2.突然の宣告
「…え?」
「待ってたよ、山崎悠汰。」
仁王立ちの女がつかつかと歩み寄ってきた。
そう。彼女こそ、我が高校の現役生徒会長である、古谷亜未さんだ。
美人で頭が良く、堂々としているのが
特徴だ。(特徴と言うのかわからないが)
その生徒会長が、いったい俺に何の用だ?
まあ、一応挨拶くらいしておくか。
「は、初めまして…、俺、いや、
僕に何のようですか??」
「ふふ…。あなた、
恋愛潔癖性なんですってね。」
えっ?!なんで知っとんねん!!
これは紫苑にしか言っていないはず…
と言う事は…
「安心してください。紫苑さんは
なにも関係ありません。」
ぐっ、心を読まれた!!
「あぁ、あはは、そうなんですか、」
「実を言うと、先日あなたが紫苑さんと
恋愛話をしているところに偶然遭遇しましてね。」
ぁあ!あの時、あの放課後、調子に乗って大声で話してるのを聞かれたのか…!
「その時にあなたが『恋愛なんて、
時間と労力の無駄だよ。そんなんして
なんの利益があるんだ??』と大声で話してるのを聞きましてね。」
「それで、結局俺に何が言いたいんですか?」
「ズバリ、あなたの恋愛潔癖性を
治して差し上げます!!」
生徒会長はバキューンと鉄砲を撃つような
ポーズをとり、そう言った。
「えっ、はぁ——————————!?」
いきなり何を言い出すかと思いきや…
なんなんだよ…
「やめてください、迷惑です。」
しかし、生徒会長は揺るがず、
「そんなこと言わないで、
ここで直しておかなくちゃあなた一生
寂しい思いをして生きていかなくちゃ
いけないことになるかもしれないじゃない。」
「でも、そんなこと生徒会長に関係無いじゃないですか。」
「あるのー!」
生徒会長は子供みたいに手をパタパタさせて
言った。
「生徒の悩みは私の悩み!!
一緒に悩んで一緒に解決してあげるのが、
生徒会長の本当の役目なんじゃないの?」
ぐ…、
この人の言っていることは一理ある。
でも…
「こ、これは個人の悩みなんで…」
「どうしてもわかってくれないみたいね。」
そういうと生徒会長は俺の肩をガシッとつかんで揺さぶった。
「あなた、本当にそんなんで良いわけ!?
私が協力してあげるって言ってるんだから
大人しく従いなさいよ!!」
「あ、ぇ、えと…」
「さ•も•な•い•と、あなたがこの間のテストの時に、職員室に忍び込んでカンニングペーパーを盗んでいたこと、校内放送でながしちゃうよ??」
わわわわっ!!!!
そ、それはーッ…て、なんでそんなことまで知ってるんだよー!?
く、くそ~~~ッ
「わ、わかりましたよッ!
乗ってやろうじゃないですか!!」
「やっとわかってくれたのね!
よかったぁ。」
こうやって言っとかないと、何言われっか
わからないからな。
「で、その方法なんだけど…」
ふむふむ、きっと良い作戦なんだろう。
「私があなたの彼女ってことになってあげる♪」
おー、それは凄くいい作戦だなぇぇえぇえええええええええええええええええ???!!?!!
なんだこの人、本当に人間かッ?!
俺はちょっとやけになって言った。
「はぁ?!何言ってるんですか!!
俺が恋愛潔癖性って知ってるくせに
彼女になる?!ふざけんなよ!!」
そう言って俺は机をおもいっきり叩いた。
「何一人でキレてるの?
偉そうに言える立場なら自分で作戦考えて私を見返してみなさいよ!」
生徒会長はいかにも自分が上かの様に言った。
学年は一緒なのに~ッ
「くっ…」
俺は勢いよくドアをバンッと開け、
生徒会室を飛び出した。
「なんなんだよ、あいつ。
そもそも俺から頼んだわけじゃねーし。」
しばらく進んで、ふと窓の外を見たら夕方になっていた。
そーいえば、もう日が長くなったなあ。
今何時くらいなんだろう。
………
「あ…れ?」
…最悪だ。
生徒会室にケータイ落としてきちまったみたいだ。
「またあそこに行かなきゃいけないのか。」
俺はずるずると重い足を引きずりながら、
再び生徒会室へ向かった。
俺が生徒会室の前に行くと、
中から声が聞こえた。
一人はあの生徒会長だろう。
もう一人は男の様な声がした。
この声は…、学年一のイケメンの松原か。
何を話しているんだろう…?
そっとのぞいてみた。
「ずっと亜未の事好きだったんだ。
付き合ってくれないか。」
うおー!生告だー!…なんて♪
で、OKするのか??
されれば俺も嬉しいぜ!はは。
すると、
「ごめんなさい。」
ッッッッッッッッッッえッッッッッッッッッッッ!!??
ご、ごめんなさい?!
松原をフるだとー!?
ちょいちょい、だめだろ!
てか、なんでた??
「私にも使命ができました。
今はそれをやり遂げる為にその人だけに
尽くしていきたいんです。
だから…、ごめんね、松原くん。」
……、
まさか、さっき言ったことって…
本当だったのか…
生徒会長…
「…亜未の気持ちはわかったよ。
でも俺諦めないから。」
そういうと、松原がこっちへ向かって来た。
やべっ
急いで階段脇のスペースに隠れた。
瞬間、松原が生徒会室から出て行った。
…。
俺、なんか悪いこと言ったな…。
そっか、生徒会長…。
俺は生徒会室へ行った。
中を覗くと生徒会長が座っていた。
夕陽に照らされすごく美しくみえた。
「生徒会長。」
生徒会長がびっくりしたようにこっちを見た。
「どうしたんですか、」
「あ、あのさあ、や、やっぱり俺、
恋愛潔癖性克服するよ。だから…
俺に…協力してください。」
生徒会長は顔を輝かせ、
「はい。私も精一杯頑張ります!
だから、一緒に頑張りましょう!」
う…
やっぱり女の笑顔は苦手だ。
こんなスタートで大丈夫か、俺~?
すると、生徒会長は察したようで、
「ふふ、ではバラされないように
頑張ってくださいね?悠汰くん?」
こうして、俺と生徒会長の
恋愛潔癖性克服大作戦が始まった。