敵討ち
目を覚ますとそこには、二人の女性がミナムに抱きついて寝ていた・・・あ・・やっぱり・・と言うことは、グレースに戻ったのか・・・多分そうだろう・・・ソウシとミヌが目を覚まし・・ミナムを見た・・・しかし、今までと違いソウシはさっと体を隠したくらいで、それほどパニックにはならなかった。3人が身支度を終えたときだった。屯所のソウシの部屋に一人の兵士が入ってきた。
「ミナム殿!!!ミカドがお呼びです。」
「何事だ・・・」
その兵士に話を聞いたのはソウシだった・・・
「実は・・・ギオンの反撃にグレース軍が壊滅的打撃を受け、何とか、ユウ峠の足止め岩で防戦している状態・・」
そうミナム達はいま、グレース軍が敗走、ハン城も攻略され、最終防衛ラインでの攻防が続いている頃と説明を受けた。そして、大極殿に向かったミナム達・・・そこで待っていったのは、新ミカドとフトーだった。
「ミナム殿・・今すぐに、ユウ峠へ向かうのじゃ・・・」
「し・・しかし・・・」
「頼む・・・おぬししかおらぬのじゃ・・・」
フトーの言葉に戸惑うミナム―――もう・・戦う気力がない・・・それが本音だった。その時だった。次の言葉がミナムを動かすことになった。
「ミナム殿・・・実は・・・カーネル殿の事故のことじゃが・・・」
「その話は聞きたくありません・・・」
「どうもミザキが関与しておるようなのじゃ・・・」
思わずフトーの方を睨んだミナム・・・
「実は、わしがあの後調査したら、確かにカーネル殿をミカドの間に連れて行ったのは、ミカド本人だった。そして、そこで何が行われたかわからぬが、あの場所にミザキがあわられたのは間違いない・・・」
「なぜ、そのようなことを・・・」
「実はあの事件の時、もう一人目撃者がいたのだ・・・」
「それは誰ですか・・」
「わしじゃ・・・」
フトーの衝撃の告白にミナム達は困惑の色を隠せなかった。
「実は、あの時、カーネル殿を助けようと、別室に待機しておったのじゃ・・しばらくして、轟音と共にまばゆいばかりの輝きがあの部屋からあった。わしが覗くとそこには、ミカドとカーネル殿の黒くなった遺体があった。そして、赤子を連れた黒髪の女性が立っておった・・多分あの女・・わしのことに気付いておったのじゃろう。わしの方を見て不敵な笑みを浮かべておった。しばらく、わしは、身動きが取れなかった。そんな時じゃったマヤザキが駆け込んできたのは、そして、次の瞬間、再びまばゆいばかりの光が一面を覆い、眼を開けると彼らの姿は、既になかった。」
「それが・・・」
「実は、その女とマヤザキの姿が一致したのじゃ、しかもその女があのミザキじゃと聞いておる・・・」
フトーの言葉にしばらく黙っているミナム・・・
「じゃぁ・・ミザキが・・カーネルを・・・」
フトーは頷いた。そして、ミナムの肩を叩いた。
「そういうことじゃ・・・どうする・・・ミナム殿・・・」
ミナムはしばらく考え、じっとフトーを見た。
「その話は真ですか・・・」
「わしが見たままを話したのじゃ・・・嘘などつかぬ・・・」
ミナムは、ミヌとソウシを見た。黙って頷く二人。そして、ミナムは決心した。
「行きましょう・・・」
カーネルの仇撃ちか・・・多分、それを完了しても、虚しいんだろうな・・・そう思いながらも
自分自身の気持ちが治まらないミナム・・・それを察知した二人は、ミナムの手をぎゅっと握った・
「やりましょう・・ミナムさん」
「やりましょう・・・ミナム殿」
こうして3人は再びユウ峠へ向かった。しかも、黒騎士団これに同行した。
ミナム達がユウ峠に到着したのは、あだ討ちを決めてから10日目のことだった。