氷竜クロウカシス
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まただ…。またあの変な夢だ…。俺はまたもや自分自身が溺れたあの川に立っていた。前回とほとんど変わっていない。変わっているとすれば声が出せるようになった事だ。しかし、目の前にいる俺や佐助や優斗には一切聞こえてはいないだろう。
そういえばここで俺が消える時に茂みにいたあいつは…いた!前よりはっきりと見えるような気がする。ひょろひょろとした長身に黒いフードをはおった男だと思われる。
『あんたは誰なんだ!!!俺をこっちの世界に連れてきたやつだろう?誰なんだ!!!』
俺は力の限り叫んだ。目の前で俺が溺れ始める。すると男は少しだけ顔を上げた。その瞳を見て驚いた。男の瞳は黒魔法によって操られていたあの竜とまったく同じ目…真紅に染まっている。
『…ゥゥゥ…』
何とも言えないうめき声のようなものを男が発した瞬間男は消えた。
それとほぼ同時に俺がいた所から水しぶきが収まる。結局男が黒魔法の使い手であろうという事しかわからなかった。
そして、目の前がぼやけ始め、その場に倒れこみそうになる。意識が遠のき始めてきた…。
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(…目が覚めたか、少年よ)
俺が目覚めるのと同時に隣にいる竜の透き通るような美しい声が聞こえる。竜の眼はあの時の真紅の瞳ではなく本来の輝きを取り戻していた。
俺が今いるのはたぶん谷の洞窟。周りに灯りはないが一面氷で覆われているため暗くはない。さらに見た目ほど寒さは感じなかった。
(お前のおかげで助かった。礼を言う。私の名前はクロウカシスだ。…クロウで良い)
『…俺の名前はスバル。…こちらこそ助けてくれてありがとう』
竜に礼を言うのはどこか照れ臭かった。
(スバルが私の近くに着た途端、私の封印が緩み始めたのだ。きっとお前がこちら側の人間でないからというのもあると思うが…)
『竜の封印にこっちの世界とかあっちの世界とか関係あるのか?』
(…その青いブレスレット…ロイルの知り合いか?)
竜は俺の質問を無視して意味のわからない質問をしてきた。ロイルという名前は初めて耳にする。
『ロイルって誰だ?』
(ロイルは…私の封印を見回っていた男の一人だ。あいつはそれとまったく同じものをつけていた…)
クロウの封印を見回りをしていた男…。まさか、ハルとデントの父親のことだろうか!?
『そのロイルって人は…ここで死んだか?』
(よく知っているな。その通りだ。あいつは私を封印した黒魔法を操る男に殺された)
やはりか…。
『ロイルは…俺の友人(本当は家族だがここでこれを言うとややこしくなるので)の父だと思う。これはそいつらからもらった』
(先ほど私があちらの世界の人間だからかと思った理由は私を封印した男もお前と同様、こちら側の人間ではなかったからだ)
!?
…今まで俺はこちらの世界に飛ばされたのはこの俺一人だけだと思い込んでいた。俺以外に…そして俺がこちら側に来る五年以上も前からこちら側の世界に飛ばされたやつがいるんだなんて…。そしてその男は黒魔法を使っていたとなるとやはり俺も黒魔法が使える体質なのだろうか。
(…私たち竜には使命がある。「勇気と力を持ち合わせる者に竜は力を与える」その言葉通り自らの力を何らかの形で受け継がせるという使命だ。…私の力を受け継ぐ者となってくれないか?)
突然の提案に俺は驚きを隠せない。先ほどの話だけでも十分頭がパンクしそうなのにお次は力を受け継いでくれと来た。…勿論冷静に考えてみれば悪い話ではない。というかとってもいい話ではないか。
『…でも、俺には時間がないんだ』
俺はここまで来た経緯を出来るだけ詳しく話した。クロウは時々翼を動かしながら話を聞いてくれた。
(…五年でどうだ。五年ならあいつはどこかへ行ったりはしない)
五年間か…。俺にとってはその五年間は短いのか長いのかは分からない。しかし強くなるには絶好のチャンスである。このチャンスを逃せば竜の力などもう関わることすらないであろう。俺は気持ちを固めた。
『…五年間、よろしく頼む』
(うむ。ありがとう。やるからには厳しいが、大丈夫か?)
『俺をなめるな!』
(よし!では明日から竜魔法を教える。今日はゆっくり休め)
洞窟の外を見ると既に雪はやんでいた。
ここで1章を終えようと考えております。
2章はそれから数年後という形で進めて行きたいと思います!




