・・・な事件 1
目の前にある小さな白い箱―――――その箱をじっと見つめるミナム・・・・
カイン城を落としたミナム達は、城をクスーキに任せ、ハン城に戻っていた。そして、ミナムは部屋でひとり机の上におかれた白い箱を見つめては、じっと自分の手をみつめていた――――するとあの時の感触がよみがえり、目の前で崩れ落ちる杉山の姿を思い出し、頭を抱える姿がそこあった。そんなミナムもかなりの重症を負っていた。友人をあやめたミナム――――ミナム自身まだ生きることに、生きようとしている自分の姿が自らの行いに対して後悔となって襲ってきた。そんなミナムの元へソウシがやって来た。
「ミナム殿・・・」
「・・・・・・」
ミナムの様子を見たソウシは、少しため息を付いた。そして、ミナムの肩に手を掛け、座り込み下を向くミナムの前に座って、ミナムの目を見た。目が死んでいる――――そっとしてやるしかないのか?いや・・・ソウシはミナムをゆすって大声を上げた。
「ミナム殿!!!」
「あ・・・ソウシ殿・・・」
ようやく反応したミナムはため息交じりの声を発してソウシの方へ顔を向けたー―――その顔をじっと見つめるソウシ
「しっかりして下さい!!!」
「えっ?」
ソウシの言葉に動揺したミナムは目を泳がせ・・・・ソウシと視線を合わせようとしなくなった。そして、大きくため息を付いた。
「あなたらしくない・・・」
「どこが?私らしいのですか?この手で友人を殺した私が・・・私らしいのですか?」
ミナムはそう言うと再び俯き、椅子の袖に左肘を着いていた手で自分の顔をわしづかみにして数回顔を横に振った。
そして、こう漏らした。
「頼む・・・一人にしてくれ・・・」
「そうですか・・・しかし、これは忘れないでください・・・これは戦争なのですぞ・・・殺すか・・殺されるか」
ソウシのその言葉に対してミナムが叫んだ。
「やめてくれ。戦争なら何をしてもいいのか?」
パシーン!!
部屋に乾いた音が鳴り響いたソウシの右手がミナムの頬を叩いたのだった。はたかれた頬を押さえソウシを睨んだミナムの目に映ったのは、叩いた手をぐっと握り締め、その手を見つめるソウシの姿だった。やがてソウシはミナムの方を見た。その目にはかすかに涙が浮かんでいたが、その眼力はミナムを圧倒した。
「何を言ってるのです!!ミナム殿!友人を手に掛けたのはあなただけと思っているでしょう。」
「えっ?」
「あなただけが悲劇のヒーロにでもなっているつもりでしょう!!いいですか私もあなたと同じなのです。今回の戦いでトリニィと戦う中、2番隊の数名を殺している。中には黒騎士団で私を慕ってくれたものもいた。」
ソウシの言葉はミナムにとっても意外だった。心で何度も謝るミナムそしてようやく言葉が口からこぼれてきた。
「すまん・・・」
「えっ・・・」
「すまない・・ソウシ殿・・・けど・・」
「けど・・」
「もう少し・・・時間をくれ・・・」
そう言ってミナムは頭を抱えうなだれた。その様子を見たソウシは部屋を出た。するとそこにミヌが立っていた。彼女は両手で食事を持ってじっとしていた。待っていたのか?それとも・・・・そう思っているとミヌが話し始めた。
「ミナムさん・・・どうでした?」
「まだ・・・無理みたいだ。」
「そう・・・」
そう呟いて、俯くミヌ――――私じゃどうにもならない。そう思っているとソウシはポンとミヌの肩を叩いた。
「ミナム殿を頼む・・」