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無能と追放された俺、捨てられた失敗魔法を回収していたら、いつの間にか世界の魔法体系が書き換わっていた件  作者: zero


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13/21

小さな実証は、世界を疑わせる

ローデン村の外れ、小さな空き地。


 そこに、簡易的な結界が張られていた。


「ここなら、影響は限定的です」


 エルヴァンはそう言って、杖を地面に突き立てる。


 周囲には、村長と数名の村人。

 そして、少し離れた位置にリィナ。


 全員が、静かに様子を見守っていた。



「今回の実証は、極めて単純です」


 エルヴァンは、淡々と説明する。


「通常の水生成魔法を使います」


「その前に――」


 彼は、俺を見る。


「あなたに、例の“前処理”をお願いしたい」


「分かりました」


 俺は、空き地に歩み出た。


 やることは、いつもと同じだ。



 地面に、魔力を流す。


 だが、形は作らない。

 術式も、描かない。


 ただ、整える。


 水脈の向き。

 地中の空洞。

 魔力の通り道。


 ほんのわずかな歪みを、元に戻す。


「……これで」


 それだけだった。


 派手さは、ない。



「では、通常通り発動します」


 エルヴァンは、詠唱を始めた。


 初級水生成魔法。

 学生でも使える、ごく一般的な術だ。


「――発動」


 光が、瞬いた。


 そして。


「……!」


 水が、溢れ出した。


 だが、それは――

 異様なほど、安定していた。



「魔力消費が、三割減っています」


 エルヴァンの声が、わずかに震える。


「水量は、規定値通り。

 乱れなし。反動なし」


 ありえない。


 普通なら、多少の誤差が出る。

 それが、“当たり前”だった。


「もう一度、やります」


 二度目。

 三度目。


 結果は、すべて同じ。



「……成功率、百パーセント」


 エルヴァンは、呆然と呟いた。


「失敗が、存在しない……」


 リィナが、静かに口を開く。


「つまり」


「はい」


 エルヴァンは、深く頷く。


「あなたが“何もしないように見える工程”が」


「魔法の成否を、決めている」



 村人の一人が、恐る恐る聞いた。


「それって……

 今までの魔法は、間違ってたってことか?」


 エルヴァンは、少し考えた後、答える。


「間違ってはいません」


「ただ――」


 視線を、俺に向ける。


「未完成だった」


 その言葉が、重く落ちた。



「もし」


 村長が、低い声で言う。


「これが広まったら?」


「世界が、混乱します」


 エルヴァンは、はっきり言った。


「魔法学は、書き換えられる」


「多くの魔法使いが、

 “自分は失敗していた”と知る」


 そして。


「あなたは、その原因になる」


 視線が、再び俺に集まる。



「……それでも」


 俺は、静かに言った。


「やることは、変わりません」


「必要な場所で、必要なだけ」


「それ以上でも、それ以下でもない」


 エルヴァンは、ゆっくりと息を吐いた。


「……だからこそ、危うい」


 だが、その顔には、確かな敬意があった。



 実証は、記録されなかった。


 公式な報告も、行われない。


 だが――

 見た者の認識は、確実に変わった。


 魔法とは、力ではない。


 条件だ。


 その前提が、静かに崩れ始める。



 その夜。


 リィナが、ぽつりと言った。


「あなたは、世界を壊すかもしれませんね」


「……そうでしょうか」


「ええ」


 だが、彼女は続ける。


「でも、今の世界は、

 少し歪みすぎている」


 俺は、答えなかった。


 ただ、星のない空を見上げる。


(直すだけだ)


 壊すつもりは、ない。


 それでも――

 変わってしまうのだろう。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


次話から、世界側がこの理論に気づき始めます。

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