表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能と追放された俺、捨てられた失敗魔法を回収していたら、いつの間にか世界の魔法体系が書き換わっていた件  作者: zero


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

王都は意見で割れる

王立魔法研究院・会議室。


 円卓を囲む研究官たちの表情は、硬かった。


 机の中央には、ローデン村視察の報告書。

 簡潔だが、内容は重い。



「――以上が、現地で確認した事実です」


 ハルディアの説明が終わる。


 一拍置いて、年配の研究官が口を開いた。


「信じがたいな」


「魔法は、理論で成立する」


「“前段階の調整”など、聞いたことがない」



「だから問題なのです」


 若い研究官が反論する。


「結果が出ている」


「理論が追いついていないだけです」


「理論が崩れる可能性もある」


 別の声が割り込む。


「それは、国家の基盤だぞ」



「失敗率ゼロ」


 ハルディアは、淡々と数字を示す。


「魔力消費、三割減」


「事故率、観測期間中ゼロ」


「これを“無視”する理由は?」


 沈黙が落ちる。



「軍部は、どう見る?」


 話題が、切り替わる。


 端に座っていた男――軍務省の代表が、口を開いた。


「正直に言おう」


「魅力的だ」


「前線での魔法事故は、死傷に直結する」


「だが」


 一瞬、言葉を選ぶ。


「制御不能な個人技術は、危険でもある」



「囲い込む?」


「失敗した場合、反発を招く」


「排除?」


「失敗した場合、取り返しがつかない」


 誰も、軽々しく結論を出せなかった。



「……問題は」


 老研究官が、低く言う。


「彼が“魔法使いではない”点だ」


「術式も、詠唱も使わない」


「理論の外側にいる」


 それは、恐怖だった。



「理論化できるか?」


「現時点では、不明」


「再現性は?」


「条件が整えば、可能性はある」


「だが、本人抜きでは……」


 会議室の空気が、さらに重くなる。



「つまり」


 誰かが、言った。


「彼が“いなくなれば”、終わる技術だ」


 その瞬間、空気が凍る。



「それは、言い過ぎだ」


 ハルディアが、即座に制する。


「彼は敵ではない」


「むしろ、協力的ですらある」


「だが、国家は“善意”だけでは動けない」


 軍務省の男が、静かに言う。



「監視を強化する」


「非公式の協力関係を模索」


「同時に、理論の抽出を進める」


 議論は、現実的な方向へ流れる。



「王城には?」


「まだ、報告段階です」


「だが」


 ハルディアは、目を伏せる。


「時間の問題でしょう」



 会議の終盤。


 一人の研究官が、ぽつりと言った。


「……彼は、何を望んでいる?」


 誰も、即答できなかった。



「名も、地位も、権力も」


「求めていないように見える」


「だからこそ」


 老研究官が、呟く。


「最も、扱いづらい」



「結論は、出た」


 議長が、告げる。


「現状維持」


「だが、動向は逐一把握」


「彼が、何かを“直し続ける限り”」


「我々は、目を離さない」



 その頃。


 ローデン村。


 俺は、壊れた水汲み装置を直していた。


 ただ、それだけ。


 だが。


 遠く王都では、

 俺の存在を巡って、会議が続いている。



 世界が、ざわつき始めた。


 それを知る者は、まだ少ない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ