竜
家に帰るとデントが竜の事について話をしてくれた。
『竜は各国に一体ずつ封印されているんだ。昔はもっと沢山竜がいて竜が俺達人間に魔法を教えたと言われているんだ。でもしだいに魔法を覚えた人間が竜を殺してしまって個体数が激減した竜は進んで深い眠りについたんだ』
『そんなことして竜は余計に無防備になるんじゃないか?』
『いや、各竜が封印されている場所はそんな簡単に行くことが出来ない上に魔法式が張ってあってちょっとやそっとの攻撃じゃ竜にキズは付けられないようになっている。その封印が解けていないかを確認することが父さんの仕事でもあったんだ…』
言い終えたデントを継ぐようにハルが続きを話してくれた。
『…五年前、ハルジオンの街は稀に見る寒さに襲われた年だった。ハルジオンの街から離れた所にある竜神の谷に昔から竜が封印されていたのだが父がその竜の封印がなされているかどうか確認しに行った時の事だ…』
五年前ってことはハルが八歳、俺とデントは五歳かぁ。
『この話は父と一緒に行ったロブ爺から聞いた話なのだが…竜が封印されている場所へ行くとひとりの男が黒魔法を使って竜の封印を解いていたらしくその男との戦いのさなか、父は死んでしまったのだ…。ロブ爺のおかげでその男も殺すことが出来たらしいのだが…』
『…黒魔法って?』
たぶん相当強いものなんだろうなという見当はついていた。だが気になったので思わず質問してしまった。
『黒魔法は闇の国の民のみが唯一使える魔法で様々な魔法の中でトップクラス、いや一番強いといっても過言ではない暗黒の魔法だ』
暗黒の魔法…。
『父が死んでから私たちはロブ爺に養ってもらい、私が十歳になった時からこの家に戻って生活している。…その事件が起きた後も、竜の封印には問題はなかったらしい』
『竜の力ってそんなにすごいのか?』
デントが何を言っているとでもいうような顔をして俺の素朴な質問に答えてくれた。
『竜の力は魔法を使わなくてもものすごいものなんだ。凄腕の剣士千人集まっても一ひねりだぜ。おまけに魔法が使えてその魔法の威力もケタ違いなんだから神といってもおかしくない生き物だ。……そういえば、スバル…おまえ光の竜に会いに行くのか?』
かなり唐突に聞かれたので回答に困ってしまった。だが、真実を知るためには絶対に会わなければならない。それが危険に満ち溢れていようとしても…。
『…うん、俺も真実を知りたいからな。出来るだけ早いうちに光の国へ行こうと思うよ』
『俺達も行くぜ!』
俺の意見としてはついてきて欲しいかった。怖いからだ。でも、これは俺の問題であってこの2人をまきこみたくもなかった。その気持ちを察したようにハルがこう言ってくれた。
『…変な考えは持つな、スバル。私たちは家族だ!』
ハルの手首には青く輝くブレスレット…。デントの手首にも、そして、俺の手首にも同じようにして輝いている家族の証である。
『俺達は覚悟はできてる!』
『…本当にありがとう…』
込み上げてくる熱い何かを押さえながら俺は二人に対してこう言う事しかできなかった。




