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無能と追放された俺、捨てられた失敗魔法を回収していたら、いつの間にか世界の魔法体系が書き換わっていた件  作者: zero


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19/21

王城試験、条件は揃えられるか

王城の地下。


 そこに広がるのは、魔法実験専用の大広間だった。


 天井には制御水晶。

 床には多重術式。


 失敗を前提に作られた場所。



「本当に、ここで?」


 研究官の一人が、緊張した声で言う。


「問題ない」


 ハルディアが、即答する。


「むしろ、最適だ」



 俺は、広間の中央に立っていた。


 周囲には、研究院の魔法使いたち。

 王城関係者。

 軍務省の観測官。


 視線は、重い。



「試験内容は単純だ」


 ハルディアが、告げる。


「高出力魔法の安定化」


「通常、失敗率は三割を超える」


「成功すれば」


 一瞬、言葉を切る。


「理論を書き換える必要がある」



「やることは、同じです」


 俺は、そう言った。


「発動者は?」


「彼だ」


 若い魔法使いが、前に出る。


 手が、震えていた。



「大丈夫ですか?」


 俺が聞くと。


「……正直、怖いです」


「普通です」


 それだけで、彼の呼吸が少し落ち着いた。



「では」


 俺は、目を閉じる。


 魔力を、流す。


 形は作らない。

 術式も描かない。


 空間を、読む。



 歪みは、明確だった。


 魔力の渦。

 床の術式の干渉。

 天井水晶の過剰反応。


 どれも、ほんの少し。


 だが、それが失敗を呼ぶ。



「……条件が、悪い」


 呟く。


「え?」


「直します」



 俺は、歩く。


 一歩ずつ。


 床に、触れる。

 壁に、触れる。

 空気を、整える。


 観測官たちは、息を潜める。



「何をしている?」


「……分からない」


 それが、正直な反応だった。



「準備、完了です」


 俺は、下がる。


「発動してください」



 若い魔法使いが、詠唱を始めた。


 高出力火炎魔法。


 詠唱が、終わる。


「――発動!」



 炎が、立ち上る。


 だが。


 暴走しない。


 揺らぎがない。


 ただ、設計通りの火柱。



「……成功」


 誰かが、呆然と呟いた。


「魔力消費、二割減!」


「反動、ゼロ!」


「術式損耗、なし!」


 報告が、次々と上がる。



「もう一度」


 二度目。


 三度目。


 結果は、同じ。


 失敗は、起きなかった。



「……これは」


 ハルディアが、静かに言う。


「奇跡ではない」


「再現可能な、技術だ」


 会場が、ざわめく。



「だが」


 軍務省の観測官が、口を挟む。


「本人がいなければ、成立しない」


 視線が、俺に集中する。



「……一つ、言っておきます」


 俺は、静かに言った。


「これは、“私の技術”ではありません」


「条件が、元から存在していた」


「ただ、見落とされていただけです」



「誰でも、できる?」


「理論化できれば」


「時間は、かかるでしょうが」


 その言葉は、希望でもあり、脅威でもあった。



「王城としては」


 ハルディアが、まとめる。


「この件を、極秘扱いとする」


「拙速な公開は、混乱を招く」


 異論は、出なかった。



 試験は、成功。


 だが。


 成功したからこそ、

 問題は大きくなった。



 広間を出る時。


 俺は、誰かの視線を感じた。


 研究官でも、軍人でもない。


 別の――

 もっと静かな目。



 世界は、動き始めている。


 もう、止められない。


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