斎宮様
「斎宮様よ、ここ、斎宮で一番偉い人で、名前をヤマト姫というんですが。皆は、斎宮様と呼んでいます」
ミヌがミナムに説明をしたものの、当の本人取っては一体何のことやら、いまだにミナムと呼ばれていること自体が不思議で仕方がなかった。気分はと聞かれたら、さぁと答えるに違いなかった。
しばらくすると、森の奥から一人の老婆が現れた。彼女こそ斎宮様と呼ばれるヤマト姫だった。そして、ミナムに近づくとじろじろとしばらく見たかと思うとおもむろにその口を開いた。
「お前がミナムか」
「たぶん・・・」
両腕を頭に回し、少し上を向いて、まさに開き直ったかのような態度をとっているミナム、そうしないとやってられないというのが彼の本心であったに違いない。しかし、そんな態度が気に食わなかったのか、右手に持っていた杖でミナムの頭を叩いた。
ぱかーん!!
乾いた良い音がその場に広がった。
「痛てて・・」
「多分とは何じゃ・・・多分とは・・」
「いや・・・」
叩かれた部分と手で押さえながら、ただ薄ら笑いをするミナム。そのだらしない笑いを見てヤマト姫はミナムの耳を持った。
「イテテ!!」
「ちょっと来い」
ヤマト姫は、そのまま、ミナムを引きずり連れて行かれた。
「わ~」
まさか老婆に簡単に引きずられたミナムはまさかのことにらパニックになり、ただ叫ぶのがやっとのことで
「斎宮様!!」
カーネルとミヌが着いて行こうとしたら。
「来るな!!おぬしら!!」
ヤマト姫は二人を追い払った。
抵抗虚しくずるずると引きずられたミナムは、ある場所まで連れて来られた。そこは斎宮の泉と呼ばれる小さな水源地で岩と湧き出る水は深く生い茂った木々から差し込む光が見事な淡く幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「シャキッとせんかい!!シャキッと!!」
ヤマト姫はバンとミナムの背中を叩いて喝を入れた。
「はい!!」
正座をするミナム
「お前にはいくつかの試練がある。」
「試練?」
「そうだ、まず、カーネルの親に了解を得ることだ」
ヤマト姫の言葉を聞いて、目が点になるミナム
「えっ・・と・・それって・・挨拶に行くことですか」
「そうじゃ、そこには多くの試練が待っておる」
両親への挨拶っていつの世も試練だよ・・・普通は、そうミナムが心で思っていると
「何か言ったか?」
「あっ・・いえ・・なにも・・」
「そうか?」
「はい・・」
「それと・・・」
「それと?」
不思議そうに聞くミナムに対して、ヤマト姫は指を指した。
指を指され、たじろぐミナムに
「決闘をせねば」
「ははは・・・決闘ね・・・」
しばらく、考えるミナム、ひょっとして、俺が戦わないといけないのか?
そう考えると、しばらく固まってしまった。
「・・・・・・・」
「おい?」
声をかけるヤマト姫・・・ミナムに反応がない
「・・・・・・・」
「どうしたんじゃ?」
「・・・・・・・」
その間、約3分・・・・
「ええ~!?!!」
大声を上げて驚く
その驚きを見て、逆にびくっとなるヤマト姫、そして、
「反応が遅い!!!」と叫び、
パカーンとミナムの頭を叩いた。
「イテテ・・・」
頭を抑えるミナム
「それで?決闘って?」
「この村の掟で、婚約者を奪った者は、婚約者と戦い勝ち、正式な夫として、認められねばならん」
「このまま逃げるのは?」
「ならん」
「なぜ?」
「カーネルの両親が村に不義の娘を持ったとして、この村におれなくなる」
「もし、俺が負ければ?」
「カーネルも処刑される。不義の罪として」
言葉が出ないミナム、その様子を見てヤマト姫は、
「わかったな。ミナム」
そう言い残して、ミナムの前を去った。
しばらく、考えるミナム・・・記憶がないのが恨めしい・・・しかし、カーネルは、命がけで俺と契りを交わしたんだ。男として、戦わねば・・・けど、さっきまでサラリーマンだった。おれが戦えるのだろうか?ただ、ミナムの頭には不安しかなかった。