出陣前夜
ハン城とカイン城の睨み合いは、3ヶ月に及んだ。この間カイン城には、トリニティも到着し、出陣が可能な状態となっていた。しかし、前に起こったユウ城の大爆発とユウ街道の陣へのミナム達の突撃により、兵力の3分の1を失った。コウリクとチョウハは、新たな戦力であるトリニティとオスギを向かえ、出陣準備をしていた。
「トリニティ殿がかなり遅れましたな。」
カイン城に入ってくるトリニティを先頭に30名の黒騎士達を天守閣からみているコウリクは、不安げに言った。その言葉に、チョウハもため息交じりに
「やっと着いたと言う感じですよ。本当に・・・」
「いつグレース軍が動くかで、この数ヶ月ひやひやもんだったよ。」
「確かに・・・」
「ところで、トリニティ殿は、何故遅れたのか?」
「怪我とか・・」
「怪我だと・・・」
「ダイズ沖海戦で怪我をしたとか。」
「そうか・・とりあえず、戦力はこれで補充できたな。」
「まぁ・・・オスギとトリニティ率いる黒騎士団2番隊・・・ハン城には、ミナムとソウシ率いる黒騎士団3番隊・・か」
「戦力的には、我が方の兵士を考えると奴らが進軍しなかったことで、やっとこちらに勝機ができましたぞ。」
「そうだな・・・」
ハン城では、驚きの声が上がっていた。
「ミ・・・ミナム殿・・・今なんとおっしゃいました。」
「明日、俺が先頭で出陣する。いいな・・・ミヌ・・クオン」
「はい・・」
ミナムの言葉に呆然と立ち尽くし開いた口をそのままにしているヒョウドウ・・・ミナムは視線を一瞬
ヒョウドウに向けた後、こう言い放った。
「今のままだと、いずれこちらが不利になる。現に兵士達の疲労もピークに来ている。」
ミナム達も予想をしていたが、これまでの長期戦で兵士達の疲れもピークに達しているのも確かだった。それは、カイン城で迎え撃つミナム達も同じだろう。そう思ったミナムは
「だから明日、カイン城を一気に攻める。」
前にすっと出てきたソウシ
「ならば、私も行こう。」
「ソウシ様まで・・・」
ヒョウドウはため息を付いて、黒騎士団の方を見た。視線が合うたびに頷く騎士達、その光景を見て両手を挙げ、頭を2,3回振ってもう少し頭のいい奴はいないのか?そう思いつつも振り返り黒騎士団に向かって叫んだ。
「3番隊 出陣じゃ!!!」
「オオーーー!!!」
城内はどよめいた。
「その前に、2千名ほどハン城へ援軍を頼まないと、」
作戦は、こうであった。ミナム達部隊がカイン城へ進軍を始めると同時に足止め岩からハン城へ援軍2千を送ってもらう。ただそれだけだった。はっきり言って、ミナム達の特攻でどこまでやれるかが勝利の決め手だった。
こうしてカイン城攻防戦が始まった。