ユウ城・・・陥落1
数十本という黒い煙をあげ、一部は炎も――――苦しみもがくユウ城の姿が目の前にあった。
そして、ミナム達が向かう方向と逆方向に脱出を図っている兵士達の姿が・・・そして、道端には
もう動きの取れない遺体がそこらに散らばっていた。
「遅かったか・・」
ミナムの一言目がこれだった。ミナム達は2000名の兵を引き連れ京を出発して3ヶ月、ユウ城が見えるユウの関で待機していた。
ユウ城に伝令を飛ばしていた。ユウ城は陥落寸前・・・それは目の前を見ればわかっていた。その時だった。戻ってきた伝令が
「今、ユウ城が陥落したと。坂上大将がまもなくここに来れれる・・・」
伝令が言う間もなく、陣の中に坂上大将が入ってきた。
「貴殿がミナム殿か・・」
「その通りですが・・・失礼ですが。あなたは」
「申し送れましたな。坂上田次郎と申します。」
「これは、はじめましてミナムと申します。これからよろしくお願いします。」
ミナムが頭を下げると坂上は一瞬目が手になったがガハハと笑い始めた。
「面白い御仁だ。ところで兵はざっと2千というところですな。」
「ええ・・まぁ・・ところでユウ城はどうなっているのですか」
坂上はユウ城の方を振り向いてしばらく黙っていた。そして、ミナムの方を見ると
「あのざまだ・・5つある出城のうちの4つは陥落した。そしてユウ城もいつまで持つかわからん。ミナム殿はいかかかな?
わが軍は、ここから先のコレイ城に向かうが」
「ちょっと待ってください。まだ陥落したわけじゃ・・」
「そうだが・・・」
「ところで、まだ落ちていない出城とは?」
「ハン城だ。あそこは黒騎士団が守備に当たっている。」
「坂上大将!!それは、真か?」
ソウシは驚き声を上げた。ソウシに気付いた坂上は頭を下げた。
「これは・・ソウシ殿・・・真にすまぬことを・・・」
「なぜです・・」
「援軍がおくれぬのだ・・・」
「ところでハン城とは?」
「これを見てください。」
そう言って、坂上は地図を広げた。現在、ギオンとグレースを分けている南北に伸びるユウ山脈
ユウ山脈のほぼ中央にユウ峠という、唯一超えることが出来る峠がある。ユウ関はここにあった。
そして、ユウ関から東へ突き出たユウ山の上に立つのがユウ城・・・そこから5本の頂きが伸び
その突端に出城が有していた。そして、このユウ峠からへ通じる街道の延長戦上にハン城はあった。
ミナムはまずハン城を指差した。
「坂上殿、この城はまだ落ちてないのですが。」
「そうだが・・」
「このルートがあるのになぜ?」
ハン城とユウ峠の街道を指差すミナムに、坂上は、ハン城の周りを指差し
「このようにすでに取り囲まれております。」
「で?ユウ城まで?」
「今は、このルートを残して、ほぼギオンに落ちておる。」
坂上は地図上でユウ城から現在位置をなぞった。それを見たミナムは、
「ユウ城までどのくらいですか?」
「馬で約2時間というところだ。」
「そうですか・・で・・どのくらいもちますか?」
「正門がすでに破られている・・・今日いっぱいもつかどうか・・しかし、もうこんな時間だから総攻撃は明日かと・・」
ミナムは地図をじっと見ていた。そして、正門から本丸までのラインを見ていた。そして、そこを指差し
「ここは正門から直に本丸に行くのではないようですね。」
「その通りだ。ここは山を利用した弾劾になっていて、まっすぐあがって来れないようになっている。」
「そうすると明日の総攻撃で最初の部隊が本丸を占拠すると怒涛のごとく残りの部隊が入ってくるでしょうね。」
「そうだが?」
ミナムはソウシのほうを見て、
「ソウシ殿」
「なにか?」
「何か人の変わり見ないな事をできますか?」
ミナムの一言に頭をかしげるソウシ
「どういう意味だ?」
「なにか人のようなものと言うか、何か魔法で」
「マリオネット?」
そう言ってミナムの横に座ったのはミヌだった。
「マリオ?」
「ちがう。マリオネットよ。」
ミヌはここぞとばかりにミナムに寄り添った。
「で・・・マリオネットをどうするんだ。」
ソウシが口を挟んできた。
「撤退するならそれを身代わりにと・・・」
「身代わりはいいけど、戦うことも出来ないし。やられるとすぐ紙切れになるぞ。」
「紙切れ?」
「そう・・マリオネットってこのように人型の紙に魔法をかけるだけのものよ。だから・・ただ立っているだけだし。何もできないわ」
「だったら尚更だ。今からこの付近ある遺体をある程度をユウ城へ運んでほしい。そこへそのマリオネットをおいておく。
そして、できる限り・・・ここまで撤退させる。」
その言葉に驚いた坂上が
「全軍を撤退せよと」
「その通り。そして、ここある火薬を城の床下においておく・・・」
「これは?」
「そう・・大筒用の火薬だ。敵が占拠してしばらくしてから。ミヌの雷撃で爆破する。」
「それは、妙案ですな・・・では、早速・・」
そして、翌朝を迎えた。