挨拶
この日、ミナムは、カーネルの両親へ娘をもらう挨拶に行くことになった。
「ミナム・・・大丈夫?」
ミナムの緊張する姿を見たカーネルが心配そうに声をかけた。
「だいじょう・・ぶ」
「なに緊張しているのよ。」
緊張するわい・・・いつの世でも、両親に娘をくださいと言うんだから
しかも、婚約者がいる女をくださいだもんな・・・
そうミナムが思っていると。
「そろそろ時間よ・・・」
「ああ・・」
立ち上がるミナム・・・
その姿を見たカーネルは、そっと、ミナムの服を直した。
「がんばってね!!」
「ああ・・」
二人は、両親のいる家にむかうべく、斎宮を出た。
やがて、二人は、カーネルのいた村に着いた。
彼らを見た村人は、すぐに集まり、二人を囲み罵声を浴びせた。
「貴様!!どうやって、たぶらかした!!」
「どんな、魔法を使った!!」
その様子を見て驚くミナム、動きようがない、どうしたらいいんだ。
そう迷っていると。
「やめてよ!!この人には、罪はないわ!!」
そう言って、ミナムの前に両手を上げ立ちはだかると今度は、村人の矛先は
カーネルに向けられた。
「この淫乱娘が!!!」
そして、村人はついに二人に対して石や物を投げつけてきた。
それにあたり、「いた!!」と頭を抑えるカーネル
その時だった。
がばっと、カーネルをかばい抱きしめるミナム
ドキッと鼓動があがるカーネル
そして、数々飛んでくる物のたてになるミナム・・・
その影で、ミナムに抱きしめられ
カーネルは、ドキドキしていた。
村人からの投げつけられる暴言や物があたるのをただじっと我慢し、
カーネルをかばうミナム、その時だった。
「村人よ・・・やめるのじゃ!!!」
その声に振り返る村人たち、そこにはヤマト姫が立っていた。
「斎宮様・・・何故?」
「不義ですぞ!!」
「まだ、正式に不義と決まったわけじゃあるまい・・・」
そうさらっと、答えるヤマト姫・・・
その言葉に驚く村人たち、
「不義でしょう? 婚約者がいるのに・・・斎宮様・・・」
「まだ、婚約しかしていないんだろ。」
またさらっと答えるヤマト姫・・・
「斎宮様・・・」と返答に困る村人たち
「とりあえず、お前ら、両親へ挨拶に行くのじゃ。」
そう言って二人をカーネルの親元へ向かわせた。
「斎宮様?どうして?」
「今回は、わしの領域で起こった事態じゃ。少しはもわしにも責任があるのじゃ」
ヤマト姫は、村人を諭した。
「斎宮様?斎宮様がそこまでしなくても」
村人は不思議がった。
カーネルの家に着いた二人。
「ここか?」
「うん。ミナム大丈夫?」
「ああ・・」
ミナムの緊張は次第に高くなっていった。
玄関を叩き、
「はい。」という女性の声と共に、ガチャとドアが開いた瞬間だった。
開いたドアの向こうには、腕を組んで睨むつけるカーネルの父親がいた。
「失礼します。」と言い直立不動で立ち頭を下げ、玄関に入る許可を待っているミナム
「まぁ・・・入りなさい。」
とカーネルの父の言葉は、意外と優しかった。
「ありがとうございます。」
そう言って、二人は家の中に入った。
二人は、ある部屋に通された。そして、カーネルの父が
「まぁ・・・座りなさい。」とミナムに言うと
「ありがとうございます」とミナムは一礼をして、その場に座った。
「今日は何のようだ。」
「正式に挨拶に来ました。」
「ほう・・・正式にとは」いぶかしげな顔をするカーネルの父
「順番が逆になって、まことに申し訳ございません。しかし、お嬢さまとの仲をお許しください。」
そう言って、ミナムは、座っていた椅子から地面におり、土下座をした。
その光景を見たカーネルの父は戸惑った。彼は一体何者なんだ?
カーネルの父は、ミナムはもっといい加減なやつだと思っていたからだった。
一方、横にいたカーネルは、ミナムの様子を見て、胸が熱くなるというか苦しくなるというか
嬉しいというか、えも言えぬ感覚に襲われていた。そして、さっき自分をかばってくれたことを思い出し・・・
胸の鼓動が高くなるのを感じて、口を押さえ、ほろりと涙を流した。
カーネルの様子を見ていた父は、しばらく考え、ミナムに声をかけた。
「まぁ・・・顔をあげなさい。」
素直に顔をあげるミナム、しかし、緊張のボールテージは、最高潮を迎えていた。
耳にまで聞こえる鼓動、異様な口の渇きと口内に広がる変な味・・・
「は・・い。」
「ミナム君・・・ひとつ聞いていいか。」
「はい。」
「娘をどう思っている。」
しばらく、沈黙が続いた。
カーネルの家族が固唾を呑んで待っているとやがて、ミナムの口から
「かけがえのない人です。」
そうこぼれてきた。
その言葉に、カーネルは感動した。
「そうか・・わかった」とカーネルの父は言い、振り返り
「母さん、酒を用意しろ」そういうと、ミナムの肩をたたき
「娘をたのんだぞ。」
「ありがとうございます。」
そう言って、再び頭を下げるミナム、カーネルは、ミナムに寄り添っていった。
やがて、話は、決闘の話になった。
「明日、相手方へ婚約破棄の話をしにいくが、たぶん、決闘になるだろう。そのときは、頼むぞミナム君」
「はい。」
「それと、君は一体どこから来たんだね?」とカーネルの父が尋ねると
「それが・・・」
とミナムははっきりと答えれなかった。第一、全然別の世界のサラリーマンっていっても誰もわからないぞ。
そう悩んでいると、カーネルが「お父さん・・・ちょっと」と父親に耳打ちした。
「えっ?」と驚く父親、
「そうか・・それで斎宮様がいらしたのか」
「だから、ミナムって名前も言わないで・・:」
「わかった。なお更だな、」
そして、ささやかな宴が行われた。こうして、ミナムの緊張の一日が終わった。