ミナム貴族となる
「従7位下を授ける・・・でいいのかな」
真新しい大極殿でそう呟いたのは、現在のミカドである、今上帝、まだ10歳、元服すら迎えていない子供がミカドになったのには、先のミカドが急逝したことによるのだが、先の崇明帝は、あのような死に方をしてしまっている為、祟りを恐れて、その子息たちは末男を残して、全て出家してしまった。残したのは血縁者の保持のためでだった。こうして、前ミカドの甥にあたる人物が今上帝として、即位をしたのだった。もちろん、今上帝の父親が摂政として彼が元服を迎えるまでは支えることになっている。
「グッジョブ」
親指を立て、息子に合図する父親の姿が、あまりにも不自然だった。突っ込みたい・・・何がグッジョブだとどうしてここでそんな言葉が出るんだという心の叫びをぐっと抑え込んで、ただ頭を下げるしかなかった。こうしてミナムは貴族になったのだった。功績を上げてから3年と時間がたってしまったのだが、これには訳があった。即位した頃の今上帝が幼過ぎたのだった。あの戦いの後、英雄ミナムを恐れる一部の貴族たちが、グレース内にある自分の領地を治める為、力を持ってきた武士を担ぎ上げ利用するようになった。そのことが武士が台頭するチャンスを与え、その中の有力な一族であるペー一族が貴族となっってしまった。すると、今度は京で武士たちがのさばりだしてきた。そういう悪循環の結果、今度はミナム待望論が浮上、こうしてミナムが貴族となることになった。
「ミナム殿、これからも頼むぞ。それと次いでと言ってはなんだが、ビキニの国、爆発事件の犯人を先に何とかしてほしいのだが」
「わかりました」
会話があまりにも普通すぎるのには参っていた。意外だったのはフトーが言っていたアスケヶ原ではなく、逆に西のビキニの国で起きた爆発事件の件だった。一回の爆発で村がもなくなっていたものらしい。大爆発ということになるのだが、そうではないらしい。一つは、魔法で吹き飛ばされ、もう一つは雷で破壊されつくされたというのものだった。つまり相当な魔導士がいることとなる。更に、犯人と思われる人物は名前までわかっている。剣士エックスソード、魔導士ヤンと同じく魔導士ラムという人物らしく、2回目の爆発は、彼らを確保するための、検非違使が追い詰めた所に起ってしまったようだった。なお、一味は、東に向かっているらしい。
そんな彼ら3人を追跡するよう命令を受けたミナム達一行は、カサオに付いていた。とりあえず、播ハリーマへ船で移動することを考えていた。ちなみにミナム達一行とは、ミナム、カーネル、ソウシ、ベッツィーの4人のことだった。