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プロローグ


 薄暗い玉座の間で、魔王はうんざりしたようにため息を吐いた。

 宙に浮かぶ魔力盤には、無数の人間たちのステータスが光の粒となって飛び交っている。


「……そろそろ、前回のゴミ共が死んでから十五年か」


 かつて、数百年前の魔王城には、数万という人間の大軍が『勇者』を名乗って押し寄せてきていた。

 もちろん負ける気など微塵もなかったが、羽虫のように群がる人間たちをいちいち処理するのは、ひどく退屈で手間の掛かる作業だった。


 だからこそ、魔王はこの『勇者選定システム』を作り上げた。

 自らの魔力で四つの紋様を地上に放ち、それに選ばれた者だけが真の勇者であるという偽りの伝承を人間に信じ込ませたのだ。

 これにより、魔王城に攻めてくる人間の数は「たったの四人」に制限された。


 選定の基準は一つだけ。

 四人の『ステータス合計値』が、魔王が設定した一定の基準を大きく下回ること。

 要するに、絶対に戦力にならない「最弱の四人」をシステムが自動で選び出す仕組みである。

 過剰な期待を背負わされた最弱の勇者たちが、道中のダンジョンや魔王軍の末端にあっけなく敗死する。それを十五年周期で繰り返すだけで、人間たちは勝手に絶望し、大規模な反抗を企てる気力すら失っていくのだ。


「さて、今回の生贄はどんな下等な数値を出してくれるのか」


 魔王が指先を動かすと、魔力盤が激しく回転し、やがて四つの光が抽出された。

 空中に、今回選ばれた四人の『ステータス合計値』が弾き出される。


「ほう……?」


 表示された数値を見て、魔王は口角を歪めた。

 そこにあったのは、過去のどの勇者パーティよりも低い、信じられないほどの最低数値だった。


「素晴らしい。歴代最弱のゴミ共が揃ったようだな」


 魔王は個別のステータスなど見ようともしなかった。合計値がこれほど低いのだ。どうせ四人とも、剣すらまともに振れない農民か何かに決まっていると信じて疑わなかった。


 魔王は満足げに玉座へ深く腰を下ろすと、空中へ向けて無造作に腕を振るった。

 四つの光が、魔王城の天井をすり抜けて人間の住む地上へと飛んでいく。

 今回の紋様の形は――いびつな『四角形』だった。


「精々、人間どもに束の間の希望を見せてやるがいい。愚かな勇者たちよ」


 暗い玉座の間に、魔王の嗤い声が響き渡る。


 この時、魔王は知る由もなかった。

 選ばれた四人のうち、三人が歴史に名を残すレベルの『異常な高ステータス』を持つ天才であったことを。

 そして、残る一人――『シカク』という名を持つ少年の、自己評価の低さと臆病さからくる精神ステータスが『あり得ないほどのマイナス値』を叩き出しており、三人の異常な数値をたった一人で相殺してしまっていたことを。


 致命的なバグを孕んだまま、四角形の紋様は地上の持ち主の元へと降り注いだ。


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