ミナム再び飛ぶ!!
「将軍!!ハン城に動きが!!」
コウリクの元に第一報が入ってきた。コウリクは、ユウ峠へ通ずる街道沿いの出城の一つカイン城に陣をおいていた。本来であれば、この街道を進み、足止め岩を超えれば、ユウ城、最後の関門、ユウ峠の関、そこを突破すれば、グレースに進入できる。これまで坂上の前にユウ城はなかなか落ちなかった。そして、出城を一つずつ攻略し、ここまでやってきた。しかし、ユウ城陥落寸前にカクサンともども八千名の兵を失い、足止め岩では敗北、その知らせはコウリクを焦らせた。そのときに入ってきた報告がハン城に動きがありだった。
「それで?」
「ミナム達に破壊された陣の方へ出陣を確認」
「すぐに」
「そ・・それが・・」
「どうした?」
「すぐに撤退したそうです。」
その報告に首をかしげるコウリク、そこへ参謀の一人であるトンイが話し始めた。
「単なる時間稼ぎじゃ・・・」
「報告によりますと、その時、何か飛び出したらしい。」
「飛び出したって?」
「は・・城の中から何か飛び出したように見えたそうです。」
「どういうこでだ?」
少し前、ミナムは、準備済ませた。その姿は左手に盾を持ち背中にミヌを背負っていた。
「ミナム殿、頼みましたぞ」
「まかしておけ」
その光景を見て、首をかしげるヒョウドウ。一体何が始まるんだ?
「ミナム殿?これは?」
「今から飛ぶから」
「飛ぶって?どうやって」
「まぁ・・見ててください。ところで、ヒョウドウ殿の方は、大丈夫か?」
「それは・・任せてください。」
この光景を見ていたソウシは、ミナムの肩を叩いた。
「ミナム殿・・・」
とミナムを見つめていると知らず知らずミナムに近づいていた。すっとこの間の光景がよみがえる。左手に持っていた盾を少し持ち上げた時、ミナムはソウシの方を振り向いた。そして、ミヌがよそを向いた隙に、盾に隠れてミナムにさっとキスをした。
「ご武運を・・・」
ソウシは、そう言ってポンとミナムの肩を叩いた。
「ソウシ殿も、頼みましたよ。」
「任せておけ」
「クオンもな」
「おう」
「では、行きます!!」
そう言って、ミナムは、ジャンプした。それは、一瞬の出来事だった。ミナムは先程の言葉を残し、目の前から消えた。少なくともヒョウドウ達には、そう見えた。
「み・・ミナム殿は?」
「あそこだ。」
ソウシが指差す方を見たヒョウドウの目には、小さな点がかすかに見えた。
「ま・・まさか・・・・一瞬で・・・あそこまで」
「そうだ・・・じゃ・・俺達の出番だ。思う存分暴れてやる。」
カイン城のコウリクには、次々と戦況が入ってきていた。
「ハン城部隊がすぐに撤退」
「追撃せよ。」
「将軍、ユウ街道に向け、敵が進軍」
「直ちに、反撃せよ・・」
「そ・・・それが・・・」
「それがどうした?」
「敵は、たったの2名・・」
「はぁ・・・血迷ったのか?」
「申し上げます。前衛の一部が先程の2名によって壊滅。」
な・・なに?一体どういうことだ?何が起きているのだ?嫌な胸騒ぎがする・・ユウ街道の陣は、ユウ峠側とハン城と道が交わる場所の少し山側に位置している。カイン城から増援をだすまでも・・そう思った時、驚愕の一方が入ってきた。
「将軍!!ユウ街道の陣が・・・陣が・・・」
「陣がどうした?」
「陥落しました。」
「えっ?どういうことだ。?」
それは、一瞬の出来事だった。ユウ街道の陣の防空魔導士達が、空を見た瞬間、はるか上空から強烈な衝波が降り注いできた。そして、ドスンと大きな地響きと共にゆれと衝撃波が陣の中央から発生した。衝撃波が炸裂し陣地内にいる兵士たちに襲い掛かった瞬間、その中心から幾多の衝波が陣地内を駆け巡り、ユウ街道の陣は崩壊した。慌てて逃げ出す兵士たちだったが。次の瞬間、ハン城側から攻撃を受けた。生存者はカイン城へ逃げ伸びた兵は半分の約二千名にも満たなかった。
「い・・一瞬で二千もの兵を失っただと・・・」
ま・・・まずい・・・コウリクは、嫌な予感がした。そして、
「すぐにすべての陣を引き払い、カイン城に軍勢を集結させよ。」
「待ってくだされ・・・包囲網は、ほぼ完璧です。逆に今総攻撃をすれば、勝てましょうぞ。」
「いや、将軍のおっしゃるとおりです。彼らの戦力は未知数です。たった2名で前衛千名を負かしたのを考えると、各陣の戦力は、約二千名、しかも一番戦力があったユウ街道の陣は、この二名と何者かによって、陥落してます。今、逆に個別攻撃をされては、損害が大きくなるばかりです。」
コウリクはため息を付いた。
「そうだな・・・全軍に撤退命令を速やかに、カイン城に集結せよ」