第157話 番外編 冒険野郎マグガイバーの冒険 その4
街を包む静寂なミッドナイト。
月明かりに照らされて孤独なシルエットが動き出せば、それは、紛れも無くヤツさ。
そう、それがこの俺、「冒険野郎マグガイバー」さ。
よう、また会ったな、最近よく会うじゃねえか。
あんたも、この店のマスターが出すうまいもんに釣られてふらりとやって来たのかい?
辛口の酒を呑むと、うまいもんが食いたくなるよな、今夜も俺の冒険話を聞いていってくれよな・・・・・・
なに? たまにはこっちの話も聞いてくれって? しょうがねーなー、いいぜ、聞いてやるよ、一体何があったっていうんだい?
ふむふむ、・・・なるほど・・・そうかい、・・・なるほどな、惚れた男が姿をくらましたって訳かい、そういやあ、お前さんラルドって奴に逃げられた時もそんな様な事言ってなかったかい・・・って、いてててて!脇腹を抓るなっての!わかった、悪かったよ、あんたにとって切実なんだな。
しかし、何だな、その惚れた男ってのはあれだな、あんたみたいなべっぴんさんを振るなんてよっぽどだな、何か訳でもあったんじゃねーか?
・・・ふむふむ、そうか、何も言わずに消えたのかい、そいつは心細かっただろうな。
まあ、しかし、なんだな、何も言わずにあんたの前から居なくなったって事は、自分の事は諦めてくれって事じゃねーのかい。普通、男が何も言わずに別れる時なんて、大体がそんな感じだと思うぜ。
おいおい、泣くなよ、男も女も星の数ほどいるじゃねえか、また新しい恋でも見つければいいじゃねーか。
・・・なるほど、訳が解らないんだな、こっちだって訳が解らないぜ。まあ、とにかくさ、お冷でも飲んで落ち着きなって。・・・マスター、お冷頂戴。
・・・落ち着いてきたかい、まあ、なんだな、あんたの前から居なくなった奴の事は綺麗さっぱり忘れちまった方がいいんじゃねーかな。酒でも呑んでさ。
おっと、だからと言って飲みすぎはダメだぜ、冒険者は体が資本だろ、ちびちび呑んで忘れちまえよ。
さあ、うまいもんでも食って、もう寝ちまった方がいいぜ。
お、何だ、もう帰るのか?
おい、新しい週が始まる、月曜だ、今度は一体どんな冒険が俺達を待っているんだろうな、・・・楽しみだぜ。