カーネルの思い
遡ること、数日前、カーネルは、あることに悩んでいた。そう、ある男との縁談。魔導士試験に合格した彼女には、普通の縁談ではなく戦士との縁談が進められていた。ここまではこの世界では良くある話なであり、その相手とは街の名士の息子と言えば聞こえが良く普通なら喜ぶ縁談のはずなのだが、問題はその相手に会った。単に名士の息子で力があると言うことだけしかなく、体格は良いいというよりは太っていて、力士みたいな太り方ではなく、肥満体であった。しかも、頭が悪いときている。
はっきり言って、カーネルの好みではなく、嫌だとかなり断ったがいい縁談だからと両親に押し切られ、結婚することになってしまった。勝手に進む縁談、そして、今日から街の仕来りで禊の儀式をすることになった。
禊とは、この街では縁談がまとまると、女性は、一時、俗世を離れ斎宮と呼ばれる地に赴き、結婚するまでの間、そこで暮らし、心身を清める儀式のことだった。斎宮の近くまで来たカーネルだったが思わずため息が出た。これで、私の人生も決まりか、そうなんとなく、やりきれない気持ちでいっぱいになっていた。普通の女性だったら十分な相手、両親も大賛成だった。しかし、彼女はなぜか納得がいかなかった、
そんな時だった。斎宮に向かい歩いていると、彼女の前に突如としてまばゆい光があふれ出した。
「まぶしい!!」
そう叫んだカーネルは目をつぶった。やがて、その光は消え、一人の男がうつむき気味で横たわっていた。その男の姿は、今まで見たことのない姿をしていた。紺色の上下に、下は見たこともない黒の皮靴、上着の下には白いパリッとしたシャツ何か、紐のようなものを首からぶら下げている。その横には、見たことのないかばんと四角い箱のようなものもあった。
「大丈夫ですか?」
カーネルが声をかけるが反応がない。死んでるのかなと、近づくと息をしている。
「大丈夫ですか」
再び声をかけ、体を揺らすと仰向けになり顔が見えた。カーネルは、その顔立ちを見た時、ドキっとした。しばらく、その顔を見続けるカーネル・・・どの位たったのだろう、しばらく、その顔を見入っていた。カーネルはふとわれに返った。
どうしよう・・この人・・・斎宮には連れて行けないし。ここに置いておく訳にいかないし・・・
とりあえず彼女は、この横たわっている男を近く建物に連れて行った。そこは、斎宮の近くの武器庫。その男を、運んでいる最中に、カーネルは、ある予言を思い出した。
闇の中から生まれし、ミザキ・・・
グレースを闇に導く・・・
光の中から生まれし、ミナム・・・
グレースを光に導く・・・
ということは、ひょっとして、この人は、ミナム?そう思うとあることを思いついた。そう彼と契りを結んだことにするんだと。
「ちょうどいいわ。ここなら・・・」
武器庫に入ったカーネルはそこにあった服を適当に選んだ。さて、この服は・・・と、彼女はその男の服を着替えさせてた。そして、ミナムが目を覚ますのを待った。
あとは、彼女の賭けだった。