黒騎士団 3番隊隊長 ソウシ
ため息をついたソウシ・・・
目の前には、岩の下敷きになっているアクバがいた。
捕らえられたアクバを見て、さっきの悪夢を思い出し頭をふった。
つまらぬものを・・・
黒騎士団3番隊、隊長ソウシ、黒騎士団の中にあって、
隊長にまで上り詰めた女は、彼女だけだった。
彼女は、カーネルのように裕福な家庭ではなかった。
グレースでもやはり、身分制度があり、政府の役人である常民と
一般的な公民に分かれていた。
この中で常民には、文官・神官・武官・魔導士にわかれていた。
特に、文官・神官・武官は特権階級の貴族が大多数を占めていた。
常民になるためには、それぞれ試験があるが、実力で上がれるのは
魔導士がだけだった。しかも、この時代で、黒騎士団は、特に実力を
必要とし、魔導士の力だけでなく、武官と同等の戦闘力も必要だった。
そんな中、ソウシは、カーネルやミヌと同じように、魔導士試験を首席
で合格し、黒騎士団に志願し、女性としてはじめて隊長まで上り詰めのだった。
ソウシは、再び目の前のアクバを見ていた。
そこへ黒騎士団の隊員が、
「いかがいたします。」
「何を・・」
「こやつの処分です。」
隊員は、アクバを指差し、剣を差し出した。
「そうだな~」
しばらく、考え込むソウシ、そして、おもむろに剣に手をかけた。
ちょうど、そこへミナムたちがやってきた。
ミナムがアクバの方を見ると、ソウシが上段に振りかぶったところだった。
「ちょっと、待った!!」
その言葉に一瞬、止まりミナムのほうを見るソウシ・・・
「ミナム殿・・・こやつを処分するのです。」
目の前まで来たミナム
チラッとアクバを見て
「このままでもいいのでは?」
「だめだ・・・アクバは処分しないと」
「けど・・この状態では害がないのでは?」
「こいつは、悪と契約した馬だ!!処分しないと災いの元だ!!」
ソウシの言葉を聞いて、アクバのほうを見るミナム・・
「けど・・・こいつが本当に悪魔と契約した証拠があるの?」
ミナムの意外な言葉に驚くソウシ、振り返ると間近にミナムが立っていた。
ミナムを見て、ドキッとするソウシ・・・・
そして、また、あのつまらぬもの脳裏をよぎる・・・・
そんなソウシを尻目に、ミナムはアクバの前にしゃがんみこんだ。
「お前、俺の仲間にならないか?」
「誰が!!お前なんかと!!」
「ミナム!!何言ってるのよ。」
「そうです。ミナムさん!!」
カーネルとミヌの方を振り返り、笑顔を見せるミナム
そして、
「カーネル、ミヌ、俺、こいつを仲間にするわ」
「ええっ~!!」
驚く二人、
「ミナム殿!!正気か?」
ソウシの言葉に、
「俺の仲間になれば、殺さなくてすむよな!」
「まぁ・・」
「じゃぁ~決まった。アクバお前は今日から俺の仲間だ。」
「フン!!」
プイっと顔を背けるアクバ・・・
それをミナムは無視し、アクバの頬を引っ張った。
「今日から仲間だぞ!!」
「いひゃい!!ひゃへろ!!」
「わかったな!!」
しばらく、アクバの顔をつねり続けるミナム、
「強情な奴め、あとで絶対に仲間にしてやるからな」
その様子を見ていたソウシ
「よくやってくれる」
ため息をついたソウシは、ミナムに握手を求めた。
手を出しソウシと握手をするミナム
「ソウシ殿、ありがとうございます。あっ・・それと・・・さっきは・・・」
そう言おうとしたときだった。
ミナムの口を押さえるカーネルとミヌ・・・
「む~!!」
「ごめんなさい!!ソウシ様!」
カーネルが慌てて謝る。
なんとか、口を塞いでいた手を何とか振りほどいた。
「なにすんだよ!!!」
「ミナムは、黙って!!」
逆にカーネルに一喝され、たじろぐミナム・・
そこへ、ミナムの耳元でミヌがささやいた。
「ミナムさん・・・ソウシ様は、女性です。」
「えっ?」
「だから・・・」
ミヌの言葉が終る前にガクッとうなだれるミナム
「ミナムさん?」
「は・・は・・・」
「だいじょうぶですか?」
ミヌの声が聞こえないミナム・・・・
ミナムは、しばらく、呆然としていた。
そして、
「すみませんでした。」
深々とソウシに頭を下げるミナム、
「別に・・・こちらこそ・・」
「あ・・それと・・・」
ミナムがあれを見せたことを誤ろうとすると
「えっ?」
固まり言葉を失うソウシ・・・
ギュッ
「いて!!」
カーネルは、ミナムの尻をつねった。
その様子をアクバは、見ていた。
そして、考えていた。