた糸が切れたように、少女は声をあげて泣き出した。
「なんでっ…なんでっ…!かえして!おとうさまとおかあさまをかえして!」
どれくらいの時間が経っただろうか。
しばらくの間狂ったように叫び続けていた少女は、やがて突然気を失った。
「すまない。」
倒れた少女を抱えながら、少年はつぶやく。
「俺が、殺したんだ。」
お読みいただき、ありがとうございます。