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無能と追放された俺、捨てられた失敗魔法を回収していたら、いつの間にか世界の魔法体系が書き換わっていた件  作者: zero


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10/21

評価は、静かに書き換えられる

冒険者ギルド本部の掲示板は、朝から人だかりができていた。


「おい、見たか?」


「例の中堅パーティだろ?」


 ざわめきの中心に貼られているのは、依頼達成率の更新表だ。


 そこにある名前を、レオンは見つけた。


「……」


 一瞬、理解できなかった。


 自分たちのパーティ名が、一段下に移動している。


「レオン……」


 セリアの声が、かすれる。


「ランクが……」


「下がった、な」


 レオンは、低く答えた。


 昇格でも降格でもない。

 ただ、評価値が下がった。


 それが、いちばん堪えた。



「正式記録だ」


 受付の男は、淡々としていた。


「直近十件の依頼。

 成功は四、失敗三、再受注三」


「再受注は、条件変更が……」


「記録上は、失敗扱いです」


 それが、ギルドのルールだった。


「以前は?」


 ミアが、小さく聞く。


「九割以上、成功でした」


 その言葉が、重い。


 誰も、反論できなかった。



 酒場。


 以前なら、祝杯を挙げる場所だった。


「……俺たち、弱くなったのか?」


 ガルドが、ジョッキを置く。


「敵は、変わってない」


 セリアは、静かに言った。


「変わったのは、私たち」


 その視線は、空席へ向いている。


「……あいつがいた時は」


 言葉が、途切れる。


 誰も、続きを言えなかった。



「原因分析をお願いします」


 数日後、ギルドから正式な通達が来た。


「再発防止のため、内部検証を」


 紙には、そう書かれている。


 それは、一流扱いではなくなった証だった。


「……こんなもの、前は来なかった」


 レオンは、紙を握りつぶす。


「当たり前だ。

 失敗しなかったからな」


 ガルドの声は、苦い。



 検証は、容赦なかった。


「魔力循環、安定度低下」


「補助行動の欠如」


「事前準備不足」


 並ぶ項目は、どれも地味だ。


 だが、確実に戦闘を支えていた要素。


「……補助?」


 セリアが、眉を寄せる。


「誰が、やってた?」


 沈黙。


 答えは、分かっている。


「記録に、名前は?」


「……ない」


 書類係が、首を振る。


「当時は、不要と判断されていました」


 その言葉が、刃のように刺さる。



「つまり」


 ミアが、震える声で言う。


「私たちは……

 “見えない役割”を、切り捨てた」


 否定できなかった。


 派手じゃない。

 成果も、数字に出にくい。


 だが、それがなくなった瞬間、

 全体が崩れた。



 一方、別の報告書。


「辺境ローデン村。

 依頼達成率、百パーセント」


「術者名?」


「未登録。

 個人契約扱いです」


 報告官は、首を傾げる。


「奇妙ですが、問題はありません」


「成果は?」


「どれも、恒久的です」


 上司は、しばらく黙った後、言った。


「……追跡は?」


「慎重に、です」



 夜。


 宿の部屋で、レオンは一人、座っていた。


 机の上には、古い記録。


 成功ばかりが並ぶ、過去の報告書。


(あの時……)


 追放を決めた日。


「失敗魔法しか使えない役立たず」


 そう、言った。


 だが、本当に失敗だったのは――

 どちらだったのか。


「……戻れない、な」


 呟いた声は、誰にも届かない。



 その頃、辺境。


 俺は、村人と一緒に、収穫の準備をしていた。


「今年は、助かったよ」


「ええ」


 それだけで、十分だった。


 評価は、紙の上で変わる。

 だが、結果は、土地に残る。


 それが、今の俺には大事だった。

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