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あなざーわーるど  作者: トム助
存在の証明
33/38

行ってきます

『遅くなって本当にごめんなさい』


俺とアーリアは深々と頭を下げた。あの後ダッシュで今いる国長の部屋に駆け込んだものの、遅れたことには何ら変わりなかったため、必死に謝罪している。


『まぁ、まぁ。そんなに気にすることはない。私はそんなに気の短い人間ではない。うむ』


ゼランはそう言うと俺達二人に腰をおろせと促してくれた。そして、俺達が座るとほぼ同時に後ろの扉が叩かれた。


『入れ』


ゼランが言うと扉は開かれ、キリトが部屋に入ってきた。まだケガは治っておらず、右腕は吊っているものの、顔は元気そうだ。こちらを見るなり「よ」と空いている方の手を上げて軽く挨拶してくる。


『大丈夫なのか?』


『ああ、なんとかな』


キリトは俺の質問に返答しながら父親が座っているソファの横で立ち止まり、こちら側へ向き直った。


『…まず、スバル君。君には本当に感謝している。私の命を救ってくれて、本当にありがとう』


ゼランは先ほど俺達が頭を下げた時以上に深々と頭を下げてくれた。


『いえいえ。それより俺のせいで騒ぎが大きくなってしまって…ごめんなさい』


俺もゼランに負けじと、頭を下げた。


『…いや、あれは仕方のない事だ。うむ』


『俺からも礼を言うよ。父さんを助けてくれて本当にありがとう』


自分は悪い事をしたはずなのにこんなにも誰かから「ありがとう」と言われるとなんだか罪悪感に襲われる。


『うむ、本題なのだが…君たちは光の国へ行きたいんだよな?』


『はいっ!』


アーリアが顔を輝かせ、元気よく返事をする。


『うむ、その件についてなのだが、本来は大会の優勝勝者のみ光の国へ行けるという事だったのだが大会は中止になり優勝者はいない。…そこで、私が君たち二人の光の国入国許可をおろすことを検討したいのだが…どうかな?』


思いもよらない展開である。この大会が始まる時は狭き門だなと思ったがやはり、「捨てる神あれば拾う神ある」であった。


『お、お願いします!』


『うむ、わかった。では申請を今日中に行っておくから…アーリア、君の家に許可がおり次第手紙を送っておく』


『ありがとうございます!!!』


俺とアーリアはその場に立ちあがり、深々と礼をした。


『まあ、私の許可が下りても、光の国側がNOと言えばダメなんだが…』


『…え』


その言葉に俺とアーリアは凍りつく。光の国が見えたり見えなかったり一体何なんだ!


『ははは。冗談だよ。そんな事は今まで一度もない。うむ』


『やめて下さいよ。ビックリするじゃないですか』


アーリアは胸をなでおろす。そして、キリトと三人で国長の部屋を出た。


『今日はゆっくりするといいさ。…二人で買い物でも行けばいいんじゃねぇか』


キリトはいかにも俺とアーリアを二人きりにしようと面白がっている。まぁ、悪くはないけど。


『じゃあ、そうしよっか』


え!?


「あ、う、うん」のようなあいまいな返事をするとアーリアは「早く」と言って、俺の手を引っ張り始めた。


『じゃあな、キリト!』


引っ張られながらも後ろのキリトに向かって手を振る。キリトはしっかりと俺達に向かって大きく手を振り返してくれた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『じゃーん』


アーリアは目の前の家を自慢げに紹介してくれた。家と言っても彼女の家ではなく、木製の扉をくぐると大きな広間があり、四つの部屋があり、そこに別々の住人が暮らしている、いわばアパートみたいなところの一室である。


『部屋の整理して、この部屋売っちゃう準備するから、ちょっと待っててね』


アーリアはそう言って部屋の中に入ってしまった。


待つこと三十分。扉が突然開かれ、「大家さーん」とアーリアは叫びながら出てきた。


『はいよ』


アーリアの部屋のむかいにあたる部屋から小太りのおばさんが出てきた。


『この子が新しいチームの子?』


大家さんは俺をじろじろと見た後、アーリアに尋ねる。


『そうです。おかしな格好だけど、ものすごく強くて頼りになるんですよ』


「おかしな格好」っておい!その後の言葉には若干照れてる俺がいるけれども、…でもやっぱり変な格好かなこれと思いながら自分の着ている服を見つめる。「和」を中心としたいい感じのものだと思っていたが、この街では…というか今の時代では浮くようだ。


『よかったわね。…あら、でもこの部屋売るのかい?』


『はい、二人で旅に出るんです』


『あらまぁ。…青春だねぇ』


大家さんは昔を思い出すかのように目を細めた。そして、アーリヤは大家さんと部屋のやり取りをした後、家を後にした。


『あのさぁ、さっきも言ったけどスバルの服正直ダサいから…浮いたお金で私とスバルの服買いにいこ』


はいはい。どーせ俺の服はダサいですよーだ。恥ずかしいから笠を深くかぶってしばらく歩いていると、目的地についた。どうやらデパートのようだ。


『んじゃ、まずスバルから』


売っている服はどれもこれも、異世界チックな物ばかりで、これこそ来たら浮きそうだなと思ったがやはり異世界。これが普通らしい。「こんなんどう?」とか「これなんか似合う」とか俺の意見はあまり反映されないまま時間は過ぎ、やっと決まったのがこの一着。


普通のロンTの上に青を基調としたブレザーにズボンは白い七分丈の動きやすいもの。靴はこちらも動きやすいサンダル。やはり、恥ずかしい。アーリアはこの恰好をまじまじと見つめた後、顔を輝かせ「こっちの方が何百倍もかっこいいよ、スバル」ときゃっきゃするのであった。


『じゃあ、次こっち』


さっきからずっとこんな感じで振り回されっぱなしである。そして、女性ものの服が置いてあるコーナーへ到着。またまた「これどうかな」とか「これとこれ、どっちがいいかな?」などの質問攻めにあった。これまた俺の意見は反映されないまま、時は刻々と過ぎて行く。俺の服選びは三十分ぐらいだったような気がするが、アーリアの服選びはざっと二時間半。たったの一コーディネートに二時間半もかかったのだった。しかも、ここは女性服のコーナーのため、男はほとんどいなく、俺は周りから白い目で見られていたのがものすごくわかった。


体力的にも精神的にもヘトヘトになったが、試着室から出てきたアーリアを見て、思わずうっとりしてしまった。青地に金色の模様が施された、袖なしのワンピース。チャックが胸の谷間が見えるくらいの位置で止まっている。ワンピースのスカートの部分はかなり短めである。髪の毛はいつもとは違い、服装にあうようにと、二つ縛りに変えている。


「どう?」とアーリアは俺に尋ねながらその場でくるりと回った。スカートがひらりと舞う。あの、ちょっと旅をして戦うとなると、エロすぎませんか?という言葉をぐっと飲み込み「スゴイ似合ってるよ」と言ってあげた。勿論お世辞ではない。物凄く可愛いのだ。


『やっぱり?じゃあ、これにしよっと』


そして、浮いたお金で二人分のお支払いをした後店を出た。


『まだ行きたいとこあるんだ。今度はそんなに時間かかんないから』


そして、アーリアは再び新たな目的地へと歩みを進める。こうして二人きりで街を歩いていると、なんだかデートしているようでドキドキしていた。そんなに歩くことなく目的地へ着いた。そこは意外にも花屋であった。


『出てきて、ラミエル!』


アーリアは唐突にラミエルを呼び出すと、こちら側に聞こえないようにこそこそと話を始めた。一体何について話しているのだろうか。


『はい、わかりました』


どうやら、話の決着がついたようだ。


『スバルはここで待ってて』


…また待つのか。そろそろ憂鬱である。本当に彼女が出来て一緒に出かけてもこんな感じなのだろうか。


待つこと十五分。アーリアとラミエルは大きな花束を二つ抱えて店から出てきた。とても良い香りがこちら側にも漂ってくる。


『よし、買い物しゅうりょー!スバル、付き合ってくれてありがと』


アーリアは持ち前の笑顔を振りまき、再び歩みを進める。


『さっき、郵便の人がわざわざ私を探してゼランさんからの手紙持ってきてくれたの。光の国入国許可だって』


ゼランからのものだと思われる手紙を俺に見せながらアーリアは嬉しそうに言った。


『光の国へはこの「光炎の道」を通れば着くから行きましょ』


そう言うと真っすぐ伸びる道を進み始める。空は赤く色づき始めていた。


『これで炎の国ともお別れだな、アーリア』


『うん。炎の国ともお別れだけど、お別れしないといけない人がいるんだ』


『え、誰?』


『今その人の所に行くから…ほらあそこ』


アーリアの指さす先にはずっと一本道のはずの光炎の道の細い別れ道。その道はよこの森に続いている。


『久しぶりですね』


ラミエルが小さくつぶやく。きっと大切な人にお別れを言うんだなという事はわかった。そして、その細い道を進んですぐに、開けたところに出た。そこには二つの墓石。「マリア・ファーネイビス」「ジョセフ・ファーネイビス」とあった。アーリアの両親の名前だった。アーリアとラミエルはその二つの墓石の前にそれぞれの花束をたむけた。俺は後ろでじっと見つめることにした。


『お父さん、お母さん。私、本当の事を確かめるためにスバルと旅に出るから。私、負けないから。頑張るからね。じゃあ…』


そこまで言った後、アーリアは全てを振り切るように涙をぬぐった。


『行ってきます!』


アーリアはこちらに振り返ると、ポケットから何かを取りだすと俺の方へ歩み寄ってきた。


『これ、お父さんとお母さんの形見。スバルにあげるよ』


アーリアの手の中にあったのは鍵をあしらった、ネックレス。金色の鍵は夕日の光に反射してキラキラと光り輝いている。


『でも、これ、形見なんだろ。じゃあ…』


『いいの。二つあるから』


アーリアは鍵のついたネックレスを見せた。微妙に鍵の形が違っている。


『心の扉を開く鍵…お父さんとお母さんが私に両方くれたから、片方スバルにあげる』


…心の扉を開く鍵か。俺はその鍵をもらい早速首にかけた。そして、それを見つめ、ぎゅっと握りしめた。


『じゃあ行こう!光の国へ』


そして、俺達の旅は始まった。

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