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第130話 一夜明けて





 セレニア城で一夜を過ごし、朝になった。冬の朝は寒い、外には冷たい風が吹いている。だけどスカーレットさんは昨日の夜から帰ってきていない、これは、スカーレットさんに何かあった、と言う事なのだろうか。心配だな、でもスカーレットさんもプロの盗賊シーフだ、自分の事は自分で何とかしているかもしれない。心配ではあるが、そう思う事にする。


朝食の用意が出来ましたとメイドさんが呼びに来たので、2階にある貴族用の食堂へと向かう。食堂には俺が先に来ていて後からジョアンナ様とシスターマリーがやってきた。


「おはようございます」


「おはよう、ジロー」


「おはようございます、ジローさん」


挨拶も済ませ、二人とも席に着いて朝食を食べる、この朝飯もうまい、ふわふわのパンに暖かいスープ、ゆで卵にサラダ、かりかりに焼いたベーコンもうまかった。ご馳走様でした。


「ご馳走様、美味しかったわ」


「ご馳走になりました」


「ご馳走様でした」


朝食を済ませ、ジョアンナ様もシスターマリーもそれぞれ食堂を後にした、二人とも会話は無かった。だけど一緒に朝食を取るのはいい傾向だと思うのだが、俺も部屋に戻る。


部屋に戻ってくると、スカーレットさんが戻って来ていた。よかった、無事に戻ってきたみたいだ。


「ただいま、ジローさん」


「お帰りなさい、スカーレットさん、どうでしたか首尾の方は」


「まあ、何とか必要最低限の情報は入手できたわよ、あいつらなかなか尻尾を掴まさないから骨が折れたわ」


「さすがです」


スカーレットさんは部屋にある水差しの水をコップに入れて一口飲んだ。


「まず、奴等、闇の崇拝者についての事だけど、奴等、相当の数の人員をこの国に送り込んでいるみたいね」


「相当数・・・、ですか」


「ええ、この国の人々の中に潜り込んで目立たないようにしているみたいだけどね、近いうちに、何かデカイ事でもやらかすんじゃないのかしら」


「何でしょうね、この国に潜り込んでいるってのは?」


「わからないわ、それから、ホークウッドなる大物に召喚の宝玉を渡すんじゃないかって噂もあったわね」


「・・・召喚の宝玉・・・ですか・・・」


おそらくだけど、それは未然に防いだと思う、ネモ山での山賊騒ぎの時に山賊の頭目が使った宝玉がたぶんそれだ。あの時の旅の行商人の証言の言う事を信じるならば、その行商人から召喚の宝玉を受け取るはずだったみたいだからな、あんな物騒なモンスターをやり取りするなんて、その大物人物のホークウッドというのは一体何者なんだ。


「それから、公女様が狙われた理由だけど、・・・」


「シスターマリーのことですね」


「何でもこの国の有力貴族達が一枚噛んでいるみたいなのよ、こっちは簡単に情報が入手出来たわ」


「え!? この国の貴族が公爵家の公女を狙ったのですか?」


「正確には上級貴族達、複数の貴族ね、公女様も大変ね、国内の貴族連中に狙われているだなんて」


「ちょ、ちょっと待って下さい、その貴族連中がシスターマリーを次期公爵にまつり上げようとしているのではなかったのですか?」


「さあ? 私に言われても・・・、もしかして妾の子の公女なんていい様に操れるから、盟主として擁立しようって魂胆なんじゃないの、その上で、命を狙われているという既成事実を作って、用済みになったら都合よく排除しよう、ってことじゃないのかしら」


・・・まったく、人の命を何だと思っているんだ。その貴族連中ってのは・・・。


これはシスターマリーのところへ行って、この情報をオブラートに包んで報告する必要があるな。


俺達は早速、シスターマリーの部屋へ向かう。この話をシスターマリーに伝えなくては。シスターマリーの部屋の前まで来て、扉をこんっこんっ、とノックして、返事を待つ。


「・・・どうぞ、お入り下さい」


「ジローとスカーレットです、失礼致します」


扉を開けてシスターマリーの部屋へ入る、シスターマリーは食後の紅茶を飲んでいた、丁度いい、この場で話そう。しかし、その前に・・・。


「すいません、メイドさん、暫くの間席を外してくれませんか」


「・・・申し訳ありません、わたくしどもは公爵家の方々から離れる訳にはいかないのです」


・・・やはり、このメイドさんも貴族側の内通者の可能性がある人だったか、こちらの情報が貴族側に筒抜けなんだろうな、きっと。


「どうしても、ですか」


「はい、申し訳ございません」


・・・仕方ない、それとなくシスターマリーに伝えるか、まずは世間話から。


「どうかしましたか、ジローさん」


「シスターマリー、一応何故俺達がセレニア公国に来たのかを話そうと思って」


「ああ、そうでした、ジローさんに聞きたいと思っていたところです、何故こちらに?」


「はい、実は私たちは、あなたを捜してここに来ました。サラミスの街でシスターマチルダがシスターマリーを捜していたことを知り、俺とファンナで自発的に捜索の手助けをすることになりまして、手掛かりをたどったところここへ行き着いたわけです。


「まあ、私をですか、確かに突然馬車に乗せられてこの国まで連れてこられましたけど、・・・そうですね、確かに誰にも伝えられずにここまで来てしまいましたから」


「ええ、それで情報を得てシスターマリーがこのセレニア公国に連れてこられたのが解ったのです、そして、セレニア公国に着いて、こうして今に至る訳なのです」


「まあ、それはそれは、大変ご心配をお掛けしました、・・・シスターマチルダも心配していましたか・・・」


「ええ、シスターマリー、サラミスの街に帰る事は考えていないのですか」


「勿論、サラミスへ帰りますよ、だけど今はこの国の次期公爵が決まるまでここに居て欲しいとお願いされまして」


「誰にですか」


「この国の貴族の方々からです、とても優しくしてくれたのです。だから私も暫くこの国に留まっていようって思ったのです」


「・・・そうだったのですか」


シスターマリーと話していると扉からこんっこんっとノックの音が聞こえた、誰か来たみたいだ。


「どうぞ、お入り下さい」


「失礼致します」


扉を開けて中に入って来たのは、騎士ヨムンさんだった。


「これは騎士ヨムンさん、どうしましたか」


「は!、公女様、貴族会議で出た決をお知らせしたい、との事ですので、今から議事堂の方まで足をお運び下さいますよう、お願い申し上げに参りました」


「・・・貴族会議? ですか?」


「はい、わしも詳しい事はまだ聞いておりませんが、急ぎ議事堂まで来て欲しいとの事です」


「わかりました、議事堂ですね、今から伺います」


俺も付いていった方がいいのかな、シスターマリーだけじゃ心配だ。


「すいません、俺達も公女様に付いて行ってもいいですか」


「ふむ、とくに問題があるわけでもないしの、よかろう、付いて参られよ、しかし、後ろの方で静かにしていて貰いたい、粗相の無きようにお願いいたしますぞ」


「ありがとうございます」


・・・何だろうか、先に動かれた感がするんだが、どうも後手に回っているような気がしてきた。一体何をシスターマリーに伝えるのかな、無茶な事じゃなければいいのだが。




おじさん、何だか気になるよ















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