ユウ峠での作戦会議
戦況を聞いたミナム達は、すぐに打ち合わせに入った。報告によると、グレース軍は、足止め岩の防備で手一杯な状況だった。それは、黒騎士団二番隊を中心としたギオン軍約5千が足止め岩へ攻めてきたためだった。さらに敵の主力、ワカタケル率いる約3万の兵は、アスケが原に陣取り足止め岩の防衛線が崩れたときにいつでも進軍できる準備をしていた。そんな状況を知ったミナムにソウシは、進軍はあきらめるように忠告した。
「これがここの状況だ、はっきり行ってここから進軍することは不可能だ・・・どうする?」
ソウシがミナムに向け発した言葉に、しばらく、腕を組んで考えていたミナム・・・また飛ぶわけに行かないし、どうすれば?・・・また奴がいるのか?そう思ったミナムは、ヒョウドウに聞いてみた。
「ところで敵の兵を率いているのは?」
「トリニティかと・・」
「ということは黒騎士団もいるってことか・・」
「あのう・・さっきもいいましたけど・・・」
ミナムは思わず左手で頭を掻いていると、ソウシはボソッと言った。
「まずいな・・黒騎士団がいるってことは、ここの戦力が五分五分か・・・」
うーんと考え込んでいるソウシとミナムにヒョウドウは、こういった。
「それなら・・戦いましょう。こちらにはミナム殿もいます。」
その言葉を聞いて、大きく息を吸ったミナムは、ヒョウドウの方を見た。
「ヒョウドウ殿・・・今は黒騎士団3番隊の戦力は、なるべく温存しておきたいのだ・・」
「どういうことです?」
ミナムは、地図上のアスケが原を指差した。その先には、ワカタケル軍3万が陣を敷いているとされる場所だった。そして、その奥には、ギオン城塞都市があった。
「これから・・・ギオン城塞都市を攻める時、どうしても、黒騎士団は必要だ・・・だから、今回の戦ではなるべく置いておきたい・・」
「しかし、その前にワカタケルの3万の兵が・・」
そう言ってソウシは、アスケが原の陣を指差した。
「これを突破するのは至難の業だ・・・」
そう言ってソウシもヒョウドウもアスケが原を指差した。しかし、ミナムは、その指差した所には、何も触れずにこう言った。
「そこのことは後で考えよう、まずは、敵先方の殲滅を最優先にしないと・・・ところで、黒騎士団も鉄砲とか大筒とかは通用するのか?」
ミナムの視線の先にはヒョウドウがいた・・確かに、ミナム殿の言うとおりだ。まずはこれを対峙しないとどうにもならん・・・そして
「黒騎士団も俺たちと同じだ・・」
「そうか・・・」
そう言ってミナムは、足止め岩の両側に張り出したような崖を指差しこう言った。
「ここに大筒を配置しろ」
「はぁ?」
「そんな所に大筒を置いてどうするつもりですか?大筒はここまでしか届かないのですよ!!」
ソウシはミナムのほうを向いて叫んだ。――――届くはずがない・・・大筒がいかに飛んだとしてもここまでは・・・そう思うソウシにミナムは筆で、横から見た絵を描いた。
「ここが、大筒の位置・・・そして、ここが足止め岩・・・大筒の射程はここまで、そして、この高さから砲弾が届く推定位置はここ・・・」
そう言ってミナムが指差したのは、足止め岩からギオン側へ少し行った場所だった・・・それを見て一同ははっとした・・・
「確かに・・・」
「そこで、俺が出陣して、ギオン軍を少し追い返す・・・そして、俺が合図をしたら、ありったけの玉をここへむけて打ち込んでくれ・・・」
ミナムの言葉が終ると一同はじっとミナムを見た・・・
「どうした?」
「ミナムさん・・・私も行きます。」
そういったのはミヌだった・・・そして、ミナムに近づき肩をポンと叩いたソウシもこう言った。
「俺も行こう。」
二人の言葉を聞いた。ヒョウドウはいい顔をしなかった。
「いくら貴方たちでも、黒騎士団を相手にするには兵力が少なすぎる・・・」
そんな時だった。
「私も参戦しようか」
その声がした方を一同が振り返った。そこにはベッツィーが立っていた。
「ミナム殿・・あいたかったぞ・・」