〈序〉
≪たすけてください≫
「………………」
≪たすけてください≫
「…………えっと」
≪たすけてください?≫
「いや、聞かれても」
―――幸薄そうな、儚げな少女との会話。
≪どうしてたすけてくれないのですか?≫
「どうしてって…」
≪どうしてたすけてくれないのですか?≫
「いや、助けないなんて言ってないって」
≪どうしてたすけて………ぬげばいいんですか?
≫
「良くねぇよ」
≪…………≫
「あのさ、だから…………っていそいそ服を脱ぎ始めるな! 違うって言ってるだろ!?」
≪ゆうじゅうふだんですね≫
「うるせぇよ」
≪ゆうじゅうふだんですね≫
「二回言うな」
≪……よっきゅうふまんですね?≫
「もう帰れよ」
≪かえれ?≫
≪どこに?≫
≪わたしは、≫
≪どこから、≫
≪きたのかも、≫
≪わすれて、≫
≪しまったのに≫
≪わたしは、≫
≪わたしは、≫
≪ワたシは≫
≪わたしは、シんでしまったのに≫
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
何時からだったか、自分には不思議な特殊能力が備わっていた。
それは小学生の頃だったか、中学生の頃だったか、はたまた今現在の高校生の頃だったかは、もう覚えていない。多分生まれつきだろう。
この特殊技能は、ある一つの欠点を除いていえば、とても素晴らしい能力だと自分は思う。
それは、死んだ人間が視えることだ。
それは、この世には在らざる世界を、視ることが出来ることだ。
これは、自分という確立された一存在を、無限にも等しい数の次元に関わらせる異能力だ。
視える、というのは、素晴らしい。
見えないものを視れるのだから。
誰のものでもない、自分に、自分だけに許された、素晴らしい特権だから。
あの世とこの世を繋げる、担い手となれる、誉れ高い素晴らしい力だから。
だけど、俺はこんな能力は要らなかった。
見えないものなんて、一生視えないままでいたかった。
欲しいか欲しくないか、二者択一で聞かれて、“それ”の本質を知らなければ、誰もが欲しいと答えるだろうが、
“それ”がどういうものなのかを知ったなら、選ばれる答えは必然、変わる。
当然、変質する。
視える能力。
視れる能力。
視てしまう、能力。
否応なく、“視通して”しまう、能力。
欠点。
一つだけの、欠点。
たった一つだけで、その他全ての素晴らしい特権を無に葬ってしまう、最大最悪の、
欠点。
それは、