日常のなかの舞踏
俺は今日も掃除をする。この玄関はいつも家族が通る。今日は平日だからニートの俺しか家にいない。ちょうど6月だ。ジメジメしてる。
「はあー。掃除に拘る親だからマメにしとかないとな〜。」
掃除をする。なかなか埃が取れない。箒でようやく取れたのは5分後だった。
「いやー。働いた。働いた。」
ニートになって5年、掃除は板についてきた。そろそろ仕事を探さないと親の圧力は日に日に高まるばかりである。今日なんて、扉の前に置いてあったのは食パン1枚。
「くそー。腹が立ってきた。俺に死ねと言っているのかなー。」
思い出すだけで腹が立つ。
時間は、10時を少し回ったくらいか。そろそろ次のメニューに移らないとな。
玄関掃除が終わったら次は風呂掃除である。
最近、なぜか親からこの風呂掃除は褒められるようになった。
なぜか?その答えは簡単である。魔力を使って掃除をしているからである。
「ふふふ。この力は俺だけのものだ。この世界で俺だけが発見した。俺だけの力。だから俺は働かなくてもこの世界で偉いのだ。フハハハハハ。」
魔力を手からスポンジに流し込む。そして、風呂掃除用の洗剤をつける。そうして、風呂掃除の準備は万端だ。さっそくやるぞ。
この少しついた赤い部分。ここにスポンジを充てる。するとキュウ。キュウ。と音がする。それはまるで森林の中で奏でるクラシックのように俺の耳に届いてくる。
「素晴らしい。素晴らしい。これぞ世界一の職人がやる風呂掃除だ。今日から風呂掃除マイスターと名乗ろうかな。」
ふと窓を見る。朝から雨である。ジメジメとしているのは私たちにとって天敵だ。なぜか。カビが生えてくるからでしょうが。
風呂掃除が終わりいよいよ天国の時間となった。
ゲームである。一日の最低ラインのメニューが終わった。いよいよ進めているゲームの続きに移る。これは私にとって、もはや唯一の生きがいである。
やるのはもちろんロックフロンティアである。プレイヤー数1000万人以上の世界一有名なゲームである。さてヘッドホンをつけて、パソコンの電源を入れて。フフフフフフフフフ。
うん?なにかやることを忘れてないか?俺の危機感センサーが反応している。このセンサーが反応するということは夕方になっていつもどおり親に、特に母親に怒られるということである。
なんだ?なにをやっていない?まず布団は全員分畳んだ。つぎに洗濯機を回し、玄関の掃除をした。そして、天下一品の風呂掃除をした。これで完ぺきなはずである。なのに反応している。おれのセンサーが。
急いで部屋から出る。家の中をパトロールする。よし。よし。よし。違和感の正体。それは、玄関が開けっ放し!
そこから、くーる。きっとくーる。ナメクジの群れ。
「きったねえええええええええええええ。」
ナメクジの群れええええええええええ?なんだこれ?なにがナメクジをこんなに呼び寄せた?
は!
塩だ!塩でこいつらはやっつけられる。塩をキッチンに取りに行く。どこだ?しお?
「あった。こいつをまけば。おれの戦いはゲームの世界に移る。」
おれは走った。玄関にいる宿敵を急ぎ抹殺しゲームの世界へと旅立つために。
「玄関につく。そして、いよいよバトルが。」
レディーファイ!
初手で奴らのコマンドは前進する、が選択された。ということは、おれは塩の計量カップを握るを選択した。そこから、奴らは自分の防御力を信じているがごとく前進を続ける。
おれは、塩を掬い。やつらに撒く。塩は瞬く間に奴らに効果を発揮した。瞬く間に、しぼんでいくナメクジ。一匹。二匹。三匹。どんどん奴らを仕留めていく。フフフフフフフフフ。しかし、ナメクジはここで仲間が減ったことを認識したのか急に変な行動をとる個体が出てきた。なんと触角を器用に使い。逆立ちをしだしたのである。
「え?」
なんだこのナメクジ。いままでこんな個体見たことが無いぞ。ということはこれは新種?発表すれば大金持ち?俺はこの家でのステータスが一気に高くなるのを感じた。
やるぞ!まずは証拠からか!!写真を撮り、学会に発表するぞ!フハハハ!フハハハ!
急いでカメラを探す。カメラを探す。カメラを探す。
見つかったのはガラケー。
今どきガラケーかよー。中身を見ると、いやばあちゃんの写真じゃん。ばあちゃんが、知らないじいさんとのツーショットを撮っている!!これは何?え?よくわからん。
「これはいよいよ聞かなきゃいけないことまで増えてしまった。」
これで何かあったらばあちゃんからお小遣いをもらえる。やべー。俺天才じゃん。
ニート生活をなんとしても防衛するしかない。
は!それよりもナメクジどうなった?
玄関に戻ってみると。
ナメクジが逆立ちからのバック転を決めていた。周りのナメクジは拍手喝采。審査員が審査をしていた。
「いよいよどんな種類なのかな?」
あ。あれかな。テレビの見過ぎなのかな?ナメクジが窓に張り付いてテレビを見て体操でも覚えたのかな?
想像しただけで吐きそうになってしまった自分は置いておこう。
どうやって始末をつけようかな。よし。ガラケーで写真を撮り。俺が16歳の時に見ていた「ア○パ○マ○」のオープニングを流してみよ。
するとナメクジは綺麗に回転して、スタッと着地した。そしてまた勢いをつけてバク宙からの最後は「シ○イ」を決めてそのナメクジが優勝を飾ったのだった。
ナメクジたちは何事もなかったかのように帰っていった。
その後ナメクジの後が玄関中を覆い尽くし俺はいつも通り母親に怒られた。そして、次の日から朝ごはんがもやしになった。




