悲劇
光の竜に逢う事を決意した次の日…つまり今日、役所のある広場へ行くと人がたくさん集まって何やら行っているではないか。
『何かあったのか?』
『…あそこで話をしているのは…ハクじゃないか!?』
ハルの言うとおり群衆の中心にステージのようなものが作られており、その上でハクが何やら話をしている。何事かと歩いている人皆が足を止めてハクの話に耳を傾けている。まるで選挙活動を行っているようだ。
『…みんな、集まったなぁ、今日は役所で仕事をこなしているある一人のヤツについて話があってみんなに集まってもらったんだ』
…ある一人のヤツって誰の事だ?群衆が途端にざわつく。
『…みんな静かにしてくれ…。あのなぁ、少し前に聞いた話なんだが…今この場にもいるだろう、この世界の人間じゃないヤツが紛れているんだ!!!』
!!!!!
群衆がさらにざわつく。口々に自分の言いたい事をハクに向かって訊いている。
…なんであいつが俺の事を知っているんだ?どこで情報が漏れたんだ!?
『そいつはこちらの世界ではない所でもう死んでいるはずのヤツなんだ!』
聞けば聞くほど体中からイヤな汗がふきだす。
『これは父から聞いた話なんだがこちらの世界ではないヤツは成長するとあの暗黒の魔法、黒魔法を使えるようになるって言う話だ。そんな奴がこの街にいたら、いつこの街が潰されるかわからない。そんな生霊をさらしといて気が済むか?』
群衆はハクに同意する。まるで洗脳されているかのように…。
…まずい!
『…え?そいつが誰かって?あぁ、教えてやろう。…かの有名な…蒼炎のスバル君だ。そうだよな、スバル?』
群衆の目が一斉にこちらを向く。怒りの目を向けるもの、まだその事実を受け入れられていないもの。
『…違う!黒魔法の話はでっちあげだ!!!』
『デント!おまえには訊いていない!!!』
…黒魔法の話は初耳だが、その話が例え嘘であったとしてもここで俺が批判すれば間接的に長を批判することとなりこの街の民全員を敵に回すこととなる。今後のハルやデントの事を考えると…やはり…。
『…黒魔法の話はよくわからないが…、それ以外の事は本当だ』
『スバル!!!』
『ごめんデント、ハル』
群衆の中のひとりの男が近づいてきて頬をぶん殴られた。
『…とぼけんじゃねぇぞ!お前は黒魔法使えんだろ!!!炎だって青いしよぉ!え?』
その男に続き次々と群衆から批判の声が飛びかう。
『…とりあえず逃げよう。場所は…修行場だ!急げ!!!』
ハルの号令によって群衆から逃げるように修行場へ走った。
今俺の頭の中には恐怖と焦りしかない。俺達三人は風のように街を走り抜けやっとの思いで修行場へ着いた。
『…はぁ…はぁ…。どうする?』
いつも元気が爆発しているデントでさえも息がかなり上がっている。
『…これは街から逃亡という形で光の国を目指すしかないと思う…』
やはりそう来るよな…。ハルはこの状況で街にいることは不可能に近い上に逃亡するさなかに光の国を目指すのが良いと判断したんだろう。
そこへロブ爺がやってきた。
『…ついにばれたか…』
『すいません。…注意を払っていたつもりだったんですが』
『…過ぎてしまった事はもうよい。…どうするつもりじゃ?』
『私は…逃げるのと同時に光の竜に会うために旅をすればと思いました…』
『…俺…ひとりで行かせてくれ』
ハルとデントは俺に驚きの目を向けてくる。
『なんでそんな事言うんだよ!スバル!俺達は家族だろ!!!』
そうだ、家族だからこそこれ以上迷惑をかけたくないんだ。これは俺の問題なんだし…。
『…デント、ハル、スバルの事も解ってやりなさい…。これがスバルの決断じゃ』
『でも…』
デントはそれ以上言う事は出来なかった…。
『では、ロブ爺、二人の事を頼みます』
『もう行くのか…』
『…スバル、忘れるな。私たちは家族だ。必ず自分の存在を証明してこの街に戻って来てくれ…』
ハルは泣いていた。デントも泣いている。
『…あぁ、絶対戻ってくる!!!約束だ』
そしてハルとデントと抱き合い、この地を後にした…。




