スバルvs長の息子
ここは零下の森北エリア。北ということもあって他のエリアより気温が低い。
…こんな寒いエリアに何日間もいたら、レンジとか言うやつはとっくに死んでると思うんだけど…。今頃気がついても遅かった。
そういえばハク達はもう見つけているのだろうか…。いや、そんなはずはない。今回の勝負は絶対に勝つのだ。いくら長の息子だろうがあれほど言われたのだ、勝たないと気が済まない。
それは突然訪れた。
歩いていると周りの雪が音をたてて揺れ始め、ブリザードが巻き起こる。無防備な俺はわけのわからぬまま5メートルほど吹き飛ばされた。
『…クックックックック、無様だねぇ。蒼炎のスバル君よ』
この皮肉った声の主は…ハクだ!
『おまえの仕業か!』
『あったりめぇだ。お前を再び立つことの出来ねぇくらいにめためたにしてやる!!!』
『その言葉、そっくりそのままお前に返す!』
ハクは何か呟くいたかと思うと、ハクの手の中に先端が鋭くとがった槍の様な氷柱が出現した。その槍を持ってこちらに飛びかかってくる。
こんな単調な攻撃、楽勝にかわしてあいつの頭を黒こげにしてやる。
そして俺は思い通りに氷柱をかわした。いや、正確に言うとかわしたつもりだった。
氷柱をかわした瞬間、ハクのあいている方の手の中に一瞬にしてもう一つの氷柱が形成され、その氷柱が俺の腹に向かって突きだされた。
間一髪、俺は体を大きく反らしギリギリでかわすことに成功した。
『お見事だぜ。クックックックックックック…。お次はこれだ!』
ハクが両手を地面に合わせると俺の足元に鋭くとがった氷が突きだしてくる。これまた突然に氷が出てきたため、かわすのはかなり難しかった。ハクは俺がかわす場所を予測して、氷で形成された獣の手のような形の両手でまたもや飛びかかってくる。
負けじと反撃。俺も蒼い炎を両手に纏って斬りかかる。初めてこの炎を纏った時より大きく、より鋭く、偶然にもハクとほとんど同じ形をした炎を作ることが出来るようになった。炎と氷、もちろん炎が優勢に決まっている。
そして、両者の鋭い爪がぶつかり合う。
…!?
両者の爪がぶつかり合った瞬間、俺の両手に突き刺すような冷たさ、いや、痛みが走りぬける。
『どうした?おまえのその蒼い炎の威力はこの程度か、笑えるぜ。クックックックック…』
ハクはほとんど動じていない。この違いは何なんだ?
『まだまだぁ!!!』
ハクが両手を大きく仰ぐと、仰いだ所の後には先ほどの氷柱よりはるかに大きい氷柱が無数に浮いている。その先端の全てはもちろん全て俺に向いている。そしてハクは氷柱が全部出現したことを確認して、天につき上げた腕を、降りおろした。
物凄いスピードで、無数の氷柱は空を切り裂きながら飛んでくる。あれに刺されたら、血祭りになってしまう。そうならないためにも俺は魔法陣を即座に出現させそれに備える。
『炎の壁!』
ネズミちゃん退治の時に使用した、この魔法で氷柱は完全に防ぐ事が出来た。しかし、氷柱が溶けた時に、発生した水蒸気で当たりにもやがかかってしまった。…最初からこれが狙いか!
―ヒュンっ!!!
空気を切り裂くような音とともに、右の脇腹に激痛が走った。
『ッぐ!』
痛む部分を見てみるとそこには自分の血で赤く染まった氷柱が突き刺さっていた。この氷柱を引き抜けば、大量出血につながるかもしれないが、何より痛みがひどいために、引き抜かざるを得なかった。鼓動似合わせるようにドクドクト血が噴き出す。
『…これまた無様だぜ。クックックックック!』
もやが晴れてきたと同時に、ハクの姿もあらわになった。
『痛いか?悔しいか?…クックックックック!』
ふざけるな!俺がお前に何をしたって言うんだ!そう言いたいが、脇腹の痛みに喋る事も辛い。
だが、ここで痛みに負けていては、きっと戦っているであろうハルやデントに申し訳ない。
『…うあぁぁぁぁあああ!!!』
俺は渾身の力を振り絞り、立ちあがるとともに炎を纏った右手でハクの脇腹に重量パンチを繰り出す。ハクは油断していたのか派手に後ろ側へ吹っ飛ばされた。
『まだそんな力があったとはなぁ…だが、貴様もこれで終わりだっ!!!』
ハクの周りに青白い魔法陣が出現する。
『絶対零度!!!』
…ヤバい!このままじゃ…。ハルやデントもきっと戦っているはずだ!ここで負けるわけにはいかないんだ!!!俺の髪の先端に前回より大きな炎がつく。
『喰らえぇぇぇぇぇぇええええ!!!!』
ハクが唱えた魔法、絶対零度は青白いビームとなって一直線に俺の方へ向かってくる。俺は右腕に魔力を集中させ新技を発動させる。
『灼熱速激砲!!!』
刹那、俺の右腕から蒼い炎が出現し、大きな炎の弾丸となり発射される。
ともに蒼い氷と炎とがぶつかり合い、ものすごい衝撃波が発生した。白い光が目の前を覆い、意識が飛んでしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
遠くで水の音が聞こえる…。おそるおそる目を開けると、俺が溺れた川が目の前に広がっていた。
…夢だろうか…?
佐助が溺れている所に俺が助けに来た。あちらからは俺が見えていないらしい。そして俺自身、動くことも出来ない。
しばらく何もできないまま俺はその光景を眺めていた。そして、俺が溺れる少し前、今俺が立っている所から川を挟んだ向こう側の茂みに…誰かがいた。
木の陰によりぼやけたシルエットしか見えない。誰なんだ?
誰かを考えてみようとしたその時、俺の正面で俺が溺れている。優斗は佐助を抱え岸に向かっている。俺が溺れている場所から消える少し前にまた茂みを見た。
…いたはずの誰かがいなくなっている…。
そして溺れている俺がいた場所から水しぶきは上がらなくなった。
視界がぼやけてきた…。そしてまた遠くから声がする。その声は少しずつ、だが確実に近づいてくる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『…る、…ばる!…すばる!!!』
目が覚める。頭が回らない。確か…俺はハクと戦って気絶したんじゃなかったんっだっけ。そして変な夢を見て…。俺の周りにはハルとデントと見知らぬ男。ハルとデントはどちらもボロボロだ。
『…この人は?』
『私はレンジだ』
レンジって確か迷い人で俺達が探している人じゃなかっただろうか。
『いやぁ、本当にすまない。私は極度の方向音痴でなぁ。それを直すためにジンクスに内緒で来たんだが…この通り、迷ったというわけだ。はっはっは』
この人は本当に反省しているのだろうか。いや、それ以外にも引っかかる点がいくつかある。
『レンジは私も知らなかったがジンクスとチームを組んでいるらしいんだ』
俺が質問する前にハルが説明してくれた。レンジは方向音痴を直すため、チームを組んでいるジンクスには内緒で零下の森に来たのだがあえなく失敗。迷っているところでボロボロのハルやデントに遭遇してここまで来たのだという。特徴である鉈は変形するらしく首狩りのレンジとして有名?らしい(ハルもデントも俺もその事は全く知らなかった)。
一方、ハク達は俺達が気絶している間に姿をくらましたらしくレンジは見ていないらしい。ハルもデントも俺と同様、相手を倒した後、自分もダウンという形で勝負していた。
とりあえずレンジから報酬を受け取り家に帰宅した。
『…ウチに誰かいるのだろうか?』
誰もいないはずの家に電気がついている。泥棒?…でも家に盗まれるものなどない。誰だろう?
入口のドアノブをまわすと居間からロブ爺が飛び出してきた。
『ロブ爺!?』
三人声を揃えて言う。
『…おぉ、スバル!おまえの事についてちょいと話がある』
…話?たぶん俺がなぜこちらに来たのかについてであろう。何かがわかったのなら嬉しい。
少しの期待を胸にロブ爺の話に耳を傾けた。




