第128話 ジョアンナの関心事
俺達はセレニア城の城内にあるシスターマリーの部屋へと案内され、これまでの経緯を話そうと思っていたのだが、そこへこの国の公爵令嬢の1人、ジョアンナ様が突如乱入してきた。ジョアンナ様は口汚くシスターマリーを罵り、俺達をあまり歓迎していないようだった。なんだかすごい性格だな。
「さあ! 何故この城へ冒険者など連れて来たのか言いなさい、マリアンデール!」
「そ、それは、・・・」
シスターマリーは言い淀んでいる、まあ無理も無い、闇の崇拝者に暗殺されそうになっただなんて、恐ろしい思いをしたからな。あの時の事を思い出して震えているのだろう。
「何? わたくしに言えない様な理由でもあるのかしら!」
「じ、実は、私は先程、闇の崇拝者に襲われたのです、そこへこの方達が助けてくれたのです」
「えっ!?・・・闇の崇拝者!?・・・そ、それで大丈夫だったの、マリアンデール」
「え?・・・ええ、はい、この方、ジローさん達のおかげで事なきを得ました」
「そ、そう、・・・ふ、ふん! 何よ、ぼーっとしているから闇の崇拝者なんかに狙われるのよ! それに外出するなら護衛を付けるのは当たり前でしょう! 何をやっているのだか! 流石妾の子ね!」
「す、すいません・・・」
いやいや、襲われたのは妾の子だからとは関係ないと思うのだが。この公爵令嬢様は何かにつけてシスターマリーを罵るな、そんなに仲が悪いのかな? 一応心配している様子も伺えるのだが、どうなっているんだ?。
「それで、貴方、冒険者といったわね、貴方の素性を確かめる為にも、貴方の冒険話をこのわたくしに聞かせなさい」
「え?、私の冒険談をですか?・・・まあ、いいのですけど、あまり派手な冒険はしておりませんよ」
「よろしいですから! 聞かせなさい!」
「は、はい、」
さて、いきなり冒険談と言われても、何から話そうか、・・・俺が最初にやった冒険でも聞かせるか。
「それでは、まず最初に私が初めてボスモンスターと戦った冒険でも、私はある日、人助けみたいな事をする為にバーミンカム王国内にあるドム遺跡に潜る事になったのですが・・・・・・」
俺は最初の冒険、ドム遺跡での冒険を話した。ジャイアントラット戦に騎士グレンのスケルトンナイトとの戦い、ルビーさんの魔法でのとどめ、そして隠し扉の件などを話した。
「・・・・・・そして、なんと、そこにいた女性はバーミンカムの王女様、サリー様だったのです」
「まあ! 王女様が!」
「実はこの話には続きがありまして、アトラス金貨を売るためにスグ男爵という貴族の所へ行ったのですが、・・・・・・」
さらに闇の崇拝者のバインダーの存在とサリー王女様が襲われた時のサリー王女の危機の話を臨場感あふれる感じで語った。
「・・・・・・そして、バインダーはお縄につき、サリー王女様の救出に無事成功したと言う訳なんです、操られたスグ男爵もサリー様の一本背負いで決めてしまった訳なんですけどね」
「なるほど! 男爵は操られていたのですね! それにしても王女がいっぽんぜおい? なんて、大胆ですわ!」
なんだろうか? ジョアンナ様の鼻息が荒いようだが、そんなに面白かったのかな、なんだか興奮していらっしゃるようだが。
「それで!、他には!」
「はい?」
「他の冒険はないのかと聞いているのです!」
「ああ、一応ありますよ、そうですね、それではバルト要塞を奪還した冒険でもお聞かせいたしましょうか?」
「はやくしなさい!」
「は、はい、あれは仲間の一人、ファンナという女性剣士と出会った時でした・・・・・・」
俺はこれまた臨場感あふれる感じでバルト要塞奪還作戦の時のことを語った。ジョアンナ様は聞き入っている、鼻息も荒い、もしかしてこういう娯楽に飢えているのかな。
「・・・・・・こうして、バルト要塞は取り戻す事ができたのです、いやー、あの時は本当にもうダメだと思いましたよ、仲間のルビーさんのおかげで、オークロードも倒せましたからね、さすがベテラン冒険者って感じですよ」
「ふんす! なるほど! 炎の剣舞という必殺技ですか! その方はお強いのですわね!・・・他には!、もっとないの! 冒険話!」
・・・紅茶がすっかり冷めてしまった、しかしこの公爵令嬢のジョアンナ様は本当に冒険談がお好きのようだ。さっきから鼻息が荒い。
「・・・あの、ジョアンナお姉さま、私、ジローさんにお話がございまして、もうそろそろよろしいのでは・・・」
「何よ! いいじゃない、もう少し!」
「だけど、ほら、もう夕暮れ時ですし、・・・」
「・・・仕方ないわね、紅茶も冷めてしまったようですし、いいわ、ここまでに致しましょう、ジロー、この続きはまた後ほど」
「は、はい、ジョアンナ様・・・」
よかった、ようやく開放してくれたか、やれやれ、喋り疲れた。ジョアンナ様は立ち上がりこの部屋を退出していった。・・・ただの冒険話好きのお嬢様って感じだったな、・・・肝心のシスターマリーとの話はまだ何も出来ていない。
「ジローさん、それにえ~っと、スカーレットさんでしたか、お二人はこの城にお泊り下さい、部屋を用意させますから、・・・す、すいません、メイドさん、この二人に部屋を用意していただけませんか」
「はい、かしこまりました、マリアンデール様」
どうやらこの城に泊れるらしい、お城に宿泊するなんて初めての経験だな。いいのかな。それにしてもさっき、ジョアンナ様は俺の事をジローと名前で呼んでくれたな。凄そうな性格だけど、根はいい人なのかもしれないな。
おじさん、顎が疲れたよ