漁夫の利なんて簡単なことを言ってくれる
「ミナム殿、少しやつれてるようですが・・・」
昨夜はお盛んでしたかな?とても言いたいのだろうと思っているミナム、フトーとの会談中何度もあくびが出ていて。たぶん目の下にはクマが出来ていたのをフトーが見逃すはずもない。確かに昨晩は大変なことになっていた・実は、ミナムには既に3人の子供がいる。久々にグレースに戻ったミナムは、用事を終える子供たちの相手をしていた。するとその子たちをあやして寝かせた後にその悲劇は訪れた。
「「ミナム殿、私達が今晩の夜伽を務めさせていただきます」」
その声にぞわぞわとするミナム、その声の主は、ソウシとベッツィーだった。と言っても彼女らは、現役軍人、先の戦役の殊勲者でもあって、ソウシは陸軍大将・ベッツィーは海軍大将になっていた。二人の存在は、グレース内でも有名な存在だった。文武両道にして未婚の母、とは言え、相手は国の英雄ミナム、通常の世界ではありえないのだが、女性たちの憧れの的だった。実際にこの世界では、一夫多妻が通常であるがため、ミナムは非難されることもないのだが、彼女たちが、それぞれ昇進し、未婚のままでも子供を育てることが出来たことが、そのことに起因したのだった。
ここから先は、閑話に任せて、ミナムの日記にはこう書かれていた。3人は無理だとつまりそこにはカーネルもいたことになる。
そんな話はさておき、フトーとの会談だった。
「つまり、アスケヶ原の戦いは手を出すなと申されるのですか?」
ミナムの質問に、フトーは、その自慢の髭を摩りつつ
「そうではない。ペー一族が逃げ出した後、京への進軍を止めて欲しいのじゃ」
「ということは、ゲー一族の京への進軍をとめろとおっしゃるのですか?」
「そうじゃない」
フトーの言っている意味が解らないのは、当然だった。フトーはペー一族の敗戦は目に見えているのだが、ゲー一族がその勢いのまま京に来るのは困るらしい。
「そんな難しいことをいわれても、無理ですよ」
ミナムが正直なところを言うと、フトーも困り果てていた。
「しかしのう・・・」
ペー一族が敗走し、それに続かけてにゲー一族が京へ来ない。しかも、それをペー一族が知らないようにという無理難題を言われているのだった。これほどの無理難題があるのだろうか、敵の心中を察しても、敗走する敵を追撃するのは軍隊としての本性であって、これを止めるとなるとかなりのダメージを要する。しかも、ダメージを受けて進軍を止めたとなれば、そのことに気付いた敗走する軍隊は、その隙に反撃をしようとするのは明白だった。
つまりだ、ペー一族は完敗した状態での敗走するというのが大前提に違いないのだが、敗走するということ自体、フトーの推論であって、確実な情報ではないにもかかわらず、敗走させ、ゲー一族の進軍を止めろというのだから、そんな無理難題を言われたミナムにとっては、どうすることも出来ない。それが本音だった。