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あなざーわーるど  作者: トム助
存在の証明
32/38

竜魔法の秘密

お待たせいたしました。トム助、ここに帰還しました。


長らくの間執筆出来なくてスイマセン


テストという戦場へ行ってたもんでですね


まあ、読んで下さいな

気がつくとそこは見慣れた病室。窓からは月明かりが入っているものの、照明は消えていて、当たりは決して明るくはなかった。時計の針の進む音と、俺が寝ていたベットの端の方で寝てしまっているアーリアの寝息のみが静かに聞こえる。


俺は今、ベットで寝ていた…。


何が起きたかよく覚えていない。とりあえずレイスと戦っていたのは覚えているが、首を絞められてその後どうなったかはよく覚えていない。


負けたのだろうか…。


きっと俺が勝っていればその事は覚えているはずだ。覚えていないという事はやはり…。せっかくアーリアは負けずに精一杯頑張ってくれたのに俺は何もすることが出来なかった。光の国へ行く事は絶望的となってしまった。


そう思い溜息をひとつついてアーリアの方へ目をやる。アーリアはきっともう光の国へ行く手段はなくなってしまった事は知っているんだろうな。しかし、そんな事は気にもしないような幸せそうな寝顔だった。いつ見ても美人だった。いつも結んでいるセミロングの金色の髪は、今は結ばずにそのままにしている。アーリアの願いは叶えてあげられなかった。どうにかして行こうと考えを巡らせているもののわからない事が多過ぎて話にならない。


ガチャリ。


俺が悩んでいると病室のドアは唐突に開かれた。現れたのは長身の男で年は30歳ぐらいと思われる。金髪の頭に、目の色は燃えるような赤。何とも異色である。そして体中包帯だらけで黒のコートを羽織っている。


『おお、やっと起きたか、ガキ』


男は俺を見るなりそう言った。どこかで見た事があるような…ないような。どこであったかもわからなければ名前もわからない。でも少しだけ見覚えがある。


『俺はリドガー。炎の国の国長側近の役員で炎の竜魔道士だ』


!!!


驚くべき事をさらりと言う。竜魔道士なんぞそんな簡単に会えるものではないのに今この病室に二人それがいる。


リドガーはそのまま窓際まで歩き、そこで窓によりかかるような感じでこちらに向き直った。


『そこのお嬢ちゃんも起きてから話があるんだが…まぁ寝てるからな。お前さんがここ二,三日寝てる間ずっとそばにいたんだぜ。大丈夫って言ってんのにな』


俺は二,三日も寝ていてしかも、その間ずっとアーリアが側にいてくれた事にとても驚いた。そして、同時に少し頬が赤らむのがわかる。俺がレイスと戦う前のあの台詞…。


『…あのね、私…スバルの事…』


この後何を言おうとしていたのかはアーリア本人しかわからないが、かなり気になるのは事実であった。


『お、ほっぺた赤くなってんぞ、やっぱり出来てんのか?』


リドガーは面白そうににやけるとここぞと言わんばかりにいじり始めてきた。


『ちがいますよ』


とはいうものの先日の件もあったし、あった当初から物凄く美人だなあというのは自分でも感じていた。しかし、これから仲間になって共に行動を進めるにあたって、そう言う感情はあまり持たない方がいいんじゃないかと無意識のうちに感情を押さえつけてきたのかもしれない。


『でもよぉ、人を好きになるってことは旅をする事にもいい事だと俺は思うけどな』


そんな俺の気持ちを見据えたようにリドガーは言う。


『お前がこの試験に参加してから同じ感じがすると思ってずっと見てたけどよ、守りたいんだろ?』


俺はその言葉に黙って頷いた。その通りだった。俺はアーリアを全力で守ってあげたい。


『んじゃ、自分の感情ぶつけてもいいんじゃないか?』


リドガーはそう言うと窓を開け、外に目をやってしまった。自分の感情をぶつける…。その言葉を自分の頭の中で反芻させる。そして、再び病室内に沈黙が訪れた。


『…ん』


先ほどまで眠っていた金髪の美少女はおもむろに目を開けた。まだ状況を理解しきれていない様子だ。そして、俺が目を覚ましている事にやっと気がついき、目を大きく見開いた。


『スバルっ!!!』


アーリアは俺の名前を呼びながら、がしっと思い切り首に抱きついてきたのだ。あまりに唐突すぎるその行動に俺は驚きを隠せない。何とも言えない良い匂いに、アーリアの体温も伝わってくる。そして、アーリアの大きな胸が俺の体に当たっているのもわかる。自分の心臓の鼓動がアーリアにも聞こえているような気がするほどドキドキしていた。そして、アーリアは俺に抱きついたまま、泣き始めてしまった。


『どうした?』


『どうしだも、ごうしだも…』


『へ?』


アーリアは泣いてしまって話せそうな状況ではなかった。なんでこんなにも号泣しているのかよくわからない。


『お前、もしかして、あの影女と戦った後どうなったか覚えてないのか?』


外に目を向けていたリドガーがこちらに向き直って驚いたように尋ねた。アーリアは「ひゃっ!」と小さく叫ぶと顔を真っ赤にして俺から離れ、あふれる涙を必死にこらえようとしながらベットのそばの丸イスに座った。恥ずかしさからか俯き、「すいません」と小さく言った。


『ああ、お嬢ちゃん。悪かったな。言ってなくて…』


リドガーは申し訳なさそうに頭をかいた。


『どうしたって俺、負けたんじゃないんですか?』


俺のとぼけた返答を聞くとリドガーはうーんと唸り窓際に目をやった。


『何かあったの?』


『…うん。』


アーリアは泣きながら答える。物凄く悲しそうな表情をしている事が俯いている状態でもわかった。リドガーはしばらくしてこちら側に近づいてきた。


『これからお二人さんに大事な話がある』


ゴホンと咳払いを一つして、リドガーは話を続ける。


『まず、嬢ちゃんとお前はこの後一緒に旅を続けるつもりか?』


これまた重要な事を流れるように質問してくる。俺はアーリアが同意してくれればそのつもりだったがこの事についてあまり話していなかった。


『…俺はそうしたいです』


率直に自分の思いをリドガーとアーリアに伝える。アーリアは泣き止みはしたが、未だに鼻をすすって、時折目をいじっている。真っ赤に腫れた目をこちらに向けている。しかしそちらを見ていないから、表情はわからない。


『…わ、私もスバルの力になりたいです』


『うん。では、お二人さんが旅を続けるにあたって知ってもらいたいことがある。竜魔法についてだ』


竜魔法については正直言ってよく知らない。教えてもらい使えはするがクロウにそんなに詳しくは教わっていないのだ。


『スバル。お前は竜魔法についてあまりよく知らないはずだ。俺もそうだった。竜は堅苦しい事は嫌いなヤツが多いからな。考えるより実行しろってな。まぁ竜魔法についてなんだが…。』


そこまで言うと、リドガーは後ろを振り向き、立っている付近をグルグルと回りながら話を続けた。


『竜魔法は魔法の原点に近い魔法とされている。その昔竜が人に教えた最初の魔法が竜魔法だ。当時竜魔法を操れるものはほんの一握りだったから、竜魔法の負担を軽くして、誰でも使いやすい魔法にしたのが現在の魔法。そして、人間はそれらを駆使して竜狩りを始めてしまう。んじゃあなぜ竜魔法は一部の人間にしか使えなかったか。それは術者への負担が大きいからだ。強力な魔法ほど術者への負担は比例して大きくなっていく。そして、その負担に耐えきれなくなったときに術者の中にある竜の魔力に食いつくされちまうんだ』


『竜の魔力?』


『トルネオさんも言ってた…』


アーリアがぼそっと呟いた。


『そう、竜の魔力だ。竜魔道士のみに蓄積される竜魔法の根源となる魔力。それは必ず尽きる事はなく、とてつもない力があり、魔力の量も半端ではない。この点からも竜魔法を使える人は限られてくんだけど…まあ今はそれについてはいい。竜の魔力は竜のそばにいた者のみに蓄えられるもので、その魔力はまるで生きているかのように感情によって強くなったりする。それが強くなりすぎて術者が耐えきれなくなるとこの前みたいな事が起きる。お前はわからんと思うが…スバル、お前は会場で試合中に竜魔法を制御しきれなくて暴走したんだ』


『え!?』


驚くべき事実が俺につきつけられ、愕然とする。


『まあ犠牲者は出なかったし、お前は命を狙われていたゼラン様を助けたんだけどな。会場は一時パニックとなった。』


わけがわからない。俺が暴走…。


『お前が影女に拘束されてる時にその影女とおそらく闇の国の仲間の青年がゼラン様を殺害しようとしたってわけだ。それでお前が竜の魔力に飲み込まれながらもゼラン様を救い出して、その後大暴れってことだ』


そうだ!少しだけ、少しだけだが、なんとなく覚えているような気がする。物凄く声の低い青年がゼランを殺そうとして、それを阻止しようと全力を出した事は覚えている。


『それで、リドガーがスバルを止めてくれたの』


横のアーリアは俯きながら教えてくれた。


『つまり俺が言いたい事はこれから旅を続けて行くにあたってスバルが暴走しちまうとヤバいってことを頭に置いておいてほしいんだ。それじゃないと仲間も傷つける可能性もある』


『それはつまり、俺が意識すれば、それだけで大丈夫なんですか?』


『まあ、それだけでもだいぶ違ってくる。魔法を理解することでより強くなれるからな。…本当は俺がお前に教えて上げれればいいんだけど…。急いでんだろ?』


『…はい』


『なら仕方ない。とりあえず、嬢ちゃん。これをあんたに預けとく』


リドガーはそう言うとズボンのポケットから取り出した小さな紙をアーリアに差し出した。覗き込むとそこには見た事のないような難しい魔法陣が紙いっぱいに描かれてある。


『…これは』


紙を受け取ったアーリアはその魔法陣をまじまじと見つめたままリドガーに尋ねる。


『竜式封印魔法が施された紙だ。それを竜魔法で暴走したヤツの体にはっつければ暴走は一瞬で止まる。でも一回使っちまったら再利用できないから考えて使えよ、嬢ちゃん。もっとも使う事がなけりゃそれが一番なんだけどな』


『わかりました。ありがとうございます!』


アーリアの目には先ほどの涙はもうなく、変わりに決意の炎が燃えているようだった。


『んじゃ、元気でやるんだぞ、お二人さん』


リドガーはそう言うと病室の扉へ向かって歩きだした。


『ありがとうございました!』


アーリアは立ちあがってぺこりと頭を下げながら礼を述べた。リドガーは歩みを止めずにその片手を上げて返事をすると出て行ってしまった。


『…スバル、私、スバルが暴れた時…何にも出来なかった』


リドガーが出て行ってからしばらくした後、再び椅子に腰かけたアーリアが口を開いた。さっきから泣いていた理由はこれか。


『でも、私、スバルのために一生懸命頑張るから!』


アーリアはこちらに笑顔を見せて強く言った。この笑顔を守るために、俺も頑張らなきゃいけない。


『チーム結成だ』


俺はアーリアに向かって手を伸ばす。「うん」とアーリアも頷き、共に握手をかわした。


『…でも、光の国…行けなくなったんだろ?』


俺がそう尋ねるとアーリアは何かを思い出したかのように「はっ」と叫ぶと俺をベットから引っ張り出した。


『そう言えば国長のゼランさんから、スバル君が目を覚ましたら私の部屋に来て下さいって言われてたのすっかり忘れてた!』


『マジかよ!』


『だから、急いでよ!』


そして、俺とアーリアは急いで月明かりの差し込む病室を飛び出した。

読んで下さりありがとうございます


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