出港前夜
「総員に告ぐ、明日14時に本艦マリハは、ビキニに向け出港する。よって今晩は全員上陸を許可する。各自明日10時までに戻ってくること。」
艦長ベッツィーのこの言葉を締めくくりに、仕官以下水兵達は、上陸をして行った。
その様子を艦上から見ているベッツィー
そして、母の一言を思い出した。
「生きて・・・」
それは、数日前ベッツィーが母のところに行った時のことだった。
「母上・・・」
「ベッツィーか」
「スクィニーが死にました。」
ベッツィーの言葉に固まる母・・・しばらくして、ベッツィーを見つめた。
「ス・・・スクィニーが?」
「はい。」
「お前が倒したのか」
「いえ・・・ギタという奴が・・・」
そういうとベッツィーは、両手を突きうつむいた。
「なぜ?本当のことを言ってくれなかったのです?」
「ベッツィー・・あの時は・・・」
そうあの時は母は、気絶させられていたのだった。だから真犯人は知るはずがなかった。
「そのことではなく・・父のことを」
しばらく、続く沈黙の中、母は口を開いた。
「言えなかった。」
「えっ・・」
「ただ、言えなかった。」
ベッツィーは俯いたまま涙していた。
「わ・・・私は、父を・・・二人とも・・・・ギタに・・・殺された・・」
泣き崩れるベッツィーを母は抱きしめた。
しばらくして落ち着いたベッツィーは、立ち上がった。
「ベッツィー・・・」
「母上、行ってまいります」
立ち上がったベッツィーをただ見つめる母・・・
ベッツィーは振り向き、家を出ようとした。その時、母が最期に発した言葉が
「生きて・・・」
後の言葉はよく聞き取れなかった。
艦上から降りるベッツィーをミナム達が待っていた。
「ミナム殿、何故ここに?」
「ベッツィー殿は、一人ですか?」
「ええ・・まぁ・・」
「じゃぁ・・・俺たちと軽く行きませんか?」
ミナムは、右手でお猪口を持つようなそぶりを見せた
その様子を見て戸惑うベッツィーにソウシが話しかけた。
「私も行きますし、これからのことも聞きたいのでいかがですか。」
「行きましょうよ」
カーネルとミヌもベッツィーをそくした。ベッツィーフッと軽くため息を付いてまいったなぁ・・・そう思いつつ観念した。
「わかりました。」
ミナム達と歓談を楽しんだベッツィーだった。
そして、戦艦マリハがオイオイを出港した。