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あなざーわーるど  作者: トム助
存在の証明
34/38

真実

『まだかなぁ。私こんなに歩き続けたの初めてだから…足パンパンだよ~』


アーリアは少しのぼりになっている光炎の道の真ん中に腰を下ろし、両足のふくらはぎを揉み解している。確かに、考えてみればいくら魔道士とはいえ、炎の国からの長距離移動をあまりした事のないアーリアにとっては俺の歩くペースは早すぎただろうか。


『アーリア、ここ通った時の事覚えてないの?』


『そんなの覚えてるわけないでしょ!ここ通ったのは私がまだこんなに小さかった頃なんだから』


アーリアはこんなにと言いながら立っている俺の膝ぐらいの所に手を伸ばし、必死に伝えようとしている。口調からはいら立ちと疲れが感じられる。「悪い、悪い」と謝りながら歩みを止めた。


『…とりあえず』


アーリアはそう言いながら重たそうに腰を上げる。


『この上り坂上ったら休憩。いい?』


『どうしてもって言うんなら…』


この提案にわざと頭をかいて悩んで見せる。


『絶対!!!』


アーリアはぷいと坂のてっぺんの方に向き直ると辛そうに足を動かし始めた。フィオーレを出発してから数日歩き続けている。つまりもうそろそろ光の国へ着いてもおかしくはないのだが…。そんな事を考えながらアーリアの後を追っていると、坂を登りきったアーリアが「あっ」と声を上げた。


『スバル、早く、早く』


まるで買って欲しいものを見つけてねだろうとしている子供のようだった。そして、少し降りてきたアーリアに手を引かれて俺もそこへ辿り着いた。坂の上につくと、そこからは下り坂になっていて、その終着点に俺達の目的地があった。坂を下ったところに白い門がありそれは壁として光の国の国境と思われる所をなぞるようにそびえている。この坂の高さからなら、白い壁の向こう側を見る事は出来るが、その壁がとても高い事はここからでもわかる。国の建物、住宅などは全て白で統一されており、規則正しく並んでいる。国の中心部と思われる場所にはとてつもなく巨大な白いドームが立っている。これが、この世界最大の文化、魔法を持つ国…。


『光の国への入口はあの光の門以外にないの』


驚くほど広い国の出入り口がこの門のみとは…。その門は固く閉ざされている。


『光の国…私の故郷』


そう、アーリアの故郷、光の国。そして、光の竜がいる、光の国。俺達の目的地だ。ついにここへ辿り着いた。きっとここで真実を知れるような、そんな気がした。そして、そんな光の国を見て、胸の鼓動が速くなっているのがわかる。


『休憩…する?』


念のためアーリアに確認してみた。しかし、帰ってきた答えは俺の望んでいたものと同じだった。


『真実を目の前にして、ここで立ち止まるわけにはいかないわ』


そして、俺達はこの坂を下り始めた。そんなに長くはなかった。勿論くだりだったからというのもあるだろうが、なにせずっと行きたかった光の国を目の前にして、歩みを緩めるわけがない。門には門番と思われる者が二人。鎖国体制を取っているにしては随分と国の入口が手薄だなと感じた。これと言って門番が強そうなわけではない。白を基調とした鎧を纏っているごくごく普通の男二人であった。


『入国許可証を』


俺達に気付いた門番の一人が言った。アーリアの渡した入国許可所にハンコを押した。その手つきは非常に馴れているものだった。


『この者たちの入国を許可する!』


そして門番二人は門の扉を開くと進むように促した。門…というよりトンネルであった。坂の上から見た時もずっと壁は厚みのあるものだった。門の中は日が差し込んでいるわけでもなく、電灯が点いているわけでもなかったが本当のトンネルのように暖色系の光に包まれている。


『行こ』


そして、俺達は光の門へ足を踏み入れた。二人分の足音は不思議なトンネル内でこだまして聞こえる。トンネルの中間地点まで行ったところあたりで、体に突き刺すような微量な痛みを感じ、それと同時に体中から淡い光のシャボン玉のようなものが発生し始めた。自分の体を見たあと、アーリアを見るとアーリアも同じ状況下にあり、それに驚いている様子だった。


『な、なんだこれ!』


『私も、わかんないわよ!!!あわわ…早く出ちゃいましょ!』


アーリアは駆け出す。俺もそれに続こうと走り出したが、走り始めた瞬間物凄い早さで、息が上がり、立つことも難しくなり、トンネルの壁にもたれかかる。先ほどはさほど感じられなかった全身を突き刺すような痛みは、激痛となり、光も激しく発生している。


俺の異変に気付いたアーリアはこちら側に戻って来てくれた。アーリアの方には何の影響もないようだ。


『だ、大丈夫!?』


『く、苦しい』


一回一回息を吸うのも苦しくなり、だんだんと意識が遠のき始める。今にも痛みと苦しさで意識が飛びそうだ。


『頑張ってスバル!!!やっとここまで来たじゃない!!!こんなとこで、こんなとこで諦めないで!!!…今助けるから…出てきて、ラミエル!!!』


金色の魔法陣から出現したラミエルは辺りを見回すなり驚きを隠せない様子だった。


『ここは光のトンネルではないですか…』


『いいから!スバルを助けて!!!』


『は、はい!!!』


ラミエルは俺を抱きかかえ、純白の翼をはためかせながら、アーリアと共に出口へと向かう。


『はあ、はあ、はあ…』


ここまで歩いてきたアーリアの疲労がラミエルにも、かなり影響しているのか、ラミエルもかなりばててしまっている。そして、出口。トンネルから出た瞬間に一気に痛みと苦しさは引き楽になった。辛いことには変わりないのだが。しかし、一難去ってまた一難。出口に待ち構えていた光景に、凍りついた。先ほどの門番と同じ格好をした兵士が、ざっと十人ほど、長槍の先をこちらに突きつけている。


『手を上げろ!…そこの精霊は散れ!』


アーリアはなすすべもなく手をゆっくりと上げ、ラミエルは悔しそうに消えてしまった。俺はまだ少し息苦しく、立つことは難しく、息を荒らげて、地面に寝ている事以外出来なかった。そして、俺とアーリアにあの魔力封じの白い手錠がされる。


『セントピアに連行する!』


その声を聞いた後、口元に布をあてられたかと思うと眠気が突然襲ってきてその場に眠ってしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


腕に堅く、冷たいものを感じ目を覚ます。私は一室の大理石の壁に寄り掛かって眠っていたみたいだ。部屋の壁は白い大理石でできていて、中央には大きな長いテーブルがあって、その脇には豪華なイスが何個も置いてある。一番奥には茶色のこれまた豪華そうな机がありそこに、老人が座ってこちらを見ている。


『…目を覚ましたか』


その老人はぼそっと呟くようにして言った。髪の少ない頭に、モジャモジャの髭が目立つ。周りを見渡してみるが、部屋には私と老人とその横にいる若い男だけだった。スバルはこの部屋にはいない様子だった。男はメガネをかけていて、紫を基調とした高貴な服装に身を包んでいる。いつの間にか手錠は外されていた。

 

『…君は、アーリア・ファーネイビスで間違いないね』


見た事のない老人に名前をぴたりと言い当てられ、驚きを隠せなかった。


『その様子だと、間違いないようだね。…私は光の国の長、ルミエールだ』


その名前を聞き、思い出す。ルミエール。確か、私たちが光の国から出る時に、炎の国側といろいろな手続きを代表してやってくれた人…。その頃は私自身がまだ小さかったからよくわからないけど…きっとその時から国長だったのかしら…。


『一応尋ねては見るが…君の知りたい事は…光の国へ来た目的は何かね?』


『…私は、お父さんが本当に黒魔道士だったか知りたいんです…』


『…やはり、いつかこの時が来るとは私も思っていた』


ルミエールは俯きながらそう言った。何かを知っている様子だ。でも、その前に確認したい事がある。


『スバルは…スバルはどこ?』


『君と一緒にいた青年か。あいつは黒魔道士という事で牢にいる』


ルミエールは顔を上げると厳しい顔つきになってこう言った。


『スバルは黒魔道士なんかじゃないわ!!!すぐに出して!!!』


思わず声が大きくなる。スバルはトンネルをくぐった後、何らかの原因でとても苦しそうだった。だから、いくら強いスバルでも心配になる。


『…今のところ危害は加えていない。閉じ込めているだけだ。今はキミに大事な話があるんだ。お父さんの件で…。だから、その間だけ、監禁することにした』


そう言うとルミエールは若い男に耳打ちをすると、若い男はすぐにこの部屋から出て行き、室内はルミエールと私だけになった。


『結論から言うとだな。君のお父さん、ジョセフは…紛れもなく光の国の人間だ』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


目を覚ますとそこは、暗がりの牢屋だった。俺は今、薄気味悪い牢屋の中にいる。手錠はされたままで、両手は塞がれている。それどころか、足にまで錠がかけられてあり、身動きが取れない。なんで俺が、牢屋にぶち込まれなきゃならないんだ。必死にもがくが、少しだけ体が動くだけで、ジャラジャラと虚しく音だけ響き渡る。


しばらくして、コツコツと床を歩く音が聞こえてきた。その音が俺の牢の近くで止まったと思うと、俺より少し年上と思われるメガネをかけた男が立っていた。


『僕は光の国の国長補佐のクロイツ』


男は名乗る。こんなに若いヤツが国長補佐ってことは相当な腕前だと思うが今はそんなことどうだっていい。


『なんで、俺が牢屋に入ってなきゃいかねえんだよ!!!アーリアはどこだ!!!』


『アーリアさんなら無事だよ。今は国長のルミエール様と話をしている』


『じゃあ、なんで俺が…』


そこまで俺が言うとクロイツはそれを遮るように言った。


『君が捕まったのはただ一つ、君が黒魔道士の恐れがあるからだ』


また、黒魔道士…。確かに良い事もあったが、この黒魔法のおかげで何度他人に非難されただろうか。自分の黒魔法を呪う。


『君はあのトンネル内で光の裁きを受け浄化されかけたんだ。あのトンネルは黒魔道士にのみ、ダメージを与える超特殊魔法が、昔からかけられている。何百年の前から光と闇は忌み嫌いあっているからな。対黒魔法対策だ。しかし、君はそのトンネルを潜り抜けた。…その事から我々は君自身が完全なる黒魔道士だとは思っていないが念のためここで君を監禁しているという事だ。わかったか?』


無理やり納得させられてしまう。


『君は炎の国の大会に出てまでしてここに来たかったみたいだが…そうまでしてここに着たかった理由はなんだ?』


『…俺は光の竜に会いに来た』


『…強さを得るためか。それならもう竜魔道士はいる』


『違う。俺は氷の竜魔道士だ』


『!?』


俺の竜魔道士宣言には冷静なクロイツも多少驚いている様子だ。


『竜に会う目的は?』


『…俺自身の存在の証明のため。真実を知りたいんだ』


クロイツはそれを聞くと俺のいる牢とは別の方向を見て少し笑ったように見えた。


『…君のお仲間も全く同じ事を言っていた。真実を知りたいと…』


『アーリアは本当に無事なんだろうな』


『勿論だ。じきに君の安全も確保される。少し待っていろ。』


そう言ってクロイツはその場から立ち去ろうとしたが、何かを思い出したかのように足を止めこちらに向き直った。


『最後に、氷竜の使いよ。君の名は?』


『スバルだ』


『…覚えておこう』


クロイツは再びコツコツと押しを鳴らしながら、立ち去ってしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ルミエールから衝撃の事実が述べられた。私は、どこかでこの事をわかっていたような気がしていた。


『詳しく教えて下さい』


『…この話は時を遡ること四十年ほど前、ジョセフは十四ほどだった。その頃に、光の国の若い魔道士を何人か闇の国へスパイとして送り込む計画を私が組んでいた。勿論、すぐれている魔道士五人がそれに行ったのだが、その中にジョセフもいた。その子たちは今後の光の国のために、幼いころから特別に調教しているいわばエーリト五人だった。ジョセフを含む五人は闇の国へ行ったのだが…帰ってきたのは三人だけで、その三人も全員魔力を抜き取られていたのだ。この計画はどこにも漏れないよう、極秘で行ったため、その三人はしばらく休んだ後は普段通りに生活を送れたのだ。…だが』


ルミエールはそこで一呼吸おくと、険しい表情のまま続けた。


『事件は起きた。地元の元役員が何故かジョセフの事について影で調べ上げ、スパイだった事を確認すると、それを悪く広めたのだ。「ジョセフは闇の国の人間だ」と。ちょうど君が生まれた年だった。それを知った私は全ての責任は私にあると感じ、炎の国と交渉を行い、なんとかそちらに君たち家族を送り届ける事が出来た。しかし、その数年後君の両親が黒魔道士によって殺されたと聞いたのだ』


そこまで話し終えると、ルミエールはまたも俯いてしまった。


『すまん。このような事態になったのは全て私の責任。私を、私を許してくれ!!!』


ルミエールはイスから移動すると、床に膝をついて土下座をした。その時、私の意思を無視しても出てきたのか、金色の魔法陣からラミエルが出てきた。


『…ふざけるな!!!…あなたが、あなたが私の主であったマリア様とジョセフ様を追いやった!!!そんな事であなたの罪は許されないっ!!!』


いつになく興奮しながら、ラミエルは叫んでいる。その手には剣。今にも斬りかかりそうだ。


『やめてっ!!!…ルミエールが全部悪いわけじゃないわ』


『しかしながら、責任があることには変わりないはずでは』


『今ルミエールを責めても何も変わらない。それはあなたもわかってるでしょ!!!…ルミエールは辛い中真実を話してくれたじゃない。それに』


ラミエルとルミエールは驚きながら、なにも出来ずに私の話を聞いている。


『それに…お父さんが黒魔道士じゃないってわかっただけで…十分じゃない…』


その言葉を言った瞬間、お父さんと過ごしたあまりにも短すぎる時間が走馬灯のように見える。どの光景もお父さんは笑っていた。お父さんは死ぬギリギリまで笑っていた。それを思い出すと、今までずっと我慢していた涙がこぼれ落ちてしまった。

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