ダイズ沖の修羅場 その2
逃げるギタの海賊船の前に雲霞の如く海賊船があらわれた。
「せ・・・船長!!」
そう叫ぶ部下の指差す方を見て、慌てふためくギタの姿がそこにあった。
「なんじゃ~!!」
「ルーシー様の船です。」
しかし、部下の次の一言でギタは、しばらく固まってしまっていた。まさか大海賊ルーシーが現れるとは思ってもみなかったようだ。未だにギタは固まっている。
「せ・・・船長?」
呆然としているギタを見た部下がその様子に不信感を抱いていると
「は?・・・へ?ルーシー様?」
この言葉の後、約1分・・・ギタは固まっていた。ギタの頭の中はこうだった。ルーシー様が来れば、あの海軍どもと戦いになるに違いない。その隙に逃げれば助かる。まだ固まっているギタに部下が声をかける。
「ギタ様!!」
「は・・・ははは。助かったぞ!!」
そこには、ルーシー海賊団の船団を見て安堵の表情を浮かべるギタだった。
「ニシシ・・・反撃開始である!!」
ギタの船の前の海賊船を見つけたベッツィー達は思わぬ敵の出現に戸惑っていた。
「くそ・・・なんてこった。何故ルーシーがここへ?」
「艦長・・・あれを」
副長がある方向を指差した。その方向をベッツィーが見るとそこには、カイソンの船がいた。
「艦長・・全速で右転し、ギタの船に砲弾をぶち込みながら、あの船の来た方へ抜けましょう」
「そうだな・・・」
副長の言うことに頷いたベッツィーは、直ちに司令を出した。
「全艦、5分後、全砲門を右転しつつ一斉照射、目標ギタの海賊船。」
そう言うとベッツィーは超弩弓を手にした。その光景を見た副長がベッツィーを引き止める
「艦長自ら攻撃に参加されなくても」
するとベッツィーは、ルーシー海賊団を指さしこう言った。
「目の前にルーシーがいる。万が一に備えて私も攻撃に加わる。副長。操船を頼む」
「わかりました。それでは」
「それでは?」
「あそこの3名にも手伝って頂いた方が良いのでは?」
そう言う副長が指差した先には、まだ内輪揉めをしていたミナム達の姿があった。
まだやっていたのか・・・溜息を付いたベッツィーは一言漏らした
「そうだな・・」
一方、助かったと思ったギタであったが、ルーシーの伝令を聞いて驚いた。
「ギタよ。何故、逃げる」
「へ?」
「何故、仇を取らんのじゃ?」
その伝令に口をポカンと開け右の鼻から鼻水を垂らし、驚きの表情で固まったギタは
ま・・・まさか・・・あいつらと戦えと?
「ルーシー様。お助けを!!」
そう叫んだら、ルーシーから返答が帰ってきた。
「味方がいるだろう1隻、相手はたった3隻だろう?」
ギタはその言葉に絶句した。
うそだろう・・・おい・・・絶対勝てるわけない・・
「あの船は裏切り者のカイソンだ。あいつのせいで、スクィニー殿を亡くしたのだ。」
その声はカイソンまで聞こえた。怒りに震えるカイソンは叫んだ。
「ギタ!!貴様こそ裏切り者だ!!!親父の仇をここで取らせてもらうぜ!!!」
その叫び声はルーシーにまで聞こえた。そして、帽子を深くかぶり目を隠した。
やはり・・そうであったか。
かつて、ルーシーに正面から戦いを挑んできた奴がいた。
そいつの名は、スクィニー・・・
海賊船同士の戦いでは戦力的にほぼ互角、普通に戦えば結果はわからなかった。しかし、奴は、ルーシーと一対一の戦いを挑んできた。その戦いで魔力が勝ったルーシーが勝ち、スクィニーはルーシーの傘下に下った。
そうか・・そうだったのか
スクィニーは味方の裏切りで死んだのか・・・
そう思ったルーシーだった。