追放された俺と、誰も欲しがらない魔法
「――お前は、もうこのパーティに必要ない」
ギルドの簡素な会議室で、リーダーである剣士の口からそう告げられた瞬間、俺は一瞬、自分が何を言われたのか理解できなかった。
「理由を、聞いてもいいか?」
そう尋ねると、魔法使いの女が小さく鼻で笑った。
「理由? 決まってるでしょ。あんたの魔法は全部失敗作だからよ」
失敗魔法――それが、俺のスキルの正式な分類だった。
火球を放てば、爆発せずに熱だけが残る。
防御魔法を張れば、衝撃は防ぐが見た目が地味すぎる。
強化魔法は、数値が表示されないせいで効果が分からない。
派手さも、分かりやすさもない。
結果、俺の魔法は「役に立たない」と判断された。
「これ以上、足手まといを連れていくわけにはいかないんだ」
剣士は視線を逸らしながら言った。
俺は反論しなかった。いや、できなかった。
確かに、戦闘後の評価で俺が褒められたことは一度もない。
数字が出ない魔法は、成果として記録されないからだ。
「装備と報酬の分配は、今日までで打ち切りだ。悪いが、これで終わりだ」
それで、五年間所属していたパーティから、俺は追放された。
⸻
ギルドを出たあと、夕暮れの街を一人で歩く。
怒りは、不思議と湧いてこなかった。
代わりに、胸の奥に小さな安堵があった。
(……やっと、自由になれた)
俺はずっと、彼らの期待に応えようとして、失敗魔法を「普通の魔法」に近づけようとしていた。
だが、本来の俺のやり方は違う。
俺のスキルは――
《失敗魔法回収》
他者が破棄・放棄した魔法効果を回収・再構築できる
説明だけ見ると意味不明だが、要するにこうだ。
誰かが「失敗だ」と判断して捨てた魔法。
それを、俺は拾える。
しかも、重ねて、組み合わせて、保存できる。
火球にならなかった熱。
役に立たないと言われた防御の余剰。
数値化できない強化の残滓。
全部、俺の中に残っている。
(これ、普通に使えばヤバいんだけどな……)
だが、そんなことを言っても、信じる者はいない。
だから俺は黙って、拾い続けてきた。
⸻
翌日、俺は王都を離れ、辺境へ向かった。
理由は簡単だ。
失敗魔法は、王都では邪魔者扱いされる。
誰も近寄らない廃村跡で、俺は試しに魔法を発動した。
「……起動」
回収していた熱、防御、強化。
それらを、何の気なしに重ねただけだった。
次の瞬間――
地面が、静かに溶けた。
爆発はない。
光もない。
ただ、完璧に制御された熱量だけが、地表を削り取っていた。
「……あ」
思わず、声が漏れる。
どうやら俺は、
とんでもないゴミ捨て場を、宝箱にしてしまったらしい。
そしてこの時、俺はまだ知らなかった。
自分が回収してきた“失敗魔法”が、
この世界の魔法体系そのものを、根底から壊す存在だということを。
読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと感じていただけたら、
ブックマークや評価をしていただけると励みになります。




