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ダブル  作者: ふゆう
3/3

静かにすすむ

 落下感。

 夢だとはわかっている。

 私はずっと落ちていき真上には遠ざかっていく光があって、光は点になってどんどん小さくなっていく。

 落ちていく。

 深く深く落ちていく。

 隣をふと、通り過ぎる姿がある。

 私は落ちる。

 入れ違いで浮上していく姿は、私。


 変な夢を見た。

 パジャマはじっとり汗で湿って気持ち悪い。

 頭を過るのは、昨日の神田くんとの出会い。

 彼は感情のない目で、私の後ろを見ていたような気がする。

 本当は、本当に誰かいたんじゃないか。

 ──それはない。

 彼とすれ違った後振り返っても誰もいなかったじゃないか。

 役目を終える前に起きてしまった私を責めるように目覚し時計が鳴り出す。やつあたりに気味に叩いて止めて、湿った服を脱ぎすてる。

 いくら周りが不気味そうに言っても、過ぎ去っていく彼の姿はどこから見ても普通の人間で、なんであのときそんな気持ちになったのかもわからない。

 登校の途中で分かったことがある。

 神田くんは私の家よりずっと手前にあるみたいだ。

 家を出て暫く歩くと、ごくごく普通の家から出てくる彼の姿があった。

 歩く速度は決して早いものじゃなく、だから私が追い抜く形になるわけだけど、なんとなく最初は歩く速度を弱めて一定の距離を取って歩いた。

 だいぶ朝の気分も落ち着いてきて、自分がしていることも馬鹿馬鹿しくなってきた頃、先を歩く水内さんたちの姿を見つけて結局小走りに追い抜く。

 時間は穏やかに進んでいく。

 考えることはクラスのことだけじゃないわけで。

 部活をどうするかとか、学校の中がどうなっているかとか、さっぱりわからない先輩との上下関係だったり。

 飛び入りとしては難しいところだ。

 部活は諦める。もう二年の二学期だし、今からはじめても引退も考えれば実質一年くらい。前の学校でも帰宅部だったし、今回もそれを通すことにする。

 そうなると学校での過ごし方は勉強以外は、仲のいい友達を作ってつるむくらいなのだけど、打ち解けつつはあるもののまだ私にはハードルが高い。

 放課後、今日は水内さんが用事あるということで先に帰ってしまい、そうなると彼女を中心としていたグループは仲のいい数人で固まる。

 まだそこに素知らぬ顔で入り込むには心の準備が足りてない。

 挨拶もそこそこに教室を出て学校内を練り歩くことにした。

「おー鳩羽―どうした? 一人かー?」

 一人ぶらぶら歩いていると気を使っているのか担任が声をかけてくる。

「まぁ学校内探検ですかねぇ」

「そうかぁ。ならついでに部活でも見学していったらどうだ? まだ決めてないんだろ?」

「あー。必須じゃなかったですよね? ちょっとパスで。帰宅部にします。時期も時期ですし」

 そうだなぁ。と頭をかいて難しい顔をする。

 知り合いを増やすには一つのコミュニティに放り込むのが一番だし、そうすることでクラスからあぶれものが出ないようになるんじゃないかって思いもあるのかもしれない。

 だけど二年にもなると進路の話もしなきゃいけなくなるだろうし、強く部活に入れと言えないのも一つあるんじゃないだろうか。

「あーその先生、ちょっときくんですけど」

「うん? なんだ?」


「神田くんのことなんですけど」


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